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Episode 3 二日目 高山

 アラームで目を覚ますと、外は雪で真っ白になっていた。昨日の夜は大雪予報だったので、夜のうちに結構降ったのだろう。

 朝ごはんまで時間があるので、着替えてメイクやヘアセットをしてしまう。

 今日は新穂高ロープウェイに行く予定だったが、昨日のうちに運行中止するかもという話が出ていたので、下呂へそのまま向かうことにした。また今度、新穂高に遊びに来るときの楽しみにしよう。


 朝ごはんの時間になり、食堂へ向かうと、昨日の夜ごはんと同じようにいい匂いがしてきた。

 おかずは鮭や卵焼きを筆頭に、様々な小鉢が並んでいて、ご飯とお味噌汁がついている。中でも存在感があったのは、炭火で焼けるように準備された油揚げ。味つけがされているようで、炭火で少し焼くと、焦げ目がついた。一口食べてみると、口の中に油揚げの香りが広がった。油揚げがこんなにもおいしいとは。これだけでご飯を何杯も食べられそうだ。思わず写真を撮って、LINEで祖母に送った。

 その後聞いた話だが、祖母も油揚げが食べたくなり、その日のうちにスーパーに買いに行って味つけし、焼いてみたらしい。私も家に帰ったら作ってみよう。炭火は難しいが、トースターで代用できるだろうか。


 朝ごはん中、宿の方が雪かきをしていた。そもそも雪かきをしたことがないし、こんなに積もっている雪かきなんて、まず経験できない。声をかけたら少しやらせてもらえるだろうか。でも、未経験すぎて逆に雪をばらまく可能性もある。そんなことを考えながら少し急いで朝ごはんを食べ、出発の準備を済ませる。すべて整ってから外を見ると、既に雪かきは終了していた。

 雪かきもまた今度の楽しみにさせてもらおう。私は漫画コーナーに行き、昨日の話の続きを読みながら出発の時間を待った。


 宿の方にバス停まで送ってもらい、小屋の中でバスを待つ。

 小屋のドアには、オコジョの保護活動についてのチラシが張ってあった。実家の山奥にもオコジョは出るので身近な存在だったが、もしかしたら絶滅危惧種とかなのかもしれない。

 ふと小屋から外を見てみると、目の前の空き地が売地になっていた。食料や病院、雪かきのことを考えると難しいが、そういうことを全て度外視したら、こういう地に引っ越したい気持ちはある。少なくとも、将来は自然の中で家庭菜園をしたり、動物と暮らしたい。


 バスは大雪の影響で五分程度遅れたが、無事に来てくれた。

 途中、バスの前を小動物が横切ったが、あれはオコジョだったのだろうか。そう考えていると、いつの間にか眠っていた。


 目を覚ますとバスは町中に出ていて、窓の外には古い町並みが広がっていた。寝起きでバスは降りられなかったが、スーツケースをコインロッカーに預けたら歩いて来てみよう。


 スーツケースを預けて、少し歩くとバスの中から見た町並みに変わってきた。道には雪が積もっていて、趣がある。

 大きな川沿いでは朝市をやっていて、人で混雑していた。さすがに旅行中なので野菜は買えないが、何か食べたいなぁと思っていると、カフェを見つけた。アップルパイがおすすめらしい。せっかくなので、飛騨りんごのジュースと一緒に小休憩を挟むことにした。

 結果、アップルパイは今まで食べたものの中で一番おいしかった。今までは母親が作ったアップルパイが一番おいしいと思っていたが、そこにもう一つおいしい味を足した味がする。りんごか、シナモンか、他のものか…。家に帰って研究してみよう。


 その後、祖母におすすめしてもらって、合掌造りを見に行くことにした。歩いて向かっている途中、雪が降り始めてしまったが、ちょうどバス停にバスが止まっていて、思わず飛び乗る。

