22 幻の薬草 ③
夕食時、私は家族にルワナ様から聞いた話をした。
その間に、シイちゃんは神様の所に詳しい話を聞きにいってくれた。
ここまでトラブルが起きるなんて、私は災厄の第四王女だったのかもしれない。
フラル王国だけじゃなく、ハピパル王国や他の国まで巻き込んでしまっているのだから、本当に最悪だ。
生まれてこなければ良かった。
なんて、卑屈なことは思わない。
だけど、ここまで色々なことが起きると、全く無関係だとは思えない。
巻き込まれるのが私だけならいい。でも、いつだってそうじゃない。
家族や私にとって大切な人たちをトラブルに巻き込んでいる。
食事をしながら落ち込んでいた私に、リディアスが明るい口調で言った。
「恋心を忘れる薬を普通の薬師が作れるんなら、ミリルならそれを無効化する薬も作れるんじゃないか?」
「……無効化する薬?」
私は先程から空を切っていた、フォークを置いて聞き返した。リディアスも食事の手を止め、明るい口調で答える。
「ああ。神様がミリルに手を貸してくれるって言ってたんだろ? その力は無効化の魔法なんだよな?」
「そ、そうだけど、どうやったらいいのかわからないし」
「いつもと同じように作ればいいんじゃないのか?」
そう言われてみればそうかもしれない。薬を作る時に、よく効きますようにとか、美味しくなりますようにと願いながら作ってきた。そうしたら、よく効いておいしい薬ができるようになった。
今回も毒や悪い魔法を無効化してほしいと願いながら作ればいいのかも!
「俺はミリルなら作れると思う」
「私もそう思うわ」
「私もそう思う」
リディアス、お母様、お父様の順に、私を勇気づけてくれた。
「ありがとうございます! 頑張ってみます!」
拳を突き上げて宣言すると、リディアスたちは安堵した様子で表情を和らげた。
私の元気がないと、みんなを心配させてしまう。ただでさえ迷惑をかけているんだもの。明るく前向きを忘れないようにしなくちゃ!
「幻の薬草でしか、恋心を忘れる薬を作れないみたいだし、向こうはそう簡単に作れないはず! だけど、私は幻の薬草がなくても、無効化する薬を作れるはずですし、かなり有利ですよね!」
人の気持ちを誰かが強制的に変えるなんて絶対に良くない。絶対に阻止してみせるわ!
気持ちを切り替えたことをシイちゃんに伝えたくて、今日は帰ってくるのを寝ずに待っていた。
いつもの就寝時間から一時間ほどが過ぎようとした頃、シイちゃんが戻ってきた。
いつもならば元気に帰ってきたことを教えてくれるのに、今日は違った。
『ただいま』
「おかえりなさい」
落ち込んでいる時の声なので気になって、無言でシイちゃんを見つめる。
シイちゃんはベッドに寝転んでいた私の顔の横に飛んできて、涙を流し始めた。
「シイちゃん、どうしたの!? 神様に何か言われたの?」
『……おこられた』
「え?」
『シイはおしゃべりっておこられた。まちがってないから、ちゃんとはんせいする』
そう言って、シイちゃんは泣きながら、神様から叱られた話をしてくれたのだった。




