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すぴーどすた~☆ ~近衛学園初等部女子フットサル部~  作者: 四季 雅
第1章 ☆チーム結成編!☆
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☆③─35話 僕は絶対にパスを逸らさない




(そうだ。考えろ。思考停止して全てを失おうとするな)



 深呼吸して落ち着く。今の状況を整理しろ。




 俺へのマークは3人。ファウル覚悟で来てる以上、過去の俺ならまだしも、今の俺では2人抜くのが限界だ。パスができれば苦労することはないが……






 深く考え込む楓を遠くから見ていた桜庭遼はフッと笑った。



(そうだ。それでいい)




 楓は元々先が見えすぎるせいで、すぐに諦める傾向にある。勝てないと分かれば勝たない。そう判断するようなところがあった。

 これは本人の意識というよりも、やはりこれまで「勝利のルート」を使って約束された勝利を掴んできたからこそ、やる前に勝敗を気にするようになったからと言えるだろう。




 しかし、それは今後のフットサルにおいて時として障害となる。


 全国には化物レベルの選手がゴロゴロといる。きっと相対しただけで絶望させるほどの力を持つ者だっているはずだ。そんな奴らに立ち向かうには、多少の困難を跳ね除けるくらいの根性は必要なのだ。



 少々荒療治になってしまったが、これこそが楓をサッカー部に招き入れた理由でもあった。




(高校生になってプレーしてた頃から身長や体格も大きくなった。おそらくはそこから来る過去の体との違和感もあってプレーしづらいことだろう。それでもあそこまでドリブルで抜けるのは大したもんだが……)





 そして楓をここに来させた理由はもう一つ。





(お前は『勝利のルート』と、どう向き合う……)




 桜庭遼は、楓が不思議な才能を持っていることを実は「知っていた」。




 それで悩み、サッカーを辞めたことも。



 いつまでも逃げていてはダメだ。どこかでこの才能と向き合わなくてはならない。




「さぁ、どうする楓?」










 決めた。まずは基本だ。チームと話し合わないといけない。



 俺はそう決めると、キャプテンと慧がいる場所へと足を向かわせる。



「桜庭くん?」


「楓」



「二人とも。聞いてほしい話がある……」













「なに!? パスができない!?」



 俺の事情を正直に話すと、バカでかい声でキャプテンが叫びだす。


 ちょ、大きい大きい。俺のこれは誰でも話したいわけじゃない。せっかく二人だけならと決めて話したのに意味がないぞ。



「む、すまんすまん。しかし……桜庭くんがそんなことになっていたとは。それならサッカーしていないのもわかってしまうな……」



 まぁパスができない選手なんてサッカーではありえんからな。それこそドリブルで全員抜きされるとかいうチートにならなければ。



「楓は、僕やキャプテンにもパスを出すのが怖い?」


「…………ああ、少しだけ」


「そっか」



 慧はそれだけ確認して、それ以上は質問したりしない。普通、こんなことを言うと随分と不思議がられたりするもんだが……




「楓。言ってなかったけど、僕のポジションは『FW(フォア―ド)』なんだ。僕は、君のパスを待ち続けるよ。たとえ来なくても。ずっと」




 こんな俺でも。使わなかったり、別のプレーを求めたりはしない。





 桜庭楓のプレーで一番見たいのは、パスだ。まるでそう言っている。





「でも、俺は……」



 無理なんだ。どうしても。パスをしようとすれば、仲間たちから何回もパスをわざとスルーされたあの時の試合がフラッシュバックする。そうなると体が固まって、足が動かないんだ。





 また、俺のパスはスルーされるんじゃないかって……!






「僕は絶対に君のパスを逸らさない。約束する。それがたとえどれだけ速くても、どれだけ厳しい要求でも。世界レベルのパスだったとしても。……君のパスなら絶対に」



 慧はそれだけしか言わない。パスしか求めない。だってFWだから。「お前からのパスを待ってるんだ」って言っているのだから。




(俺は…………!)





 楓の中に、燃えるような何かが生まれる。



 前で待ってくれてる選手がここまで言っているのだ。俺はこのままでいいのか?






 楓の胸中など知る由もなく、ゲームは再開する。



 当初は話し合うことで、こんな自分でもゲームに入れるようにボールに触れずプレーするか、ゴール前でパスもらい最後のフィニッシュを請け負う役でも貰おうかと思っていた。



 しかし、そうはいかないらしい。



 あくまでも、俺は俺のままでプレーすることを求められているようだ。




(だったらやるしかねーか)





 楓は腹をくくる。ここまで来たらやれるところまでやるしかない。




 もう一度考えろ。あの状況を打開するにはパスしかない。2人抜いてパスさえすれば決定的だ。



 だが、相手もファウル覚悟でぶつかりに来ている。そんな相手をブランクがある今の俺が掻い潜りながらかつ、慧に繋ぐ最適なパスルートを瞬時に見つけるにはどうしたって「あの力」が必要だ。




 そう、『勝利のルート』が。





 けれども、『勝利のルート』を使えばまたどす黒い自分が出てくる。過去に封印したはずなのに。勝利だけを求める自分が心の奥から這い出てくる。





 かくなる上は……










()()()()()()()()()、使う!!)






 一秒。いいや、その半分ほどの時間。それより少なくたっていい。



 コンマ数秒というパスを出すその瞬間のみ発動させる。そうすればさっきと同じようなことにはならないかもしれない。要はどこにパスをすればいいかわかればいいんだ。





 なるほどな。今になってようやく理解したぞ。俺がなんでこんな理不尽な状況でサッカーする羽目になったのか。



 父さんはこれが狙いだったんだな。俺にこの力と向き合わせるために。



 余計なお節介しやがって。



 慧。父さん。そして俺が終わったとか言いやがった奴ら。




 そんなに見たいなら見せてやるよ。



 俺のプレー。






 桜庭楓のサッカーをな!


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