美味しい体勢
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今回はアル視点となっております。
『約束だよ?』
シルの言葉に胸が締め付けられた。どこかで同じ事を言われた様な気がする。
けれど今はそれどころじゃない。
何とかシルにガウンを羽織らせる事には成功したが、この体勢はヤバイ。
「アル、あのね。そろそろどいてもらってもいいかな?」
シルが顔を赤くしながら俺に聞いてきた。
やっとこの状態に気がついたのだろう。
そう、俺は今シルを押し倒している状態である。
男としては非常においしい……、いや嬉しい展開なのだがさてどうすべきだろうか?
「アル?」
シルからフワリと花の香りがした。
これは俺を誘惑しているのか?
いいや、シルに限ってそんな器用な事はできないはずだ。
けれど乱れた髪に露出肌が冷静でいようとする俺を妨げる。
「頼むから俺の前以外でその格好はしないでくれ……」
精一杯の自制からきた言葉がそれだった。
俺はやっとの想いで伝えたのだ。
「え?何?格好?」
シルは訳がわからないという感じでまるで気がついていない。
鈍いとは聞いていたが、ここまで無頓着なのか。
よくこれまで他の男に奪われなかったものだと俺は逆に感心してしまう。
「嫌じゃ……ないのか?」
「何が?」
きょとんとするシルに俺はもしかしたらシルに試されているのかもしれないと思った。
「ねえ、アル。どういうこと?」
本気でわからないのか俺に聞いてくる。
その態度に俺は若干イラつきを覚えた。
「わからないなら、教えてあげるよ」
俺は静かにそう言ってシルの首筋に顔を近づけた。
そしてその首筋をペロリと舐める。
「ひゃっ!」
シルの身体がビクンと揺れた。
「シルが俺を男として見ないのは勝手だが、男の俺にとってはこれは拷問でしかない」
「え?え?」
「自分の今の格好がわかっていないのか?どう見ても男を挑発しているとしか思えないぞ」
そう言って俺は『印』をつけたところを目印にしキスで辿った。
触れる度に彼女の身体が震え愛らしい声が聞こえる。
嫌なら蹴るなり暴れるなり抵抗すればいいのに全くしない。
寧ろこれは受け入れている?
「や……、アル……」
そう言いながらも拒絶する雰囲気はない。
もしかして恐怖でどするればいいかもわからないのか?
俺はまさか……と、血の気が引く。
少しだけ冷静になった俺はシルの様子を伺った。
「……?」
シルの息が乱れ潤んだ瞳で俺を見ていた。
恐怖とか嫌悪の目で見られていなくてホッとする。
けれど白い肌に高揚した頬、何かを訴えるかのような唇。
これは……。
「アル?」
「続き……、してもいいか?」
俺の問いかけにシルは小さく頷いた様に見えた。
その瞬間さっきまでの俺から理性が全てぶっ飛ぶ。
欲しい。
このまま彼女が欲しい。
「あ!アル!!ちょっと待って!」
近づいたタイミングでシルは暴れ始めた。
今更抵抗するのか?
けれど俺は今更止められない。
そう思いながらそのまま続けようとしたがシルは俺の背中をバシバシ叩いた。
地味に痛い。
「アル、違うの!大変、地図が!」
「地図?」
俺は半信半疑でシルの視線の先を見た。
すると地図が書かれた巻物が光を放ち消えかけていた。
「どうなっているんだ?」
俺の頭の中に理性が戻ってきた瞬間だった――。
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