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ジラはなにも言わずに壁のそばに立って、じっとただ長い時間ひまわりのことを眺めていた。
ひまわりはピアノの演奏を続けている。
そのピアの曲が終わり、ひまわりはその美しい指の滑らかな動きを止める。
するとジラは小さくその両手を叩いて拍手をする。
ひまわりがゆっくりとジラのほうにその体を向ける。
ひまわりは真っ白なドレスをきていた。
足が見えないほど裾の長いドレス。
手には肘が隠れるくらい長い白い手袋をしている。
(その見た目は中世のお姫様のようでもあり、まるで結婚式で花嫁が着る真っ白なウェディングドレスのようだった)
美しい長い金色の髪はストレートで腰の辺りまで伸びている。(その髪は空いた窓から吹き込む優しい風に少しだけ揺れていた)
ひまわりはその顔に仮面をつけていた。
真っ白な仮面。
その仮面の名前をジラは知っていた。
その仮面は王女の仮面、と言う名前の仮面だった。
ジラは無言。
ただじっとひまわりのことを見つめている。
「久しぶりですね、ジラ」
最初に口を開いたのはひまわりだった。
「……うん。本当に久しぶりだね。ひまわり。会いたかった」
とジラはいった。(その言葉は嘘ではなかった)




