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21 Q

 Q


 ……ザ、ザザ……、コードネーム、Q。応答してください。……ジラ? どうかしたの?


 改札を抜けて駅のホームに向かうと、そこには古びた列車が一台止まっていた。とても動きそうには見えない。

 錆びついた、廃棄されたような、古風な列車だった。(外見はそれなりに立派だった。現役の世代ではさぞ、高級な列車として扱われていたのだろう)

 天の川銀河の街の駅も、使われている形跡はなく、ぼろぼろだった。(こちらも造りはとても立派だった。国の首都にある駅のような造りだった)これはどうやら、地下の街を建設中に使用された資源の運搬用の列車の現在は廃棄された施設なのかもしれないとジラは思った。

「かげろう。この駅はもう使われてないの?」

 かげろうをホームの上に座らせて、ジラは言う。

「銀河ステーションのことですか? はい。確かにこの駅はもう使われていないです」かげろうは言う。

 ……銀河ステーション。それがこの駅の正式な名前なのか。

 ジラは銀河ステーションの構内を見る。

 構内は、やはりぼろぼろに寂れている。(大きなシャンデリアには蜘蛛の巣が張っていた)

 ……しかし、駅。

 ……駅、か。

「みちびき。どう思う?」

『もう少し詳しく調べる必要があると思います。駅。運命の切り替えポイント。あの子供っぽい悪戯好きのひまわり博士なら、きっと、この場所になにかを隠している。あるいはなんらかの仕掛けをしている可能性が高いと思います』

 銀のイヤリングから、みちびきが言う。

 ジラもその意見に同意見だった。

「かげろう。この駅には、なにか秘密の通路のようなものとかある? もしくはここには絶対に近寄っちゃいけないって、誰かに言われているとか?」

「いいえ。とくにそういうことは言われてはいません。……あ、でも、ひまわり先生からは、銀河ステーションに行っても良いけど、『絶対に列車には乗ってはいない』と言われたことがあります』

 もじもじしながら、かげろうは言う。

「列車に乗ってはいけない?」

「はい。それに乗ってしまうと、幽霊ホロウはあちら側の世界にまで、その魂を体ごと運ばれてしまうからって」

 ……体ごと魂を運ぶ列車?

 ジラはもう一度、古びた列車を観察する。

 ……仕掛けは、あるいは秘密はこの駅の地下にあると思っていた。たぶん、隠してある施設があって(駅の下に地下鉄があるとかして)そこにひまわりの用意した脱出用の電車があるのかもしれないと、ジラは考えていた。(このあと、捜索もするつもりだった)でも、かげろうの話を聞くと、列車に乗ってはいけないとひまわりは言ったと言う。

 それはつまり、『幽霊ホロウたちをひまわりが試している』ということだ。(なにせ、ここは巨大な『心を研究するマッドサイエンティスト』、浮雲ひまわり博士の幽霊ホロウの実験場なのだから)

 では、秘密があるのは、この列車なのか?

 これは、まだ動く列車。

 つまり幽霊列車ではなくて、まだ『生きている列車』なのだろうか?

「……あの、……ジラ、さん」

 遠慮がちにかげろうは言う。

「うん? なに、かげろう。どうかしたの?」列車からかげろうに視線を動かしてジラが言う。(かげろうは小さいため、小柄なジラでも少し下を向く姿勢になった)

「僕、もう直ぐ学校の寄宿舎に、自分の部屋に帰らないといけないんです。そうしないとひまわり先生にまたお仕置きをされてしまいます。……だから、ジラさん。僕、もう自分の部屋に帰ってもいいですか?」伏せ目がちになって、まるで哀願するようにして、かげろうは言う。(かげろうの目はうるうるとしていた)

 かげろうの体はぷるぷると震えている。

 よく見ると、かげろうの顔やコートからはみ出している手のひら(きっと服で隠されているその小さな身体中にも)にはたくさんの傷(古い傷や、新しい傷)があった。

 そんなかげろうを見て、ジラはかげろうの前にしゃがみこんで、かげろうを安心させるようににっこりと笑うと、「もちろん。いいよ」とかげろうに言った。

 するとかげろうは「あ、ありがとうございます!」と本当に嬉しそう顔をして、ジラに向かって、とても深々とその小さな頭を下げた。(ジラはそんなかげろうを見て、思わず少し泣きそうになった)

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