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幼稚園戦争  作者: あぐり りょう


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どうぶつしゃへいこう!

 アンナは同僚のジョアンナに聞いた。


「ジョアンナ先生、園長って始業式や入園式で挨拶されてた方ですよね?職員はお見舞いに行かなくてもいいんですか?」


「ええと、その、挨拶されてた方は学園長ですね……」

「え?学園長と園長は違う方なんですか?」


「ええ、違いますよ。学園長は幼稚舎から高等部まで含めたオルディス学園の学園長ですよ。但し、幼稚舎だけ園長先生がいます」


「そうなんですか!?じゃあ、私まだ園長先生にお目にかかってません!いいのかな?」


「実務は副園長先生と事務長が取り仕切っているので、問題はないのですが……」


「お一人でラグドウルフに立ち向かうだなんて……。元騎士団か冒険者の方なんですか?」


「いいえ、園長は違いますね……。うーん、詳しくは子どもたちに聞いた方がいいですよ?」


「子どもたち?そう言えば、園歌の事は園長先生に聞けばいいと、あの子たちも言ってましたね……」


「どうしよう……。お見舞い、行った方がいいかしら?」


 そこへ副園長が通りかかった。


「ああ、アンナ先生。園長は今朝から出勤してますよ」


 そう言って笑いながら去る。


「ジョアンナ先生、良かったらぜひ一緒に挨拶させてください」


「わかりました。じゃあ朝のお遊戯の時間はスミレ組さんとヒヨコ組で動物舎見学に行きましょう」


「……動物舎ですか?」


「ええ。子どもたちはわかりますから……。あっ、もうすぐ早馬車さんが到着しますよ!」


「あっ、もうそんな時期!? ジョアンナ先生、よろしくお願いします!」


 そして、それぞれの持ち場に分かれた。


※※※


 園馬車は三つの時間帯で複数のルートを回って園児を乗せてやってくる。


 一番早く幼稚舎に着く時間帯の馬車を早馬車、その後を中馬車、最後を遅馬車と呼ぶ。


 そして到着した馬車から次々と園児たちが降りてくる。


「おはよう!」

「おはようございます!」


 挨拶を返しながら、レオンは園舎の一番奥の教室、スミレ組に向かう。


 教室の中には同じ時間帯のルート違いで登園した園児たちが、朝の支度をしている。


「ヨハネ!アルベルト!おはよう!」

「おはよう」

「おはようございます」


 揃いの鞄から幼稚舎手帳を出して、登園シールを貼る。

 自分のロッカーに仕舞う。


「ねぇ、ヨハネ。園長先生、今日は来た?」

「うん」

「ほんと!?」

「よかったぁ!」

「昨日の祈りで、ぜんかいふくしたよ!」

「そっかぁ。会いに行きたいけど……。アンナ、どうする?」


「……。この間のように、スケジュールを確認して、必要ないお遊戯ならみんなで移動してしまえば良いのでは?」


「それはそうなんだけど……。アンナにもメンツって言うのがあるから、そう易々とは許してくれなくない?」


「では、動物舎で追悼をやりたいと申し出るのは?今の間に庭園で花束を作ってそれらしくすれば、問題はないかと……」


「さすが!アルベルト!!あったまイイね!!」


「それなら、女の子たちにも声をかけて手伝ってもらおうよ!」


「ぼく、頼んでみるよ!」

 レオンはキラキラした笑顔で教室内の女の子集団に声をかける。


「ねえ、君たち!花束作るの手伝ってよ!」

「朝からレオンの悪いかお!!こんどはなにする気?」

「悪いかおはヒドイなぁ……!園長先生、今日戻ってるからお見舞いしようよ! それから、死んじゃった子たちのお別れ会もしない?」


 女の子たちはヒソヒソと相談を始める。

「まぁ、言ってることは正しいわね……」

「でも、アンナ。泣いちゃわない?」

「うーん。やってみないとわからないわね……。去年のキャサリンよりはマシな性格だと期待したいわ!」

「そうね……」


 話はまとまった。


「いいよ!!」


「そう?良かった!じゃあ、アンナが来るまでに始めよう!!」


 スミレ組から園児たちが消えた。


※※※


 朝の登園の見守りが終わり、アンナは出欠の確認をしようと担当クラスへと向かった。


 廊下は今日は一段と静かだった。

 教室の窓から室内を見ると、いる筈の園児たちが誰一人いなかった。


 教室を見る。

 ロッカーには鞄が入っている。


「……またあの子たちは!!」


 アンナは人が集まる講堂や、運動場を見回り園児たちを探す。


 園庭へ探しにいくとーー。

 スミレ組の園児総出で花を摘んでいる。


「……。みんな!おはよう!!ところで、何してるのかな?」


 レオンが振り返り、キラキラした顔で答える。


「アンナせんせぃ! おねがいがあります!」


 レオンは手に持った花束をアンナに見せる。


「あのね、どうぶつしゃで死んじゃった子たちのおわかれをしたいです!」


 アンナはレオンや他の園児たちの様子を見て感心した。


 ちゃんと命について考えてる。

 昨日のお祈りだけで終わらせず、お別れまでしようとしてる。


 だから……。


「そうね。先生も、それはいいと思います」


 今日は子どもたちに賛同する。


「ほんと!?」

「ええ。それに今日は――」


 そこへ、ヒヨコ組の担任、ジョアンナ先生がやってきた。


「スミレ組さーん! ヒヨコ組さんの準備できましたよー! 動物舎に行きますよー!」


「…………え?」

 レオンは身体を硬直させる。


「どうぶつしゃ……いくの?」


 アンナは満面の笑みで答えた。

「ええ。今日は最初からその予定よ?」


「…………」

「…………」

「…………」


 レオンはギッギッと音がしそうな角度で首を動かす。

「アルベルト?」


「……予定表の確認を怠りました」


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