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第三章:林の死闘

映画ノベライズ『もしも、僕の彼女が妖怪ハンターだったら。。。(おかわり)』第三章「林の死闘」をお届けします。

今回は、大和が身を挺して(?)巨大妖怪の釣りエサとなる決死のアクションシーンです。大百足(おおむかで)に猛スピードで追われながらの雛からのスパルタな指示や、七海との全く噛み合わない起爆スイッチのパス回しなど、命懸けの緊迫感とドタバタなコメディ要素が入り混じる怒涛の展開が繰り広げられます。

息つく暇もない夜の林での死闘、どうぞお楽しみください!

夜の林の中。草木が鬱蒼と茂る開けた野原を、稲田大和は必死の形相で駆け抜けていた。その腰には長いロープが巻き付けられており、ロープの先には釣りのエサ代わりとなる鶏肉が引きずられている。

「これじゃ、釣りのエサだー!」

大和が叫びながら野原を横切ると、すぐ後ろから鶏肉を追って、不気味にうねる巨大な妖怪・オオムカデが姿を現した。

「うわ、来た!あーっ!」

オオムカデが鶏肉に勢いよく喰らいつく。

大和は鶏肉ごとオオムカデをロープで引きずりながら走る羽目になってしまった。

慌てて、爆弾のスイッチを押す大和。

しかし爆発はしない。

その時、少し離れた木陰から謝花雛が鋭い声を飛ばした。

「大和、ふた!」

「ふた? ふた?」

手元のスイッチには、赤い安全カバー(ふた)がかかっていたのだ。パニックに陥った大和は、うまくふたを開けることができない。

「ふた!ふた!ふた!」

雛が苛立ったように連続で指示を飛ばす。

「ふた! あっ」

大和が焦って強く引っ張ったため、コードからスイッチ部分がすっぽりと抜けてしまった。

外れたスイッチを草むらに落としてしまう大和。しかし、すぐ背後までオオムカデが迫ってきているため拾う余裕はなく、そのまま逃げ去ってしまった。入れ替わるように、赤い服を着た七海が飛び出してくる。

「スイッチ、大和!」

七海は落ちたスイッチを見つけて拾い上げ、大和に声を掛ける。しかしそこへ、大和がオオムカデに追われて戻ってきた。

「大和!スイッチ、大和!」

しかし、大和の後ろから追いかけてくるオオムカデの恐ろしい姿を見た七海は悲鳴を上げ、たまらず逃げ出してしまう。

お互いの焦りが交差する中、再び大和が駆け込んでくる。

「七海!七海、七海!七海!パスして!逃げないで!七海!七海、逃げないでって!」

大和は七海にスイッチをパスするように叫ぶが、二人の息は全く合わず、距離は縮まらない。見かねた雛が声を荒げる。

「パス!パス!パスしろ!」

大和と七海は一緒に逃げ回りながらスイッチを渡そうと右往左往し、パニック状態の叫び声が夜の野原に響き渡る。

「やー!」

「パス!」

「ここ!」

「七海!」

「ここ!」

「違う、七海!」

「早く!」

「七海!七海、逃げないでって!」

結局うまく渡せず、大和は再び叫びながら暗闇へ逃げていく。

「大和ー!」

「あーっ!」

逃げ回っていた七海はたまらず変身し、狐の面を被り巫女装束を纏った「狐巫女」の姿になった。

「パスって!七海!七海!七海、パスだって!大和!七海!七海!パス!」

走り寄る二人。狐巫女から大和の手に、ついにスイッチが手渡された。

「ふた!」と大和。

「大和、スイッチ!スイッチ!」と雛。

「押してー!」と、狐巫女姿の七海。

大和は素早くコードをスイッチに繋ぎ直し、赤いカバーを開けると、渾身の力を込めてボタンを押し込んだ。


ドーン!!

