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死してなお、娘の為に 

この話は、ファルファッラがエメラーダを昊斗たちに預けた後の話です。

『二度と戻ってくるつもり、なかったけど・・・・・・・』

 侵入者を拒むかのように木々によって隠された里の入り口・・・の入り口。

 同族にしか分からないその入り口を前に、ファルファッラは鬱屈とした気持ちを吐き出すように、大きく息を吐いた。


 そこから、里の”本当”の入り口まで歩いていると、目の前に”壁”が立ちはだかった。


「ここより先、何人も立ち入ることは・・・?ファルファッラ?」

 現れた女性は、ファルファッラの顔を見るなり、驚いて目を見開いた。


 知り合いの反応に、どう返していいか分からず、ファルファッラの笑みが少し引きつる。

『久しぶりね、ヴィオーラ・・・・元気してた?』

「な、何で戻ってきたの?!エメラーダは?一緒じゃないの!?」

 やってきたのがファルファッラだと分かり、ヴィオーラは慌てて詰め寄る。

 彼女は、ファルファラの幼馴染で、ファルファッラ母娘が里を逃げ出す際に、里の外へと逃した人物でもある。


『置いてきたに決まってるでしょ?それより、あなたが入り口の番をしているなんて・・・・・やっぱり』

 彼女の置かれた状況を察し、ファルファッラが唇を噛む。


 本来、結界によって守られた里の外に、見張りを置く必要は殆どない。

 だが、里の中で問題、もしくは犯罪を犯した者にある意味での罰として、危険の伴う里の外の見張りをさせていた。


 そして、彼女がその見張りについている理由を、ファルファッラはたった一つしか思いつかなかった。

 自分たちの為に、幼馴染が命の危険が伴う罰を強いられていたことを知ったファルファッラは、申し訳なくなり視線を落とす。

 そんなファルファッラに、ヴィオーラは否定するように何度も頭を横に振る。

「気にしないで!ワタシは、自分が正しいと思ったから、あなた達を助けたのよ・・・後悔はないわ。・・・?ちょっと、ファル、あなた何か・・・」

 ファルファッラから感じる違和感に、ヴィオーラが眉をひそめる。


『うん。実は私、死んじゃったの。パッツィーアの馬鹿に殺されちゃった』

 昊斗そらとたちの時と同じく、実に軽い口調で自分の死を説明するファルファッラ。


 その言葉に、ヴィオーラの身体に衝撃が走った。


「!?うそ・・でしょ?・・・あいつ、あなたを連れ戻すって息巻いて、里を出たのよ?一体何が・・・・」

 何がどうなっているのか、思考が追いつかずヴィオーラの声が震える。

『その辺りの事情は、後で話してあげる・・・・・とりあえず、あなたは家に帰って、家族と一緒にすぐに里を離れて。出来ることなら、あなたたちをこれ以上大変な目に遭わせたくはないわ』


 何かを決意したような表情のファルファッラを見て、ヴィオーラはさっきとは別の意味で悪寒を感じた。

「・・・・何をするつもりなの?」

 震える声で問うヴィオーラに、ファルファッラは静かに口を開いた。


『里の奴らに、私たち母娘から手を引かせる為、一騒動起こすのよ』



 ヴィオーラと別れ、里の結界を抜けると、自分が帰ってきたことを知らせるために、気配を濃くするファルファッラ。


 時間を置かずして、広場には里の者たちがワラワラと集まってきた。

 その人だかりの中から、ファルファッラと年齢の変わらない二人の”若い男”が進み出た。


「・・・・・ファルファッラか」

 何処かパッツィーアに似た顔立ちの男が、ファルファッラを見て目を細める。

『お久しぶりですね。お二人ともまだ生きていたなんて、驚きですよ・・・・・それに、私が帰ってきただけで、これだけの人数が集まるなんて、みんな暇を持て余しているのかしら?』

 進み出た二人の内、ファルファッラに声を掛けたのは、パッツィーアの父であり、もう一人は里の長である。


 長命種であるハイエルフは、一定の年齢に達すると外見の変化は止まり、見た目は二十代の若者のように見えるが、二人の纏う雰囲気は、外見に似つかわしくない”重さ”を持っていた。


