Episode 4 三日目 下呂
アラームより早く目を覚まし、障子を開けると、部屋に冷気が流れ込んできた。昨日より寒いかもしれない。
朝ごはんまでに着替え、メイク、ヘアセットを終わらせて、食事会場へ向かった。
朝ごはんはビュッフェスタイルで、私は白米にお味噌汁、鮭の塩焼きに肉じゃがと和朝食にしてみた。お肉コーナーでは調理スタッフが何かを盛りつけていたので、見に行ってみても良かったかもしれない。
部屋に戻って一息つき、昨日の小説の続きを読み始める。チェックアウトは十一時なので、ゆっくりする時間はある。昨日調べた限りでは、早く出ても温泉街の営業は始まらないようなので、十時半くらいにチェックアウトできたらいいだろう。私はありがたく小説の世界に入っていった。
十時半になり、小説の方も切りのいいところまで読み進められたので、チェックアウトの準備を始める。
今回の旅は漫画や本を読みながら、ゆっくり過ごすことができた。観光地を回るのはそこそこに、こんな旅もいいかもしれない。
チェックアウトをして、スーツケースだけ旅館に預けて外に出ると、やはり昨日と比べて段違いで寒い。これが岐阜の冬なのだろう。温泉街まで少し歩く間に温まるだろうか。
結果は全く温まらず、なおかつ、鼻先が冷えるため鼻が痛くなる始末だった。
しかたがないので、そのまま気合で昨日調べた場所へ向かう。
まずはカエルをモチーフにした神社へ向かった。確かに、灯篭がカエルの形になっていたり、カエルの置物があったりと、かわいさ満点で、つい写真をたくさん撮ってしまう。それは他の観光客も同じなようで、時間が経つにつれ人が集まってきた。
写真も撮れたし、神様にも挨拶できたので満足だ。次は少し路地を歩いてみようか。
道路は雪で覆われており、時には雪解け水が凍っていて、滑りやすくなっていた。足元に気をつけないとすぐに滑りそうになる。
足元を見ながら道路を歩いていると、青い石のようなものが道路にはめ込まれていることに気がついた。じっと観察しながら歩いていると、その青い石でカエルの顔が描かれている場所もある。すべてが雪で覆われていたら見えないところだった。少し溶けていてよかった。
そう思い目線を他へ向けると、マンホールや壁にもカエルがいることに気がついた。下呂だから、ゲロとなってカエルなのか、カエルだからゲロとなって下呂なのか、調べればわかることだが、無駄なことを考えるのも面白い。答えを知らないままにしておくのも楽しいか、と思って調べないことにした。
その後はかわいい外壁で有名なプリン屋さんんにも向かい、温泉につかっているプリンや、桶がはめ込まれた外壁の写真を撮った。プリンはもちろんおいしかったが、湯煎だからおいしかったのか、冷たいほうがおいしいのかは謎のままだ。
お昼は旅の締めとして、飛騨牛の乗ったラーメンを食べることにした。
お店に入ると、お昼前というのもありすぐにカウンターに案内してもらえた。
頼んだラーメンを待っていると、後ろのテーブル席から話し声が聞こえてきた。
「あの人、一人だけど寂しくないのかな。私だったら無理だわー。」
少し笑いを含んだ女の人の声だ。ずっと視線は感じていたが、そういうことか。好きで一人旅をしているが、こう言われることは多い。その度に少し傷ついて、好きでやっていることだから傷つかなくていいのに、とまた少し傷つく。
「あー、うん、そうだね。」
彼氏なのか、一緒に座っていた男の人は特に興味がないのか、私に気を使ってか、無難に返事をしている。女の人はその返答がつまらなかったのか、少し無言になったあと、無理矢理違う話を始めた。
言われ慣れているので、そんなことはすぐにラーメンでかき消された。飛騨牛もやっぱりおいしい。
旅館に戻る間に家族や友達、職場へのお土産を買い、旅館に預けていたスーツケースを受け取る。駅までのシャトルバスも出ていたが、今回は歩いてみることにした。せっかくなら、下呂の街を堪能してから帰ろう。
思ったよりも駅は近く、すぐに改札に着いた。そこで順番待ちをしてホームに入り、帰りの特急列車に乗る。
帰りの乗り換えもスムーズに行き、無事、家の最寄り駅に着いた。もう後は家に帰るだけだ。家に帰ったらまた慌ただしい日常が流れる。
今度はどこに行こうか。岐阜の近くなら石川や富山も行ってみたいし、食い倒れなら大阪にも行ってみたい。古い町並みなら京都や奈良にも行きたい。暖かい場所なら、四国や九州にも行きたいし、スノースポーツなら東北もいい。
そんなことを考えながら、またしても私は電車に揺られて目を閉じた。




