44
「神様が人を騙すのではない。人が人を騙すのです。あるいは悪い大人が未熟な子供を洗脳するのです」ひまわりは言う。
その話を聞いてホロウたちは怖がるが、その中でかげろうは自分の頭にごつごつした洗脳器具をつけられて、お仕置き用の電気椅子に拘束された自分の姿を想像して、ぶるぶると震えた。
それは本当に、とても怖い想像だった。
想像。イメージが人を壊す。あるいは人を拘束する。
そんな言葉を(きっと授業で受けたのだろう)実際に受けることになった電気椅子の上に拘束され受けるとても強い青白い電気を放つ電気ショックの中で、かげろうは思い出した。
ひまわりのお仕置きは随分と長い間、続いた。
何時間も、何時間も続いた。
その間、かげろうは考えていた。
自分のこと。友達のこと。ひまわり先生のこと。授業で習っただけの、見たこともない世界のこと。昨日の夜に見つけた星の光のこと。そして……新しく出会って友達になったジラさんのこと。
いろんなこと、ずっと考えていた。
やがてかげろうの体から焦げ臭い匂いと一緒に白い湯気が上がり始めるころ、(かげろうが壊れてしまう、ぎりぎりの、一歩手前のところで)ようやくひまわりのお仕置きは終わった。
「終わりました。もう部屋に帰ってもいいですよ」
透き通る薄い布で顔を隠しているひまわりはかげろうに言う。ひまわりはその顔を隠している布と同じような薄い布でできた服をきていた。(ひまわりの顔や体の形が影のように、その布の中に見えた)
「はい。お仕置き。ありがとうございました」
ぼろぼろのかげろうは電気椅子の上からひまわりにそういった。
かげろうは椅子から立ち上がろうとした。
でも、手足が痺れてしまって、痛くて、あんまりうまく動かせなくて、かげろうはそのまま冷たい床の上に落っこちてしまった。
どさっという、鈍い音が部屋中にした。
かげろうは全身に痛みを感じた。
もう、あんまり、自由に動くこともできなかった。でもひまわり先生はそんなかげろうをお仕置き部屋の中に一人、置き去りにして、さっさと幽霊の街の中にいつくか存在する自分専用のひまわり先生にしか開けることのできない扉『抜け道』を使ってどこかに行ってしまった。
かげろうは床に寝っ転がりながら、そんなひまわり先生の美しい後ろ姿を見送ったあとで、もぞもぞと体をなんとか動かしながらお仕置き部屋のドアのところまでたどり着いた。
それから長い時間をかけて、なんとかそのドアを開けると、(ドアを開けるために)ドアに体重を開けていたかげろうはごろんと転がり出るようにして、床の上に飛び出した。
すると、「きゃ」と言う声と、「うわ、びっくりした」と言う声が聞こえた。
見るとそこには友達の幽霊、三日月よぞらと水玉ひかりがいた。
「大丈夫? かげろうくん?」
「かげろうくん。僕の代わりに、……本当に、ごめんね」
と二人はかげろうを涙で濡れた目をして、本当に心配する顔をしながら、そんなことをかげろうに言った。
そんな二人の顔を見て、言葉を聞いて、ぼろぼろのかげろうは本当に元気になった。
「うん。大丈夫だよ」
とにっこりと笑ってかげろうは言った。
それはかげろうの強がりの言葉ではなかった。(本当のかげろうの真実の言葉だった)




