21 幻の薬草 ②
馬車の中でシイちゃんに確認してみたところ、ルワナ様の言う魔法は存在するかもしれないが、禁忌なのではないかと教えてくれた。
「禁忌……って、良くない魔法ということ?」
『たぶん、そうだとおもう。シイはずっと、ひきこもりだったから、にんげんのことにくわしくないけど、そういうまほうは、かみさまはきらいだとおもう』
「王家の宝物庫の中にいただけだよね? それなら引きこもりってわけじゃないと思うわ」
『そうだけど、だいよんおうじょがうまれるようなおうけって、そうないから、ずっとほうもつこにいたんだよ』
シイちゃんの声は少し寂しそうだ。
このことは何度もシイちゃんと話をして、その度に慰めているのだが、どうやらコンプレックスのように感じているらしい。
それに、私が死んでしまったら、また宝物庫に戻されるのかもしれないと思うと不安な気持ちになっているみたいだ。
シイちゃんの心は純粋だからこそ打たれ弱いところがある。だけど、私と同じで嫌なことは寝たら忘れるタイプなので、とりあえず今は元気が出るように励ましておく。
「私はまだまだ頑張って生きるし、シイちゃんと楽しい思い出を作るから安心して!」
『はげましてくれて、ありがと』
手のひらの上でキラキラ輝くシイちゃんを見て、ご機嫌になってくれたと安堵する。
シイちゃんを悲しい気持ちにさせるのは嫌だ。だから、幻の薬草の話はコニファー先生に相談することにしようと決めたのに、シイちゃんが話を戻した。
『かみさまに、きいてこようか?』
「ありがたいけど、セーヌ様もお忙しいんでしょう?」
『うん。でも、まぼろしのやくそうで、へんなくすりをつくれるのは、かみさまのせいじゃなくて、あいつのせいだとおもうから、ほうこくのいみもかねて』
「……あいつ?」
そういえば、他国の王家の石がロードブル王国に渡ってしまったけれど、その力が働いているとか?
いや、さすがに王家の石にそこまで決定権はないのかしら。
一人で考えていた私にシイちゃんが話す。
『わるくなってしまったかみさま。そのかみさまのなまえが、ジスン』
「昔はセーヌ様と同じく善い神様だったのよね?」
『うん。あることをきっかけに、かみさまから、はなれていったんだ』
「あること……」
そういえば、セーヌ様と夢で会ってその話になった時は、話題を変えられてしまった。だから、もう一柱の神様と仲違いしてしまった詳しい理由は聞けなかったのよね。
あまり、聞いてほしくないことなのかもしれない。神様の世界に人間が深く関わってはいけないわよね。
『りゆう、しりたい?』
「知りたいけど、セーヌ様は嫌がるんじゃないかしら」
『んー。かみさまはやさしいから、ゆるしてくれるとおもうけど、やめとく。だから、ヒントだけあげるね』
「ありがとう」
お礼を言うと、シイちゃんはぴょんぴょん飛び跳ねながら話す。
『あのね。もしかしたら、こいごころをわすれるくすりは、じぶんのためにつくったのかもしれないよ』
「えっ……」
私は思わず声を上げて動きを止めた。
そ、それってもしかして、ジスン様はセーヌ様にフラれて、それがショックでセーヌ様から離れていったということ?
いや、そうではないと思いたい。だって、今の状況はフラれた腹いせに人間の世界に介入して、セーヌ様を困らせようとしていることになってしまう。
そんな理由ではありませんように。
そう願いながら、シイちゃんを抱きしめた。