「・・・・わが息子、パッツィーアがお前を探しに、里を出た。一緒に戻ったのではないのか?」

 パッツィーアの父の言葉に、ファルファッラは目に見えて不機嫌な表情を作り、短く息を吐いた。


『馬鹿なこと言わないでくださいよ、ストゥーピドさん。何であんなボンクラと一緒に帰ってこないといけないんです?しかも、自分を殺した男と一緒だなんて、死んでもごめんですよ。あ、私もう死んでましたね。まぁ、あいつなら今頃、何処かの森で世界のために働いてるんじゃないですか』

 彼女の説明に、パッツィーアの父ストゥーピドは何かを察し、表情を固くする。

「・・・・・息子に何をした?」

 ――腐っても、私の倍以上は生きてるわね、とストゥーピドの理解の早さに、ファルファッラは不敵な笑みを浮かべる。

『私は何も。ただ、ある人たちの逆鱗に触れたせいで、物言わぬ樹にされましたよ』

「っ・・・・・・・・・」

 自分の息子が、外の者にやられたと聞かされ、頭の中が真っ白になったのか、ストゥーピドが言葉を詰まらせる。

 

 そんな中、沈黙を保っていた里の長がファルファッラを睨みつけ、口を開いた。

「そうか、ではお前の娘同様、その者たちも始末しなければいけないわけだな」


 長の言葉を聞き、ファルファッラは昊斗そらとたちの言葉を思い出す。


『短絡的・・・確かにそうね。まさか、無関係の人間を殺すなんてことが、許されるとでも思ってるの?』

黒き者(バンシィ)の存在を許すわけにはいかない。そして、それに助けの手を差し伸べる者も全員、我らの標的となる。それが決まりだ」


 長の言葉に、ファルファッラは吐き気を覚える。


 異世界に集落単位で召喚された弊害か、もしくは異世界人との最初の接触に問題があったのか。里はグラン・バースという世界との繋がりを今日まで断っている。

 

 そして、この里の中で遵守されるルールは、未だに元の世界のルールそのままだ。

 かつて住んでいた世界で、種族の頂点に立っていた彼らのルールは、世界のルールとして掲げられていた。


 その”ノリ”を、異世界でも通そうとする彼らに、ファルファッラは愚かと言う言葉しか思いつかなかった。


『相変わらず、何も変わらないわね。自分たちが守る、昔からの慣習こそ正しい、と信じて疑わない・・・・別の世界にやって来たにも拘らず、未だに自分たちが世界の頂点に君臨していると勘違いしている・・・本当に愚か者ばっかりね!』

 世界の広さを知らない里の者たち全員に、吐き捨てるように言葉をぶちまけるファルファッラ。


 その言葉を聞き、集まった住民たちの表情が険しくなる。

「それ以上の侮辱は許さん!その者を拘束しろ。そやつの知識は、この里の財産だ」

 思考停止から復帰していたストゥーピドが、住民たちに命令を下す。

 ファルファッラを取り抑えようと、数人の男が取り囲む。


 しかし、ファルファッラは自分を取り囲む男たちには目もくれず、ストゥーピドを睨みつける。

『ふざけた事を・・・私の知識は、私のものよ。そして、これはあんたが殺した父さんの生きた証でもあるわ!』


 彼女を押さえ込むため、防御壁を展開しファルファッラの結界を中和しようと試みる男たち。

 ファルファッラは、結界を一気に強化し膨張させ、逆に男たちの防御壁を消し飛ばしてしまう。

「?!」

「ば、ばかな!!ぐはっ!!」

 膨張した結界に弾き飛ばされ、男たちが方々へ吹き飛んでいく。


『パッツィーアに勝てないあんたたちが、あの馬鹿が裏技を使わないと壊せなかった結界を、破れる訳ないじゃない』

 パッツィーアと比べて数段力の劣る男たちに、聞こえていないと判っていながら、ファルファッラは欠伸でもしそうな様子で、男たちが飛んでいった方を見る。


 そのまま、長の方へ視線を戻し、ファルファッラは目を細める。

『これは、私の中に残った一欠けらの親切心からの最後の警告よ。これ以上娘に手を出せば、里に住む全員がパッツィーアと同じ運命を辿るわ。パッツィーアを倒した彼らからの伝言。「もし、これからもエメラーダを付けねらうなら、全員パッツィーアの傍に植えてあげる」だそうよ?・・・・・あなたたちに残された道は唯一つ。私たちのことを見逃し、忘れること』

