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第八章 動き出す人形と夜のいたずら

映画ノベライズ『もしも、僕の彼女が妖怪ハンターだったら。。。(おかわり)』第八章「動き出す人形と夜のいたずら」をお届けします。

今回は、夜の民家を舞台にした少し不思議でクスッと笑える日常(?)エピソードです。人間のように振る舞う付喪神のロレッタと、なぜか動く人形を見ても全く驚かない市華。前章までのドタバタ劇から一息つき、静かな夜の裏側で密かに進行するロレッタの悪戯計画が幕を開けます。

少し不気味な妖怪すらもコメディに変わってしまう、本作ならではのほっこりとした夜のひとときをお楽しみください。

薄暗い夜の廊下を、自分の背丈ほどもある巨大な筆ペンを抱え、人形のロレッタが機嫌よく歩いていた。

「フン、フン、フフン、フフン、フン、フフン」

鼻歌交じりに進んでいたロレッタだったが、ふと足を止めた。向こうから、市華が歩いてきたのだ。

ロレッタは慌てて動きを止め、ただの人形であるかのようにピタリと静止した。しかし、明らかに不自然な体勢のまま誤魔化しきれないと悟ったのか、やがて諦めたように「はあ……」と小さくため息をつく。そして、ペコリと頭を下げた。

「こんにちは」

すると市華は、動く人形を前にしても驚く様子もなく、にっこりと微笑んだ。

「こんにちは」

ごく自然に挨拶を返し、市華はそのままロレッタの横を通り過ぎていく。ロレッタは戸惑ったように振り返りながらも、再び筆ペンを抱えて足早にその場を立ち去った。

ロレッタとすれ違った後、市華は少し開いた襖の陰にひっそりと身を潜めていた。その視線の先には、居間で何やら書き物をしたり、作業をしたりしている大和、雛、七海の三人の姿がある。市華は、真剣な顔で作業をする彼らをじっと見つめながら、静かに呟いた。

「大和」

同じ頃、翔太は割り当てられた寝室へと足を踏み入れていた。手に持っていた白い割烹着を乱雑に置き、ふと部屋の一角にあった本を手に取る。表紙には、血の涙を流す恐ろしい人形の写真と共に『呪いの人形 恐怖の夜』というおどろおどろしいタイトルが書かれていた。

「親父、こんな本読んでたのか」

翔太は興味を惹かれたようにその本を座卓に持ち込み、あぐらをかいてページをめくり始めた。

「おお、この人形怖っ」

薄暗い部屋の中、本を読み進める翔太。しかし彼は気づいていなかった。背後のテレビボードの上に、先ほど廊下を歩いていた人形——ロレッタが、大きな筆ペンと共にちょこんと座り、息を潜めていることに。

……やがて、静寂に包まれた部屋に規則的な寝息が響き始めた。翔太はすっかり本に飽きたのか、座卓に突っ伏すようにして眠りこけていた。楽しい夢でも見ているのか、だらしなく口元を緩ませて寝言をこぼす。

「市華ちゃん……」

その時、宙から突如として、白とピンクの柄が入った着物の袖——妖怪『小袖の手』がぬらりと現れた。その青白い手が、寝ている翔太の背中に割烹着を静かにかける。翔太はわずかに顔をしかめ、鬱陶しそうに肩をすくめたが、目を覚ますことはなかった。

「市華ちゃん……」

再び甘い寝言を呟く翔太の頭のそばに、いつの間にかテレビボードから降りてきたロレッタが立っていた。自分よりずっと大きな翔太の寝顔を覗き込み、ロレッタはニヤリと悪戯な笑みを浮かべる。

「ふーん……よし」

ロレッタは、抱えていた巨大な筆ペンをしっかりと構え、翔太の顔へと切っ先を向けた。

「かわいくなーれ」

ロレッタはそう唱えながら、無防備な翔太の顔に容赦なく筆を走らせるのだった。


第八章「動き出す人形と夜のいたずら」、いかがでしたでしょうか。

動くロレッタに全く動じない市華の態度は、彼女自身が「水晶」という特別な人形を連れているからこその反応ですね。一方で、ホラー本を読みながら市華の夢を見てだらしなく眠る翔太。そっと割烹着をかけてくれる妖怪「小袖の手」の妙な優しさと、巨大な筆ペンで容赦なく落書きを始めるロレッタのコンボが見事な笑いを誘います。

翌朝、翔太の顔がどんな「かわいい」仕上がりになっているのか……映像版ではその見事な落書きっぷりもしっかりと確認できます。和やかな夜のいたずらの裏で、襖の隙間から大和たちを静かに見つめていた市華の目的も気になるところです。次章の展開もどうぞお楽しみに!

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