表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
5/26

迷子の神さま

 学園の姫君 合同学園祭編の5話「顔合わせ」で、はぐれたルールーが何をしていたかのお話です。

「・・・・・ルールーさんが、いらっしゃいません」

「「・・・・・・え?」」

 つい先ほどまで、金糸雀カナリアと手を繋いでいたルールーが、なぜか居なくなっていた。


「・・・・フェリシアさん。とりあえず、あのロリ神を呼び出してください、ベースを出る前に、はぐれないようあれだけ釘を刺したというのに」

 ため息をつきながら、玉露ぎょくろが額に手を当てる。

「わ、分かりました」

 フェリシアが、ムムッと眉間にしわを寄せて、ルールーに呼びかける。


「・・・・・・あ、あれ?」

 少し戸惑った顔をしたフェリシアだが、再び集中するように、眼を閉じる。


「・・・・ダメです。ルーちゃんに繋がりません」

「はい?」

 フェリシアの言葉に、玉露ぎょくろ金糸雀カナリアは顔を見合わせる。

「そんなことはないでしょう?もう一度試してみてください」

「・・・・・やっぱりダメです」

 玉露ぎょくろが腕を組んで考え込む。


「・・・金糸雀カナリア、フェリシアさんとルールーを繋いでいるパスの術式用プログラムあるわよね?見せて」

「え?う、うん」

 玉露ぎょくろに言われ、金糸雀カナリアは術式のデータを送る。玉露ぎょくろの中に、膨大の量のプログラムが入り込む。


「・・・・・・・」

 受け取ったデータを確認し始めた玉露ぎょくろの表情が、秒単位で渋いものへと変わっていく。

金糸雀カナリア・・・・どうしてあなたは、プログラムが下手なの?」

「え?」

 呆れたように指摘する玉露ぎょくろに、金糸雀カナリアは首を傾げる。

「プログラムの3行目に27行目、それに249行目に・・・挙げたらキリがないけど、打ち間違えてるわよ」

「ウソ?!」

 金糸雀カナリアが、慌てて確認を始める。


「えっと・・・どういうことですか?」

 二人のやり取りを見て、フェリシアが不安そうに玉露ぎょくろに声をかける。

「フェリシアさんとルールーを繋いでいるパスなのですが、私も冬華とうかも彼女の身体などを創るのが忙しくて、金糸雀カナリアに術式の製作を任せていたんです。この子、術式の管理や構成などの組み立ては上手いんですけど、完全に一から作り出すのは苦手で・・・今の今まで術式を確認しなかった私たちも悪いですが・・・・」


「あ、これも・・・え?!これも!?・・・・うう、なんでぇ・・・・」

 玉露ぎょくろたちが見つめる先で、冷や汗を流しながら自身が作った術式を見直す涙目の金糸雀カナリア


「まぁ、緊急事態が起こる前に不備が発覚しただけでも、良しとしましょう。しかし、私有地内だと私の能力(人ごみの聞き手)は使えませんし、あの状態なった金糸雀カナリアは役立たずですし・・・・仕方ありません、アナクロですが足で探しに行きましょう」

「は、はい・・・・・あの、カナリアさんはどうされるんですか?」

「放っておきます。今の彼女に声を掛けても、反応を返しませんから」

 冷や汗で足元に水たまりを作る金糸雀カナリアを置いて、玉露ぎょくろがルールーを探しに行ってしまう。

「え?・・ギョ、ギョクロさん!?・・・・カナリアさん、ごめんなさい!!」

 

 心苦しく思いながらも、フェリシアも金糸雀カナリアをその場に残し、ルールーを探しに行った。


*************


「ほ~、フィリシアはここで勉強をしているのか」


 昊斗そらとたちと一緒に、フェリシアやフレミーが通っている”王立アイディール学園”へやってきたルールーは、フェリシアたちの心配をよそに、鼻歌交じりで学園の敷地内を歩いていた。