 里全体を脅迫するファルファッラ。


 だが、長の反応は冷ややかだった。


「世迷言を。黒き者(バンシィ)は必ず災いを齎す。古くからの仕来り、違えることは出来ん。そして、人間風情に我らを退けることなど、出来るはずもない。パッツィーアの事も、お前の妄想であろう」

 思っていた回答にファルファッラは、目の前の長とその意見に肯くストィーピドを見て、もう救いようがないなと、自身の中で踏ん切りをつけた。

 後は・・・・と、今度は集まった住民たちに視線を向ける。


『そう・・・・・・・それが答え?あなたたちも、長やこの男の意見に賛成なのかしら?もし違うというのなら、今すぐにこの場から去り、里の外へ逃げなさい。特に”妊娠”している人や妊婦が家族に居る人は、今すぐにね。一生後悔したくないのなら』

 妙な言い方をするファルファッラに、住民たちが怪訝な顔をする中、何人もの住民が人垣を掻き分け走り去っていく。

 その姿に呼応すかのように、家へと走っていく人影が増えていく。


 最終的には、四〜五家族。十数人が里の外へと逃げ出した。


 里の結界から出たせいで、逃げだした者たちの気配が消えたことを感じ取り、人だかりからは、彼らを蔑む声が上がり、長とストゥーピドが自信げに笑みを浮かべる

「・・・・これが、里の総意だ。我らは、黒き者(バンシィ)がこの世から消えるまで、追い続ける」

 残った者たちを背に配し、ストゥーピドが声をあげる。


 何かが自分の中に落ちる感覚を覚えたファルファッラは、一瞬目を伏せる。

『・・・・・・・・・警告はしたわよ。恨むなら、古い仕来りに・・・・長やその男に縛られることを是とした、自分自身を恨むのね!!』

 ファルファッラは、玉露ぎょくろから貰った”カード”を躊躇い無く切った。


 彼女の胸から光の玉が現れ、一気に空へと昇り、空中で炸裂した。


 眩い光が里を包み、全員が光を遮る為、目を瞑ったり手で隠したりする。


 光が収まり、何が起きたのか確認する住民たち。

 しかし、目に見えて里の中に変化は無かった。

「何をしたのだ?」

 長の問いに、ファルファッラがゆっくりと、唇を動かす。


 その顔に、表情を一切作ることなく。

『この里の中に居る全員に、呪いをかけたの。しかも、私が知る限り、この里に居る存在・・ううん、この世界に住む誰も解けないとびきり強力な呪いよ』


 ファルファッラの不穏な答えに、長とストゥーピドは眉をひそめ、住民たちは不安げに辺りを見渡す。

「呪いだと?」

『そう・・・・今後、里の外に一歩でも出たら、”同族同士”による妊娠・出産が出来なくなるって言う、恐ろしい呪いよ』

 呪いの内容を聞き、住民から悲鳴が上がる。

 だがその悲鳴を、長は手振りで抑える。

「そのような虚言・・・・信用すると思うたか?」

『本当よ?この里に住む子供から年寄りまで全員。例外はないわ。もしこの場に妊娠の兆候がある人は、外に出ないことを薦めるわ・・・・・よかったじゃない。これで、あなたたちが望んでいる”純血”を守れるわよ?まぁ、一歩も里の外に出なければの話だけど』


 ファルファッラの言葉を理解出来たのか、住民の顔から血の気が引いていく。


 基本的に自給自足の生活を送る里の住民たちだが、里の中だけでは賄えない物が多々ある。

 

