55
ジラはひかりのことを考える。
幽霊の女の子、水玉ひかりはたった一人であの笹百合まめまきの家に今もいる。
一人で、孤独に、まめまきが帰ってくるのをただじっと待っている。
そんなひかりもやがて、ロストチャイルドになってしまうのだろう? そんなことをジラは考える。
かげろうも、やがてはそうなってしまうのだろうか?
かげろうの可愛らしい顔を思い出して、ジラは思う。
笹百合まめまきがそうなるように。
今までひまわりが作り出してきた、無数の幽霊たちが、そうなっていったように……。
「心。心か。ねえ、みちびき、心ってなに?」
とジラは言う。
『心とはあなたの内側に広がっている世界のことです。それはジラ。あなたにはあって、私にはないものでもあります』みちびきはいう。
「みちびき。あなたに心はないの?」ジラは言う。
『イエス。はい。ありません。私の内側には『ただの空っぽな空洞』があるだけです。私には心はありません。私は人の手によって作り出された人工知能ですから』とみちびきはいう。
「悲しいことを言うね」小さく笑ってジラは言う。
『悲しい、という感情を私は理解することができません』みちびきは言う。(それはその通りだった。普段、みちびきはまるで本物の人間と同じようにジラと会話をしてくれるが、それはみちびきがジラにストレスを与えないためにそう演じているだけであって、みちびきは『人の心や感情』を理解して、会話をしているわけではなかった)
「私はひとりぼっちなの?」ジラは言う。
『はい。その答えはイエスです。私はここにいます。でも、本当はここにいません。ジラ。あなたはずっとひとりぼっちです』とみちびきは(ジラが本当に聞きたいことを理解して)いつもの口調でそう言った。




