23 ミリルの誕生日 ①
セーヌ様はシイちゃんの行動にとても怒っていた。
他の石たちに比べて、シイちゃんはまだ若いらしい。今までは幼い子供だと思って大目に見ていたが、さすがに堪忍袋の緒が切れてしまったそうだ。
……気持ちはわからないでもない。シイちゃんは良い意味では正直だけど、悪い意味ではお喋りだ。
人に話してはならないことをつい漏らしてしまう。宝物庫に長年いたからか、誰かと話をしたい気持ちは理解できる。だからといって、何でもかんでも思ったことを話していいわけではないのだ。
『じぶんが、おしゃべりだってこと、わかってるのに、いつもはなしたくなっちゃう。ほんとうに、シイはだめな、いし』
「シイちゃんは隠し事ができないタイプなんでしょうね。だけど、話してはいけないこともあると覚えておいて。それと、私もなるべく聞かないようにするね」
『わかった。きをつける』
シイちゃんは私に秘密を持つことを悪いと感じているように思える。
それに私だって、なんだかんだ言ってシイちゃんに頼りすぎ。一緒にいられるだけで幸せなんだもの。そのことだけでも感謝しなくちゃ。
「セーヌ様はシイちゃんに罰を与えるとか、そんな話はしていたの?」
私たちの会話をセーヌ様が聞いている可能性もある。私はベッドの上で正座をして尋ねた。シイちゃんは私の膝近くにいるが、周りのシーツはシイちゃんの涙でグショグショだ。
この状態で眠るのは辛い。
あとで予備のものを持ってきてもらわないといけない。
夜勤のメイドに私が粗相をしたと思われませんように!
『こんかいは、ばつはないけど、つぎによけいなはなしをしたら、もう、ミリルといっしょにいられなくするっていわれた』
「ええっ!? そ、それは困るわ」
シイちゃんがいると便利だからとか、そういう理由じゃない。ただ、シイちゃんと離れ離れになるのが嫌だった。
あたふたする私に、シイちゃんは泣きながら話す。
『ミリルには、だいよんおうじょとして、うまれさせたけんで、かみさまはもうしわけないっておもってる。だから、とくべつあつかいしてる。ミリルはそのことをわかってる。でも、シイはわかってないっていわれた』
寂しいから私たちの所に戻りたいと言ってくれた気持ちは、私たちにとってすごく嬉しかった。だけど、セーヌ様にとっては、シイちゃんのワガママでしかなかったのでしょうね。
「そうね。私は感謝しながら生きてるけど、シイちゃんはどうだったのかな」
『なにもかんがえてなかった』
「それなら、感謝して生きていかないと駄目ね!」
『うん。かんしゃして、いきてく。シイは、たくさんあまやかされてた』
同意したシイちゃんは、少し間を置いてから話題を変える。
『そうだ。かみさまが、ミリルたちがかんがえた、くすりでむこうかは、よいことだとおもうっていってた』
「そうよね。私は本当なら魔法を使えないんだもの。コニファー先生直伝の不思議な薬として、ありとあらゆる魔法の効果を解除してみせるわ!」
『シイ、おうえんする!』
「ありがとう!」
ぴょんぴょん飛び跳ねたシイちゃんをキャッチして、私は元気にお礼を言った。
「明日から改めて頑張る!」
『うん! ミリルのたんじょうびもちかいしね!』
「ん?」
私の誕生日?
動きを止めた私だったが、卓上カレンダーを見て声を上げる。
「そうだった! もうすぐ私の誕生日だわ!」
正確にはお父様たちに助けてもらった日になる。ミーリルの誕生日と同じにするわけにはいかず、その日を誕生日にしたのだ。
みんな、何も言わないけど何か考えてくれてるのかな。それとも忘れてる?
少し寂しさを感じつつ、今日のところは眠ることにした。




