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幼稚園戦争  作者: あぐり りょう


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初日!

 出欠は改めて行った。

 ちゃんと『さん』付けして。

 子どもたちは満足そうだったが……。


 なんなの!

 なんなのよ!?

 いきなり、学級崩壊クラス?

 もう、この歳から教師イジメかしら?

 なんか、すでにメンタルに大分傷がついたのだけど?

 先生たちは、知っていて押し付けたのかしら?


 教室内では子どもたちが私を横目にして、

「これからの、きょういくほうしん、どうする?」

 と真剣に話し合いを始めた。


「ハァー……。がっこうを出てすぐは、りそうにもえてて、やっかい! ってウチのジージが言ってた!」


「……だよなぁ。でも一から仕込んでも、すぐに『わたし! 結婚します!』って辞めるだろ? アレ、困るんだよねー」


「あーね、去年のキャサリンは酷かった……」


「まさか、さいようして、さんかげつでやめるとは……。じむちょーせんせいが、かわいそうだったね」


「途中で先生が変わらなければ良いのでは?」


「そっか、さりげなく、雑談で聞いてみよう!! センセー、カレシいるの? わたしはねぇ、三人いるんだけど!」


「全部聞こえてるんだけど……彼氏三人?」


 多くない?


 これが今どきの子なの?


「っていうか! なんで私はあなた達にそんなこと言われなきゃいけないのよ!」


「……。彼氏ナシ=年齢か、クズ男と別れたてで、もう恋なんてしない!! 期間とみた。そして、自分を慰めるためにハマった、推し活中のアイドルが熱愛発覚で、グッズを不用品に売る準備してるタイプだ!」


「普通に失礼!!」


 でも当たってる。

 全部当たってる。

 なんなの? この子たち……。


 さっきから、私ではなく、私の斜め後ろを見ている園児。

 名前はたしか……。


「ヨハネ、さん?」


「うむ。これなら、われわれのそつえんまでたえられるのではないかな? さんねんごに、うんめいのであいがあるとおっしゃっておる」


「……預言者がそうおっしゃるのなら、プランBでは?」


「……預言者?」


 誰?

 何が見えるの?

 普通に怖いんですけどー!


「じゃあ、プランBで」

「さんせーい」

「いぎなし」

「では、そうしよう」


「ちょっと待って!!」

 パンパン、と手を叩く。


「まず! プランBって何!?」

「センセーを、そつえんまでやめさせないプラン」


「私の進退を勝手に決めないで!!」

「私は今日! 先生になったの!! 倍率十四倍を勝ち抜いたんだから、そんなにさっさと辞めたりなんてしないんだから!!」


 子どもたちはそれを聞き、鼻で笑う。


「ばいりつは、やめないりゆうにはならないよ?」


「せんせい、ここのりしょくりつ。しらべた?」


「……そっ、それは」


「ここをやめるせんせいの、ななわりくらいが『けっこんします』なんだよ?」


「こんかつもくてきの、じゅけんもおおいよね」


「がんめんさいようなのか、まいとし、ろうきしょに、くじょうはいってるしねー」


「なんで知っているの?!」


「ご近所のおばちゃんが言ってた!!」


「もういい! とにかく今日はーー」

 私は園児たちから主導権を取り戻そうとした瞬間。


 一人が手を挙げる。


「センセー!!」


「なに?」


「おしっこ」


※※※


「アンナ先生。今日一日、どうでしたか?我が校の園児たちを見て……」


「……。あの、あのクラスこそベテランの先生が率いるべきでは? あのクラスは….…新任には向いていません!」

 

 出会いこそ、素晴らしい園児たちだった。

 しかし……。

 今は思い出すだけで頭が痛い。


「ホッホ。早速洗礼を浴びましたか?」


 副園長が皺を深くして笑う。


「まずは園児が先生に向かって『センパイだぞ?!』とはなんですか? こっちは人生の先輩だぞ?! と返してやりたかったです」


「ハハハ。毎年、新任はやられていますよ」


「では、何故止めないのですか? このまま大きくなると、価値観の歪んだ子どもに成長します! 先生は導き手であって、生徒と同等ではないはずです」


「うーむ……それは、どうでしょうか?」


「え?」


「まぁ、まだ一日目です。ゆっくりとこの学園の事を学んでください」


「……私が、ですか?」


「ええ」


 副園長はにこやかに頷いた。


「アンナ先生も、今日からオルディスの一年生ですから」


「…………」


 なんか。

 私まで教育される側になってない?


「それに、まだ新入生が来ていませんからね。今のうちに彼らからいろいろと学ぶと良いでしょう……」


「新入生の入園になにか関係があるのですか?」


「ええ。特に年少さんの入園後は、暫く園内が大騒ぎになりますからね」


「大騒ぎ?」


「なので、今週中にはアンナ先生もウチの学校に慣れてくださいね」


「……はぁ」

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