 代理神は、行動における思考ルーチンとして、常駐型・巡回型・放浪型と三つに分けることが出来る。  

 ルールーこと水の神ルドラは、この中で巡回型に入り、決まったルートではあるが”世界”を見て回ることが好きだった。

 

 それは、フェリシアと契約し”精霊”となっても変わることが無く、周りの隙をみては出歩こうとしていた。

「面白そうな所じゃなぁ・・・・・ん?こっちからいい匂いがする・・・これは、クッキーか!?」

 鼻をヒクヒクと動かし、好物となったクッキーの匂いのする方へと足を向けた。


「・・・・・・おかしいの、こっちの方から匂ったはずなんじゃが・・・」

 校舎内へ入ったはいいものの、様々なにおいが混ざってしまったために、途方に暮れるルールー。


「仕方ない、フェリシアたちの下へ帰るかの・・・・・ん?」

 フッと、周りを見渡したルールーは、自分がどこにいるか分からなかった。


「・・・そうじゃ!こういう時こそ、トウカたちが作ってくれた術を・・・・・」

 フェリシアと同様に、パスを介してルールーも思念を飛ばせば相手フェリシアとコンタクトが取れるのだが、パスのプログラムに不備があるため当然、フェリシアから反応が返ってこない。


「マズイ・・・・・フェリシア、怒っておるのか・・・・?」

 だが、不備のことを知らないルールーの顔から、サーッと血の気が引き、青くなる。

 勝手な行動をした自分に、フェリシアが怒っているのでは、と勘違いしたルールーが慌てて校舎の外へ飛び出す。


 しかし、自分がどちらから来たか分からないため、来た方向とは逆に走り出してしまう。


「・・・・・・ここは、どこなのじゃ?」

 完全に道に迷ってしまい、途方に暮れるルールー。

 トボトボと歩いていると、小さな石に蹴躓き、ビタン!と派手に転んでしまった。

「うううう・・・・・うわああぁぁぁ・・・・」

 

 膝を擦りむき、泣き出すルールー。

 昊斗そらと冬華とうかによって、”痛み”に対してトラウマを植えつけられたルールー。

 だが面白いことに、彼らに与えられた同等の激痛なら、我慢できる自信のあるルールーだが、ちょっとした痛み、例えば今のような転んで膝を擦りむくなどの痛みは、なぜか我慢できなかった。


「ペトラ、あの子」

「ん?」

 ルールーの傍を、二つの人影が通る。

「大丈夫?あなた、初等部の子だよね・・・・迷ったにしては、初等部の敷地からは離れ過ぎてるけど、どうしたの?」

 スンスンと、鼻を鳴らしながらルールーが顔を上げると、青く長い髪に紫色のメッシュが特徴の高等部騎士クラスの女生徒・・・ヴィルヘルミナの騎士であるフローラが、両膝をついてルールーの顔を除きこんでいた。


