第十八章 見えない手伝いと明かされる真実
映画ノベライズ『もしも、僕の彼女が妖怪ハンターだったら。。。(おかわり)』第十八章「見えない手伝いと明かされる真実」をお届けします。
今回は、ほっこりとする日常コメディと、物語の根幹に関わる重要な真実が交差するエピソードです。
前半は、翔太の料理を背後から完璧にサポートする妖怪「小袖の手」との見事な連携プレイにクスッとさせられます。しかし後半は一転、静かな夜の森で雛の口から語られる「母親」についての衝撃の事実と、大和の不器用ながらも真っ直ぐな告白という、胸に迫るシーンへ。
日常の笑いから一気にシリアスへと引き込まれる、本作ならではの温度差をお楽しみください。
夕暮れ時の台所。白い割烹着姿の翔太が、ボウルに入ったサラダを箸で器用に盛り付けていた。
「よし」
翔太がサラダの盛り付けを終えると、背後の食器棚から、何やら白とピンクの小袖がふわりと現れた。妖怪『小袖の手』だ。小袖の手は、翔太が気づかないうちに、音もなくスープカップや取り皿を台の上に次々と並べていく。
翔太は何も知らないまま、並べられた器に料理を盛り付けていく。
「あれ? 俺、皿出してないのに、誰が出してくれたんだろう?」
翔太は不思議そうに首を傾げたが、深く気にする様子もなく、
「まあいっか」
と盛り付けを続けた。小袖の手は、翔太の背後でテキパキと料理を運び、見事な連携プレーで四人分の食事が完成していく。
次に、翔太はフライパンでオムレツを焼き始めた。焼き上がったオムレツを皿に移そうと手を伸ばすが、皿は少し離れた場所にある。
「ん?」
翔太が皿に手を伸ばそうとしたその瞬間、再び小袖の手がすっと現れ、翔太の手に直接皿を手渡した。
「……ん?」
翔太は一瞬戸惑ったが、すぐにフライパンのオムレツを鮮やかにひっくり返し、手渡された皿へと見事に着地させた。
「お、俺って完璧!」
自分で自分の見事なフライパン捌きに見惚れ、満足げに笑みを浮かべる翔太。
その背後で、小袖の手が「グッジョブ」とばかりに親指を立てるサムズアップのポーズを見せていた。翔太は皿に盛られた完璧なオムレツを見つめながら、ふと呟いた。
「それにしても、大和たち、どこ行っちゃったんだろう?」
深い青色に包まれた夜の森。滝の音が響く苔むした橋の上に、雛が一人で佇んでいた。
少し遅れて、大和が橋の向こうから歩いてくる。
「雛ちゃん」
大和が隣に並ぶと、雛は滝の方を見つめたまま、ポツリと口を開いた。
「母さんが生きてるかもしれない」
「えっ!」
大和は驚いて雛を見る。
「だって、雛ちゃんのお母さんは死んだって……」
「死んだって聞いた」
「じゃあ……」
「うん」
雛は懐から、あの白い鱗を取り出した。
「これは、私が持ってる白蛇の鱗」
「じゃあ……あれは?」
大和がさっきの葛城の言葉を思い出す。
「葛城が持っていた白蛇の鱗は、母のものなの」
大和は少し考え込み、慎重に言葉を選んで言った。
「そうなんだ……でも、あの男が白蛇の鱗を持ってたからといって……雛ちゃんのお母さんが生きてるっていう証拠にはならないんじゃないかな」
雛は鱗を見つめながら、静かに首を振る。
「この鱗は、白蛇とともに先祖代々受け継がれてきたものだから、私と母しか持っていない。白蛇を操る者しか、持つことを許されない」
雛は顔を上げ、大和を真っ直ぐに見つめた。
「母さんが死んだら、母さんの鱗は消えてしまう。だから……母さんは生きてる」
「……」
大和は、雛の真剣な瞳に言葉を失った。しかし、それでも心配が勝り、諭すように言う。
「そう思いたい雛ちゃんの気持ちもわかるけどさ。雛ちゃんのお母さんが生きてたとしても、あの男に捕まってるってことにはならないんじゃないかな。それこそ、白蛇の首を手に入れるための罠かもしれないし」
雛は再び視線を落とし、沈黙した。
大和は、そんな雛の肩を励ますように優しく叩いた。
「僕は頼りなくて、いつも雛ちゃんに頼ってばっかりで……捕まったり、ヘマしてばっかりだけど……」
大和は一呼吸置き、真剣な顔で告げた。
「それでもこれだけは言える。僕が雛ちゃんを好きで、一番大事だってことは」
その言葉に、雛の表情が少しだけ和らいだ。彼女は小さく頷き、大和の方を向いた。
「うん」
橋の上で向き合う二人。
その様子を、少し離れた森の木陰から、七海が静かに見つめていた。
第十八章「見えない手伝いと明かされる真実」、いかがでしたでしょうか。
「小袖の手」の完璧なアシストを自分の実力だと勘違いしてドヤ顔を決める翔太と、背後でひっそりサムズアップを送る妖怪のやり取りは、映像版でも非常にコミカルで可愛らしく描かれている癒やしシーンです。
一方で、滝の音が響く夜の橋の上では、葛城が持っていた「白い鱗」の秘密が明かされました。白蛇を操る者しか持てない鱗が消えていないということは、死んだはずの母親は生きている……。葛城の真の狙いや罠の可能性が見え隠れする中、いつもは情けない大和が、雛へ真っ直ぐに一番の思いを伝える姿にはグッとくるものがありました。
しかし、そんな二人の様子を木陰から静かに見つめる七海の姿も気になります。それぞれの想いと謎が深く絡み合い、いよいよ物語はクライマックスへ。次章の展開もどうぞお楽しみに!




