28 愛は居場所である。
愛は居場所である。
……僕はここにいてもいいの?
かげろうがひかりの話を聞いているとき、よぞらが薄暗い寄宿舎の通路を歩いて、かげろうたちの部屋のあるところまでやってきた。
「どうかしたの? かげろうくん。ひかりちゃん」
青白い月の光(それは偽物の月のひかりだ)のような人工の照明が差し込んでいる薄明かりの通路の隅っこに二人一緒になって座り込んでいるかげろうとひかりを見つけて、よぞらが言った。
「あ、よぞらくん」かげろうが顔をあげてよぞらを見る。
「よぞらちゃん」泣きながら、ひかりが同じように顔をあげてよぞらを見た。
「いったいどうしたの、二人とも?」よぞらは言う。
「あのね、実は……」
そう言って、それからかげろうは泣いているひかりの代わりに先ほどのひかりの人類の暴力と戦争の記憶を見る特別授業の話をよぞらにした。
「……そっか。そんなことがあったんだ。辛かったね、ひかりちゃん」二人の横に一緒になって座ったよぞらはそう言った。
「あ、それとよぞらくん。さっきはごめんね。突然、いなくなったりして」かげろうは言う。
「ううん。別にいいんだけど、でも、どうしたの? なにか面白いものでも急に見つけたの?」ひかりの向こう側から顔を動かしてよぞらが言う。
「えっと、ちょっと理由があって。あとで詳しく説明するね」かげろうは言う。かげろうはジラから、(二人だけで話をしている間に、あっと思い出したようにして)私のことは絶対に秘密。私がいいというまで、幽霊の友達にも絶対に私のことは喋らないこと。いいね。ときつく言われていた。(そのあとで指切りげんまんの約束までされていた)
「わかった。かげろうくんの喋りたいときで別に構わないよ。それまで僕はずっと待っているよ」とにっこりと笑って、いつものようによぞらが言った。
それから明日も早起きしなければいけないので、そろそろ自分たちの部屋の中で寝ようという話になったのだけど、ひかりが「今日は一人じゃ寝られない。お願い。かげろうちゃん。よぞらちゃん。三人で一緒に寝よう。ねえ、お願い」と涙に濡れた瞳と声で、かげろうとよぞらに言った。
かげろうとよぞらは「どうしようか?」と言ったような顔をしてお互いの顔を見た。なぜなら、泣いているひかりのことを一人にはしておけないけど、浮雲ひまわり先生から、『夜は必ず自分たちの部屋で、一人一人が、与えられた自分たちのベットの中で眠りにつくこと』という教育を受けていたからだった。
これはどうやら、幽霊たちの白いベットには、それは見た目はいわゆる普通のベットなのだけど、いろいろな検査器具のようなものが取り付けてあるらしくて、そのベットの上で眠ることで、幽霊たちの様々なデータをひまわり先生は毎晩、自分の部屋で観察しながら(注射器で血を抜いたり、頭に変なごつごつしたコードのたくさんついた重たいヘルメットをかぶせたりするのと同じようにして)採取しているようだった。
それをかげろうとよぞらは(もちろんひかりも)知っているので、ひかりのお願いにすぐに「いいよ」と言ってあげることができないでいたのだった。(またお仕置きを受けることになってしまうからだ。ひまわり先生の言いつけを破る、という重い罪を犯してしまうと、今度のお仕置きはきっと電気鞭での百叩きよりもずっと痛い『電気椅子でのお仕置き』になるだろうとかげろうは思った)




