第十九章 水晶の願いと雛の覚悟
映画ノベライズ『もしも、僕の彼女が妖怪ハンターだったら。。。(おかわり)』第十九章「水晶の願いと雛の覚悟」をお届けします。
今回は、物語がいよいよ最終局面へと向かっていく重要なターニングポイントとなるエピソードです。大和の部屋に現れた不思議な少年・水晶からの切実なSOS。そして、夜の森の橋の上で交わされる、七海の真っ直ぐな恋の宣戦布告と、それを受け止める雛の静かな決意。
それぞれの譲れない想いが交差する、静寂の中にも胸が熱くなる展開をお楽しみください。
夜の静寂に包まれた大和の部屋。部屋の明かりが消え、暗闇の中で天井から下がる照明の紐が、振り子のようにゆらゆらと揺れている。大和が部屋に帰ってきて紐を引き、パチッと明かりをつけた。
「あー……っ!」
大和は目を見開き、驚きの声を上げた。部屋の隅に、淡い水色の着物を着た少年、水晶が立っていたのだ。彼はあの手毬を両手で大切そうに抱えている。
「えっ……水晶?」
大和が戸惑いながら名前を呼ぶと、水晶は静かに大和を見つめ、少し悲しそうな声で言った。
「遊びたい」
「……遊びたいの?」
大和が聞き返すと、水晶は小さく頷いた。
「紅玉と」
「紅玉って……葛城のところにいる、あの子だよね」
大和が思い出すように言うと、水晶は手毬をギュッと胸に抱き寄せた。
「僕の……大切な紅玉。紅玉と、市華を助けて」
「えっ?」
水晶の突然の頼みに、大和はさらに戸惑う。
「お願い」
水晶は真っ直ぐに大和を見つめ、すがるように言った。
「僕についてきて」
大和が慌てて声を上げるが、水晶は背を向け、部屋を出て行こうとする。
「え、ちょっ、ついてきてって……ちょ、ちょ、ちょ、ちょ、ちょっ!」
大和はその後を追って、慌てて部屋を飛び出していった。
一方、夜の森の奥。滝の音が響く苔むした橋の上に、雛と七海が二人きりで並んで立っていた。
しばらくの沈黙の後、七海が雛の方を向いて口を開いた。
「雛」
「ん?」
雛が振り返る。
「私……やっぱり今でも、大和のことが好きだよ。それは……譲れない」
七海は、少しの迷いも見せずに真っ直ぐに雛の目を見て告げた。
雛は、七海の言葉を静かに受け止めた。
「うん。わかってる」
再び、二人の間に少しだけ静寂が落ちる。雛はもう一度七海に向き直り、強い覚悟を込めた声で言った。
「七海……何が起きても、大和を守って」
その言葉に、七海も力強く頷き、少しだけ微笑んだ。
「うん。もちろんだよ」
滝の音が静かに響く中、二人の決意は夜の森に溶け込んでいった。
第十九章「水晶の願いと雛の覚悟」、いかがでしたでしょうか。
水晶の「紅玉と市華を助けて」という純粋な願いに、相変わらず戸惑いながらも巻き込まれていく大和。一方、ついに大和への想いを雛に真っ直ぐぶつけた七海と、それを受け入れた上で「何が起きても大和を守って」と託す雛のやり取りには、恋のライバルを超えた二人の強い絆が感じられました。
しかし同時に、その雛の言葉からは、彼女がたった一人で過酷な運命(葛城との決戦)に立ち向かおうとしている悲壮な覚悟も透けて見えます。
水晶に導かれて部屋を飛び出した大和はどこへ向かうのか。そして、雛の決意の先にあるものとは……?
いよいよ物語はクライマックスへ向けて一気に加速していきます。次章の怒涛の展開もどうぞお楽しみに!