「フローラ、迷子か?」

「どうかな、この子・・・学年とクラスのバッジつけてないみたい」

 アイディール学園では、初等部から高等部までの全生徒に、学年とクラスを示すバッジをつけることを義務付けていた。

 そのバッジが付いていないことに、フローラは首を傾げている。

「ん~・・・転校の見学にきて、親とはぐれたとか、か?お嬢さん、名前は?」

 もう一人の女生徒、フローラの同僚であるペトラも膝をついてルールーと同じ目線となる。

「・・・ルールー」

「ルールーか、ここには誰と来た?」

「ソラトと・・・トウカ・・・・」

 痛みで思考がうまく回っていないためか、ルールーが傍から見ると人見知りの子供に見える。

「それが親の名前か・・・・・フローラ、とりあえず職員室に連れて行こうか」

「そうだね・・・・立てる?」

 フローラが、ルールーの手を取りゆっくりと立ち上がる。


「あ、ちょっと待ってね」

 フローラが、スカートのポケットからハンカチを取り出し、怪我していたルールーの膝に巻く。

「ごめんね。私、精霊術苦手で・・・・回復系の術が使えればいいんだけど」

 チラッと、ペトラの方へ視線を動かす。

「私は、精霊術自体使えないぞ!」

 なぜか胸を張るペトラ。


「ペトラ殿、フローラ殿。どうされたんですか?小道具を取りに行くと言ったっきり戻ってこないから、みんな心配していますよ?」

 後ろから声を掛けられ、二人が振り向くと、運動服を着たフレミーが立っていた。

「フレミー殿!いや、実は迷子を見つけてね」

「迷子ですか?・・・・・・!?」

 迷子と聞いて、ペトラ達に近づいたフレミーは、ルールーの姿を見て、悲鳴を上げる寸での所で思い留まった。


「おぉ・・・フレミー」

 フレミーの顔を確認し、安堵した声を上げるルールー。

「?なんだ、フレミー殿の知り合いか?」

「え、えぇ・・・・」

 あいまいな声を上げ、ルールーに近づきフレミーは膝を折る。

(ルドラ様!!何をなさっているのですか?!ソラト殿やトウカ殿たちと一緒ではないのですか!?)

 ペトラとフローラに聞かれないよう、小声で詰め寄るフレミー。

「少し散策していたら、はぐれてしまったのじゃ」

 先ほどまで、泣いていたとは思えないほどあっけらかんとしたしゃべりに、フレミーはめまいを覚え、ペトラ達は少し驚いた顔をしていた。


**********


「あとで姫様の下にお連れしますから、ここで待っていてください」

「ん、すまんの」

 知り合いに会えたため、ルールーの身柄はフレミーが預かることになった。

 だが、フレミー達がいる場所から、フェリシアのクラスがある校舎まで連れて行くには距離があった。

 どうしても外せない用事のあるフレミーだったが、他の誰かに任せることも出来ず、考えあぐねた結果、フレミーの下に居ることをフェリシアに伝えてもらうよう教師に頼み、フレミーはルールーを連れて教室へ戻っていた。


「フレミーさん、採寸しますから、こちらへ」

「あ、はい。いいですね、絶対に動かないでくださいね!」

 ルールーに念を押して、フレミーは簡易的な仕切りの中へと消えて行った。


 ルールーが周りを見渡すと、多くの学生が忙しなく動いていた。

「のうのう」

「はい?」

 近くに居た女生徒に声を掛けるルールー。

「ここにいる者たちは、一体何をしているのじゃ?」

「今度の合同学園祭で披露する、演劇の準備ですよ」

「演劇のぅ・・・・」

 大昔、人間が神への奉納として行っていた演劇を見たことがあったが、その時は特に気に留めることはなかった。


 しかし、間近で準備の熱を学生たちから感じ、ルールーは少しずつ興味を持ち始めていた。


「お待たせしました。では、姫様のところに参りましょうか?」

 採寸を終えたフレミーが、仕切りから出てきた。

「フレミーよ、ぬしはどんな役をやるのじゃ?」

 ルールーからの突然の質問に、フレミーは足を滑らせる。

「のう、どんな役じゃ?」

「ひ・・・秘密です!!」

 フェリシアの下へ行くまでの間、ルールーの質問にフレミーは口を割ることが無かった。


 フェリシアの下へとたどり着いたルールーは、玉露ぎょくろから突き刺さるような小言の雨を浴び、フェリシアにも「心配したんだよ!!」と怒られ、ルールーは自分のからはずみな行動を謝罪した。


 金糸雀カナリアによって書き直されたパスのプログラム(今回は、玉露ぎょくろが2度確認した)を、改めてフェリシアとルールーに上書きし、パスが繋がる。

 間違いなく作動することを確認し、胸を撫で下ろす面々。

「これで、今度ははぐれても大丈夫じゃな!」

 素直に謝ったかと思ったら、明るく言ってのけるルールーに、全員が呆れる。

 

 この後に、ルールーが自分の意志で街を出歩けるようになるのは、もう少し先の話である。 

  

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