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幼稚園戦争  作者: あぐり りょう


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テイマーになろう!

 囲め、囲めと囲んで歌い祈る。

 真ん中の幼女は、まだ泣き止まないが花を供えてから声のトーンが変わった。


 ヤンは前世の童謡を思い出し、比べてみるが、歌詞の残酷さに慄きを隠せない。


(カゴメカゴメも大概だったけど、こっちは意味そのまんまじゃねえか)


 しかし、もっと気になる事がある。


『あー、ワシの傷痕。コレきたよなぁ! ワシの時代! 世界に一羽だけの鳥! になったよなぁ!』


 隣でカチカチと嘴が鳴る。

 

 あれ、コレ……。

 この鳥、喋ってるよねー?

 何コレ。

 遂に俺、テイマーとしてTUEEE!! するのか? この鳥と?

 俺、卒園したらこの鳥と領地改革、スローライフするのか!?


「ガガガ」


『この稲妻のように走る傷痕が、封印されしワシの能力を鎮めているのだ! とかどうよ!?』


「えー。羽はあおいろより、ピンクがよかったー!」



 …………ん?

 聞こえているの……。

 俺だけじゃない、だと?!


 ……こいつらも?

 ヒヨコ組って、覚醒者クラスなの?

 オルディスの選抜って、そういう事?!


 ならば、家に帰ったら早速パパに頼もう!

 フェンリル飼いたいって!


『子爵家三男に転生した俺、幼稚舎でテイマーに覚醒したのでフェンリルをテイムして領地でスローライフします

~今さら王都に戻れと言われても、俺は働きたくないでござる~』


 コレだ。

 完璧だ!かんぺきのははだ!!

 俺の将来は決まった。


 囲んで祈っていた上級生たちが、この鳥の方へ歩いてくる。


「えんちょーせんせー!! 調子はどお?」


 この鳥、『えん鳥』って言うのか……。


「ガガガガ」

「ガガガ」


 バサバサ

 数度羽を開いては閉じる。

 その度に花が舞い散るのがとても幻想的に見える。


『この稲妻の走った紋様! ワシ、イケてるよな』


 聞こえてくる言葉は雰囲気を台無しにする。


「えんちょーせんせー、中に入っていい? 先生たち、えんちょーせんせー来るの待ってたよ?」


『ああ、他の仲間たちに話そう。全てはオルディス神の選択の場へ返ったと……。少しは安心するじゃろうて……』


 上級生の合図で用務員のおじさんが再び動物舎の扉を開ける。


「ガガガガ」


 えん鳥は鳴きながら先頭を歩く。

 その後ろを先生、手を繋いでいる上級生たちと続いて入っていく。

 ヤンは入り口のミミルを見て、前世のウサギを思い浮かべる。


 学校の飼育小屋でも確かにいた。

 そして、今回のように野犬が出て、ウサギに被害が出る話は初めてではなかった。


 名前をつけて、可愛がるから……。

 集団を個体で考えるから……。


 先程の女児の哀しみは理解する。

 手を伸ばすと寄ってくる、小柄で可愛いミミル。


『おい、簡単に触ろうとするんじゃねーよ! まずは先払いが常識だろう? あっ、あー。チビ助は今日初めてここへ来たのか? まずは先輩にここでの振る舞いを聞けよ。そして学習しろ!』


 ん?

 今、なんて言った??


 用務員のおじちゃんが運ぶ手押し車。

 中には、俺には大根やにんじんにみえる野菜。

 それから、見たことのない葉野菜や穀物が積まれている。


 スミレ組の、キラキラ笑顔の美幼児がにんじんを手にとり説明を始めた。


 この動物舎の中には、幾つかの部屋があり、動物たちがいる。

 えん鳥も普段は、そこにいるが、偶に外にも出ている。


「このコたちはぼくたちより、せんぱいだから、えらそうにしちゃダメだよ!」


 はい。

 キタ。

 先輩。

 ここの幼稚舎、年功序列なの厳しくない?

 でもさ、その制度はすぐに崩壊するね!

 前世で俺は経験した。

 その経験は後からハラスメントになる。

 いや、まて。

 この世界にハラスメントはあるのか?


 とりあえず、手押し車から各自好きな餌を手に取る。


 どれを選ぶか迷っていると美幼児が、

「ガルパンにはククナだよ! 手をカップのかたちにしてみて?」


 俺は言われたとおりに両手を重ねる。

 すると、何かの粒を手のひら一杯に渡してきた。


「みんなエサはお部屋に行ってからね!」

「はーい」


 となりにはいつのまにかユーリがいる。


「ヤンくんはガルパンが好き? ボクはラピルにコレあげる!」


 重くて持ち上がらない、大根ぽいなにかをみせてくる。


「へー。ぼくは、どうぶつはじめてだからなにかよくわからない」


「ずかんにのってるよ! あとで一緒にみよう!」


 図鑑があるのか!

 知らなかった!


 初めてユーリの話が役に立ったから、一緒に読んでやるか!


「いいよ!」


 ミミルの部屋で主に女の子たちがなにかの葉っぱをあげては触っている。


 先程のように可笑しな事は言わない。

 やはり、俺は動物の感情が聴こえてしまうのだな!


「可愛い!」

「ふわふわだねぇ」


 キャッキャ、うふふと笑う女の子たちの声。

 時代を越え、世界を越えても変わらない。

 これは、良いものだ。


「うむ」

 俺は一つ感慨深く頷く。


「じゃあ、そろそろガルパンの部屋へ行くよ!」


「おじさーん!今日はたまごとった?」

「いや、まだだよ」


 おじさんが苦笑する。


「あぁ、それは困ったな……。スミレ組集合!」


 上級生たちが集まり、何やら相談する声が、聞こえる。


「……。決死隊、誰がいく? カイル?」

「俺、きのう行った。レオンいけよ!」

「しかたないな。えんごは?」

「ルシアンとトーマス。アーロンとカインはヘイトが溜まってるから、囮。でどうですか?」

「良いよ」

「わかった」


 ……決死隊??

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