 飛騨の里では傘の貸し出しもしていて、ありがたく使わせてもらった。

 合掌造りは確かに屋根の上の方は雪の積もりが少ない気がした。昔の人の知恵だろう。ただ、隙間風が多そうで、私は耐えられないと思う。

 雪も結構降っていて、ほとんど吹雪になっていたが、さすが子どもたちは元気がいい。雪だるまを作ったり、雪合戦をしたりして全力で遊んでいる。国籍関係なく、雪で遊ぶ内容は一緒で、どんな場所で生活していても、根っこの感性は同じなのかなと微笑ましい。


 昨日の外国人とは違い、私が駅に着いた頃には特急列車の入場が既に始まっていて、切符を見せたら改札を通ることができた。無事特急列車に乗り、下呂に向かう。

 昨日とは違い、列車の中は空いていて、乗客は半分もいなそうだ。それに日本語もちらほら聞こえてくる。ポケモンがどうだ、switchがどうだとアニメやゲームの内容が多く、私としては仕事柄、この手の話題は知っておきたい分野だ。後ろでお父さんが静かに、と注意しているが、これ幸いと、子どもたちの話を聞かせてもらった。

 そうしている間にも雪は降り続け、電車の中にいてもどんどん寒さが増す。下呂に着く直前に、マフラーと手袋をつけ、準備万端でホームに降りた。


 改札を出ると旅館のバスが迎えに来てくれていて、同じ旅館に向かう人と一緒にバスに乗り込む。やはり外国人の方が多そうだ。運転手も外国人で、日本語と英語を巧みに操りながら乗客に説明していく。

 バスが定員になり、乗客が立って乗ろうとしたところ、運転手が声をかけた。

「また後で迎えに来るので、バスから降りて少しお待ちください。」

しかし、外国人なので伝わらなかったのか、運転手が英語で言い直した。しかし、それも伝わらなかったらしい。一向にバスから降りないようで、しびれを切らした外国人の乗客が声を上げた。

「デル、イッテル。」

熱量で伝わったのか、乗客が降りてくれてバスが発車した。言語は熱量も大切かもしれない。


 旅館に着いて、一番初めに驚いたのは、スタッフが多いことと、そのスタッフのほとんどが日本語ペラペラの外国人だということ。もちろん日本人のスタッフも英語ペラペラで、様々な国籍の旅行客の対応を行っていく。英語科に通っていた高校の友達はこういうところも就職先になるのかもしれない、と就職から何年も経ってから知ることができた。


 チェックインをして部屋に着き、さっそく最上階の展望大浴場に向かう。

 少し早い時間もあり、大浴場は空いていた。

 展望大浴場ということもあり、浴場は大きなガラス張りになっていて、下呂温泉を見下ろせる形になっていた。まだ日も沈んでおらず、外が明るかったので、人や車の流れを観察しながらお風呂を堪能した。


 夜ごはんも食べ、露天風呂へ向かう。今日は雪も止んでいるから星が見えるかもしれない。

 うきうきして露天風呂に出てみると、半分程度屋根がついていた。星は見えるが、オリオン座は半分程度隠れていて、冬の大三角もおおいぬ座とこいぬ座が見えないので見つからない。そんな中、存在感を放ってきらきら輝いているのは木星だ。

 目隠しは必要だし、しかたがない。星空はまたリベンジしよう。私は肩までお湯につかって温まると部屋に戻った。


 部屋に帰ってきて、岐阜テレビを見ながら明日行きたいお店を調べることにした。旅行先でやっている地方テレビは普段見られないので新鮮だ。

 明日行くのは下呂温泉街で、徒歩で回れそうだ。

 かわいい外壁で有名なプリン屋さんや、カエルをモチーフにした神社など、インスタ映えしそうな場所も多い。そのあたりを回って、お昼も食べてから家に帰ろうかと考えながら、次は持ってきていた本を読むことにした。

 この本を前回読んだのは高校生の時だったか。とにかく結構前だ。

 久しぶりに読む小説は、前回読んでいたときに感じたこととは別のことを感じられて面白い。当時は主人公の目線で読んでいたが、今はその周囲にいる大人の目線であったり、主人公の目線でも物事を客観的に見られるようになったりと、少し大人になったのかもしれない。


 寝る時間ギリギリまで読み進め、切りのいいところで終わりにした。また明日読もう。

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