☆③─32話 桜庭楓復帰!?
「おい! 監督が来たぞ!!」
優キャプテンの部員全員に伝わるような大きな声が響く。
ようやくサッカー部の監督がお出ましか。
どうせ俺のことを知ってるだろう。キャプテン、慧と来て、次は監督とも話をする羽目になるだろうな。とりあえず今日の自分はプレーなんてせず、見学だけということは知っておいてもらいたい。
「よーし! お前らぁ!! 今日もバシバシ練習するぞー」
ん?
それは、聞いたことのある……というか、聞き馴染みしかない、声だった。
俺の横で白戸も「うわ」と声を上げた。どうやら幻聴ではなかったらしい。間違いないようだ。
そこにいたのは。俺の父、桜庭遼だった。
「お、楓じゃねーか。なんでこんなところにいるんだ」
「父さんこそなんでこんなところにいるんだよ……!」
「俺はここのサッカー部の顧問だよ。前に言っただろーが。サッカー部の顧問やることになったから、フットサル部見れなくなったって」
「高等部の方のサッカー部だったのかよ……それくらい言っとけや……!!」
父さんはケラケラ笑ってやがる。
どうせあれだろ。高等部の顧問やってるって言ったら俺が絶対にサッカー部に近寄りすらしなかっただろうから、あえて言わなかったな。つーか、お前が呼んだくせに『なんでこんなところにいるんだ』はふざけてやがる。
「さっそくで悪いが、お前ら5人で集まってチーム組め。あ、もちろんポジションはバラつけよ。ゲームでもするぞ。アップしてなかった奴は知らん。勝手にくたばっとけ」
父さんは来るなり、急に部員たちにそう伝えた。いきなりゲーム形式の練習かよ。はやっ! めちゃくちゃじゃねーか。
だが、この調子にも慣れているのか。準備しようとチームを組み始める部員の皆さん。
ああ可哀想に。もうお前たちもこのアウトローファザーに色々と痛めつけられたんだな……。俺たちは皆兄弟だ……。
「おい楓。何ぼさっとしてんだ」
「は?」
「お前も参加するんだよ。さっさと準備しろ」
「はああああああぁぁぁぁぁぁ!?!?!?」
聞いてねーよ! つか、ちょっと待て!!
「ふざけんな! 俺は今日見学なんだよ! そんなつもりで来てねぇ!」
「うるせぇ! ここに来てる時点で見学もクソもあるか! 俺はそのつもりなんだよ!」
はいめちゃくちゃー。出ましたよ皆さん。これこれ。なんにも言い分が通らないこの感じ。見学させてくれない部ってある? こんなことが平気でまかり通るなら雪姫もフットサルの練習に無理やり参加させたかったよちくしょう。
それに……
「わかってるだろ……俺のことを……!」
俺は、人に向けてパスができないんだ。そんな状態でどうやってゲームをやれる?
恥かいて終わりだろうが。
「知らん知らん。さぞかし有名な桜庭楓選手だ。プロ顔負けのプレーでも見せてくれるんだろうなー!」
「うっせぇ。もう帰る。来るんじゃなかった」
クソ。やっぱりこいつが来いって言うだけあって良い話ではないと思ったんだ。
フットサルに関することだと思って期待して来たらこれだ。キャプテンさんや慧には悪いが、こんな宇宙人に従ってられるか。
「また逃げんのか」
「はぁ?」
「いいなーいっつもいっつも『逃げる』のコマンドが用意されててよ。さすが予選一戦目早々に選手に試合を捨てさせる奴はやることが違うぜ。常に腰が引けてるクソ負け犬野郎がよ。サッカーが上手くても根性が弱すぎて話にならねーなぁ。豆腐メンタルが」
「……言い過ぎだろいくらなんでも」
凪みたいなストーミング罵倒しやがって。これが父っていうんだから恐ろしすぎる。凪はまさか父さんのここを受け継いでしまったのかと二重でショックだ。あとなんで龍泉の時のことを知ってるんだ。見てなかったくせに。サイキックかこいつは。
俺は拾った自分のカバンを投げ捨て、父さんを睨みつける。
「何考えてるか知らねーけど、やればいいんだろ。やれば」
父さんはニヤリと笑みを浮かべる。挑発が上手くいって狙い通りか? ったく、やり方が凶悪すぎてドン引きするわ。
俺は慧のチームに入れてもらい、参加することにした。
パスができない以上、GKにしてほしかったが、さすがにそれはできない。サッカー部連中のGK勢の練習もかねているから、俺の事情だかで邪魔するわけにいかんしな。
よりにもよって最悪な司令塔の立場に。どうすればいいんだ……
「桜庭くん。よろしく頼む!」
「はい。こちらこそお願いします」
なんとチームには慧以外にも、優キャプテンまで入ってくれた。話したことあるからそこは助かるが……。
あとは同級生一人と、先輩のGK一人。さて、どうしたもんだか……
「あんたほんとに大丈夫なの?」
俺が準備運動をしていると、横から白戸が声をかけてくる。まさかゲームまでさせられるとは思わなかったからな。白戸なりに心配はしてくれてるんだろう。
「何とかする。もうここまできたら、なるようになれだ」
「……あっそ」
白戸もそれ以上は突っ込まない。俺自身も戸惑っているんだ。どうしようとか、そんな状態にない。もう流れに身を任せるしかない感じだ。
「骨は拾ってあげる」
「そりゃどーも」