 その際たるものが、食べ物だ。


 それを得る為に、近場だが里の外へと出ることは少なくない。


 もし、里の外へと出られないとなると、すぐに食糧危機を迎えることになるのだ。


 住民たちから、「呪いを解け!」「子供は関係ない!」などの叫びが上がる。


 その叫びにファルファッラは、黙れ!と言わんばかりに結界刀を使って、手近な大木を切り倒した。

 轟音と共に倒れる大木を見て、住民たちが押し黙る。


『黙りなさい!!子供は関係ない?だったら私の娘はどうなのよ!ただ混血として生まれたと言う理由だけで、物心ついたばかりのあの子に、あんたたちは何をした!まだ十二歳の娘に、これから何をしようとしている!?あの時、見逃してって言って懇願した私に、あんたたちはなんて言った!!調子のいいことを言うのも大概にして!!今の私はね、あの子の為ならどんなに罵られようとも、この手を汚す覚悟は出来てるわよ・・・・・それから、何か勘違いしてるようだけど、別に、呪いが発動しても一生子供が出来ないとは言ってないわ。ただ、同族同士(・・・・)の妊娠・出産が出来ない、と言っただけ』


 この言葉に、ストゥーピドが目を見開く。

「・・・・ま、まさか」

 何処かで、目の前の男の”その表情”を見たいと望んでいたファルファッラが、ストゥーピドの考えを肯定するように肯く。


『そう、同族との間には子供は出来なくなるけど、別の種族の人となら子供は出来るわ』

「わ、我らに・・・進んで純血を汚せと言うのか?黒き者(バンシィ)を肯定しろ、と?」


 ファルファッラが狙ったのはこれだった。

 混血であることで娘が狙われるのなら、強制的に混血の子供を産まざるを得ない状況を、里の中に作り出せばいい、と。

 エメラーダと同じ子供が増えれば、娘が里から狙われることは無くなると考えたのだ。


 元々は、里を護る結界を張り方を知る長とパッツィーアの家族全員を殺し、里を護る結界を完全に消滅させ、里の中で生きていけないようにするつもりだったファルファッラ。


 だが玉露ぎょくろから貰った力を見て、方法を変えた。

 彼女から貰った力とは、使用者が思い描く”空想の力”を一度だけ発動させることの出来る、”術の素”だった。


 しかも、その自由度はファルファッラが望む呪いを生み出すのに十分すぎるほどだった。

 

 目的を達成したファルファッラの口元に、笑みが生まれる。

『そうよ。さぁ、この里に残された道は二つ。純血を守るために、食料の少ない里の中で緩やかな”種”の消滅を迎えるか、それとも生きていく為に純血と誇りと里を捨てて、里の外に出て行くか・・・好きな方を選ぶといいわ』


 ここに来て漸く、住民たちは自分がいかに愚かな選択をしたのかを思い知らされ、その場に棒立ちになる者、膝から崩れ落ちる者、泣き叫ぶ者で溢れかえった。

「ファルファッラ・・・・分かっているのか?・・・お前のやったことは大罪だぞ!」

 そんな中、ストゥーピドがファルファッラに掴みかかろうと襲い掛かる。


 だが、ファルファッラは結界刀で彼の進路を切り裂き、足を止めさせ彼を指差した。

『何が大罪よ!私はこの場に居た全員に警告したわよ、長たちの意見に反対なら、この場から去れ、と!それに、私はあなたたちに新しい道を示してあげたのよ。純血を護るために近親で交わり続け、子供が生まれ難くなっていたこの里にね!何の為に生きるのか、もう一度よく考えてみるのね』


 そのまま踵を返し、里の入り口へと向かうファルファッラ。

 だが、何かを思い出したように足を止め、振り返った。


 その顔は、その場に居る全員が、身体の底から恐ろしいと思えるほどの、満面の”笑顔”で彩られていた。

『・・・・・あともう一つ。私は、この場にいる全員を一生許さない。言っておくけど、私を如何にかしても、呪いが消えることはないからね。今度、私と娘の前に現れたら、警告なしで殺すから』


 それだけ伝え、ファルファッラは振り返ることなく、里の外へと出て行った。



「ファル・・・・・・」

 里の入り口の入り口までくると、ヴィオーラとその家族。そして、ファルファッラの警告を聞き、里の外へと逃れた家族たちがファルファッラを待っていた。


 その顔ぶれを見て、ファルファッラは無性に笑いがこみ上げてきた。


『・・・・なんだ。あの時逃げたのって、皆だったんだ』


 そこにいたのは、ファルファッラと同世代の、幼馴染という名の腐れ縁たちだった。

 成長したが、そこにある顔ぶれは何も変わってはいない。


「君との付き合いは、誰よりも長いからな。あの顔をしているファルは、何を仕出かすか分かったものではない。すぐに逃げろ、って言うのがボクたちの中で暗黙の了解になっていたからな」