強烈な爆発音が林に轟き、眩い閃光とともに土煙が上がる。オオムカデは木っ端微塵に吹き飛んだ。木陰で見ていた雛が、満足そうにニヤリと微笑む。爆風が収まると、そこにはホッとした表情の大和と、元の姿に戻った七海が立ち尽くしていた。

「危ないところだった」

七海が大きく息を吐き出す。大和は抗議するように雛の方を向いた。

「ちょっと、雛ちゃん!カバーかかってるんだったら先に言ってよ!」

しかし雛は悪びれる様子もなく、冷たく言い放つ。

「いいから、早く次のエサつけて」

「はい」

大和は素直に頷くと、今度は生の鶏肉に爆薬を取り付け、ロープの先に結びつけた。

「早くつけて走れ!走って、走って!ゴー!」

大和は再び鶏肉を引きずりながら駆け出した。しばらく走り、大和は立ち止まって自信満々に振り返る。

「今度は楽勝」

笑みを浮かべたその時、背後の地面がボコボコと盛り上がり、凄まじい勢いで巨大な口が飛び出してきた。鋭い牙がびっしりと並ぶ巨大なワームのような妖怪――ノヅチが、鶏肉を丸呑みにする。

「えええええ!!なんか違うの出たぁ!!」

大和は目を剥いて驚愕した。

「でも、これがある!スイッチ、オン!」

大和は手元の起爆スイッチを強く押し込んだ。ノヅチの体内でボン!とくぐもった爆発が起こる。しかしノヅチの体は一瞬膨らんだだけで元に戻り、口からむせるように黒い煙と炎を吐き出しただけだった。

「えっ!?えっ!?爆弾効かないんですけど!?聞いてないよ!」

絶望する大和の前に、狐巫女が颯爽と飛び出し、剣を構えてノヅチの前に立ち塞がった。

「七海!」

大和が期待を込めて叫ぶ。しかし、ノヅチのグロテスクな姿を見た狐巫女は、震え上がりながら元の七海の姿に戻ってしまった。

「無理!私ミミズ苦手!」

「ちょっと!ちょっと!七海!ちょっと!七海!」

七海は完全に戦意を喪失し、大和の横を全力で駆け抜けて逃げ去ってしまった。残された大和もたまらず必死に逃げ出す。

「うわぁぁぁ!」

ノヅチは地響きを立てて大和を追うが、途中で再び土の中に潜り、姿を消した。大和が立ち止まり、恐る恐る振り返る。何もいない。ホッとしたその瞬間だった。

大和のすぐ背後の地面が爆発したように吹き飛び、ノヅチが巨大な鎌首をもたげた。

「ええーっ!!」

ノヅチが大きく口を開け、凄まじい吸引力であたりのものを吸い込み始める。

「うわぁぁ!」

突風に足元をすくわれた大和は転倒し、そのまま強烈な力でノヅチの巨大な口へと引きずられていく。

「助けてー!」

大和の悲鳴が、夜の林に虚しく響き渡った。


第三章「林の死闘」、いかがでしたでしょうか。

大百足との絶体絶命の鬼ごっこを乗り越えたと思いきや、体内での爆発すら効かない巨大妖怪・野槌(のづち)の想定外の出現。さらに「ミミズは苦手!」と戦いを放棄してしまう七海のリアクションなど、本作ならではのコミカルなテンポ感が存分に発揮されたシーンでした。強烈な吸引力で野槌の口へと引きずり込まれていく大和は、果たして無事なのでしょうか……!?

映像版では、3DCGでダイナミックに描かれた大百足の不気味なうねりや、ミニュチュアの野槌の圧倒的なスケール感がより大迫力で味わえます。

なお、各配信サイトで公開中の本作(『おかわり』)の映像本編には、前作『もしも、僕の彼女が妖怪ハンターだったら。。。』のダイジェスト映像も収録されております。前作をまだご覧になっていない方や、これまでの大和と雛の軌跡を振り返りたい方も、物語にすんなりと入り込めるようになっておりますので、ぜひ配信サイトで映像版も併せてご視聴ください!

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