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 ジラはかげろうを連れて、闇の奥に移動をした。

 ジラの姿はいつの間にか、マゼンタ色の尻尾と耳がなくなって、いつもの人間の形をしたジラの姿に戻っていた。

 にっこりと笑ったジラは(たいていの異性は、あるいは同性でも、だいたいジラがにっこりと猫をかぶって笑えば、うっとりとして、すきを見せてくれるものだった)

「大丈夫。殺したりはしないよ。ちょっと君に聞きたいことがあるだけなんだ。私は」とかげろうに言った。(かげろうはまたこくこくと一生懸命にうなずいた)

 それからジラは、そんな必死なかげろうの姿を見てくすっと笑うと(これは本当の笑顔だった)かげろうの口からその白い手を離した。

「ぷはぁ」

 かげろうは言った。

「し、声を出さないで」ジラはいう。

「あ、は、はい」

 と言って、かげろうは(今度は)自分で自分の口を塞いだ。

「よし。ゆっくりと、呼吸をして、口からその手を離して、なるべく静かな声で喋るんだ。いいね」

「……はい」ジラの言ったとおりにして、かげろうは言った。

「うん。『いい子だ』」とジラはかげろうの頭を黄色いコート越しに撫でながら、そう言った。

 そんなジラのことを、かげろうはなぜかとても珍しいものでも見るような(輝く)目で、見つめていた。

 それからジラは「私の名前はジラ。マゼンタ・Q・ジラっていうの。よろしくね」手を差し出して、ジラは言った。

「僕は竹田かげろうって、いいます。よろしくお願いします」

 ジラの差し出した手を両手でぎゅっと握りながら、頭を下げて、かげろうが言った。

「……竹田、かげろう。それが君の名前なんだ」(……ホロウにも名前があるんだ)

「はい。それが僕の名前です」かげろうは言う。

 ジラは口元に手を当てて、なにかを数秒、思考する。

 それから「かげろう。あなたは幽霊ホロウだよね?」とかげろうに聞いた。するとかげろうは「はい。僕は幽霊ホロウです。『ロストチャイルド(迷子)』ではありません」と真剣な顔でジラに答えた。

「ロストチャイルド?」ジラは言う。

「はい。僕はロストチャイルドではありません。立派な、一人前の幽霊ホロウです」とかげろうは言った。

 ……ロストチャイルドとはなんだろう? そんな言葉、手に入れた資料(秘密データ)にはなかったはずだ。

「みちびき。今の言葉は?」

『データにない言葉です。捕獲した幽霊。竹田かげろうの名前と声、姿の映像とともに、新しい言葉キーワードとして、データの中に記録しておきます』みちびきが答える。

 そんなジラの(まるで一人芝居のような)やり取りを、首をかしげながら、かげろうは見ていた。

 そんなかげろうを見て、ジラはにっこりと笑うと、「君は幽霊ホロウ。そしてここは幽霊ホロウの街の中で、間違いないよね」と言った。

「いいえ、違います。僕は幽霊ですけど、ここは幽霊の街でありません。ここは『天の川銀河の街です』」とかげろうは言った。

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