「そうそう。ねぇ、覚えてる?子供の頃に・・・・・・」

 幼馴染たちの昔話に、ファルファッラは恥ずかしさを覚えながらも、同時に申し訳ない気持ちがこみ上げてきた。


 ヴィオーラのように、直接ファルファッラたちを逃がす手助けをした訳ではないが、彼らも見えないところで手を貸していた。

 そのことを、うすうす感づいていたファルファッラは、幼馴染たちの前で深々と頭を下げた。

『ごめんね。私のせいで、皆に迷惑掛けて、里を出る羽目になってしまって。あ、住む場所は私が紹介してあげる。もしそこが無理なら、別の場所を探すから、みんな・・・』

「ファル!!」

 突然、ファルファッラの言葉を遮るようにヴィオーラが大声を上げる。


『?!』

「いいの、そんなこと気にしなくて・・・皆、全部承知であなたに手を貸して、そして里を出たんだから」

 ヴィオーラの言葉を受け、全員が肯く。

「あぁ・・・それに、自分たちの住むところくらい、自分たちで探すさ」

「ファルちゃんも言ってたじゃない。里の者は世界広さを知らないって。だから、世界を見てまわるのもいいかなって思ってるの」

「さすがに、死んでる奴に何から何まで助けてもらうのも、格好付かないだろ?」

 幼馴染たちの言葉に、ファルファッラは精神だけの存在となったはずの自身の胸が、熱くなるのを感じた。

『みんな・・・・・・・・』

 そして、感情があふれ出し、ファルファッラはまるで子供のように泣き出してしまった。

 そんなファルファッラを、ヴィオーラを始めとする同性の幼馴染たちが、優しく抱きしめるのだった。


「あなたは、これからどうするの?」

 ヴィオーラの問いに、泣き止んだファルファッラは、「う〜ん」と先ほどの痴態を誤魔化すように、背伸びをする。


『まぁ、娘を見守って過ごすわ。そのくらいしか今の私には出来ることがないしね。それに、呪いが発動するのも厭わないで襲ってくる奴もいるでしょうから、そいつらで遊ぶとするわ』

 当分は、襲われることはないと考えるファルファッラだが、時間が経ち里の中の住民達が精神的に追い詰められ、再び刺客を差し向ける可能性も無くはないと、不敵に笑う。


 そんなファルファッラを見て、ヴィオーラは「もう、大丈夫そうね」と小さく呟き、笑みを浮かべる。

「そっか・・・・・落ち着いたら、手紙でも出すわ。何処に送ればいい?」

 死者である自分に送り先がないな、と思い何処かいい場所は、と考えていると、思い当たる”人物”がいた。

『・・・そうね、じゃあルーン王国にある木漏れ日の森を管理している、ポンタさんってひとの所に送って。そうすれば、私に届くから』

「木漏れ日の森のポンタさん、ね。分かった・・・・・・それじゃ、元気でね」

 ヴィオーラが手を振り、新たな世界へと旅立って行く。

 他の面々も、ファルファッラに手を振り、それぞれの道を歩き出す。

『うん。みんなも元気で』


 幼馴染たちの背中を見送り、ファルファッラはもう一度彼らに頭を下げる。


『さぁ、エメが心配してるだろうし、帰ろっか・・・・・と思ったけど、やっぱ愚弟に顔出しとかないと不味いわよね』


 ファルファッラの弟は、一緒に里を抜け出した両親が追っ手に殺された後、独りで生活していた。


 聖域にたどり着く前に会ったきりなので、自分やエメラーダの近況を伝えておかなければ、と思ったのだが・・・・・


『怒られるだろうなぁ・・・・・まぁ、怒られついでに、色々頼みごとしておくか』


 そう言って、ファルファッラは弟が住んでいる町の方向を見据え、静かに消えていった。


元々、この話は本編に載せるつもりで書いていた話でしたが、諸事情でこちらにアップしました。


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