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第十五章 森のバーベキューと高級和牛

映画ノベライズ『もしも、僕の彼女が妖怪ハンターだったら。。。(おかわり)』第十五章「森のバーベキューと高級和牛」をお届けします。

今回は大和や雛たちの視点から少し離れ、前作『もしも、僕の彼女が妖怪ハンターだったら。。。』で狐妖怪の事件に巻き込まれた伊坂夏生(いさか なつき)一家が再登場します!

緑豊かなキャンプ場を舞台に、夏生が奮発したA5ランクの高級和牛を巡って、第七章でも名前が挙がっていたうさん臭い妖怪ハンター・伊神(いがみ)が取り立てに乱入。妖怪の恐怖よりも恐ろしい(?)奈美の剣幕と、大人たちの情けないドタバタ劇をお楽しみください。

緑豊かな木々が立ち並ぶキャンプ場の駐車場に、一台の車が滑り込んできた。運転席には伊坂夏生、助手席には奈美、そして後部座席には娘のさくらが乗っている。

「よーし。ここだここだ。はい、到着」

夏生は満足げに車を停め、窓の外の緑を見つめながら助手席の奈美に声をかけた。

「ほーら奈美。いいところだろー?」

しかし奈美は、うんざりしたような顔で眉をひそめた。

「ちょっとあなた、どこがいいところなの? またキャンプ! 私もう嫌よ。虫は多いし、ろくなことがないんだから」

「そんなことないと思うけどなぁ」

「さくらちゃん知ってたの?」

夏生が苦笑いしていると、後部座席のさくらも同調する。

「知ってた」

「ねー」

夏生とさくらが顔を見合わせて頷き合っていると、夏生のポケットの中で携帯電話がけたたましく鳴り始めた。夏生は一瞬表情を強張らせ、電話を無視して車のドアを開けた。

「よいしょっと。はい」

車を降りた夏生は、携帯の着信音を気にする様子もなく、車の後ろへと向かう。しかし、助手席から降りた奈美が、しつこく鳴り続ける電話に苛立ちの声を上げた。

「ちょっと、うるさいわねその電話」

「いい? いいんだよあれは」

「あなた、電話鳴ってるわよ」

「あー、例のうるさい取り立て屋だよ」

夏生は顔をしかめながら答える。

「一日百回ぐらいかかってくるんだ」

「全くしつこいわね」

奈美は夏生から携帯を奪い取ると、勢いよく電話に出た。

「ちょっとあなた、しつこいわよ! いい加減にして!」

奈美は一方的に怒鳴りつけ、電話を叩き切った。その後ろで、夏生は車のトランクを開け、荷物を下ろす準備を始めている。

「前は川で魚捕りしたけどね、今回は森でバーベキューだ!」

「ママ、今度はお魚じゃなくてお肉だから」

さくらが宥めるように言うが、奈美は腕を組んで不満げに鼻を鳴らす。

「でも私は、リゾート地の高級ホテルで過ごしたいの」

「高級食材も買った!」

夏生が自信満々に言うと、さくらが笑顔で頷いた。

「そうそう! 日本橋のデパ地下で高級和牛買ってきたから!」

「まあ! それなら、早く焼いて食べましょう」

奈美は現金なもので、コロリと態度を変え、満面の笑みを浮かべた。

「あなた、早く準備して!」

「お、おう」

夏生はトランクから荷物を下ろし、芝生の広がるバーベキュー会場へと歩き出す。

「さくらちゃん、お手伝いありがとう。あとはパパに任せて、一緒に座りましょう?」

「よいしょっと。えーっと、これ、これだな」

夏生が手際よくテーブルやバーベキューコンロを組み立て、車に戻ると、クーラーバッグを開ける。その中には、『黒毛和牛 最高格付 A5』と書かれた立派な木箱が入っていた。

「ふふふ……」

夏生がニンマリと笑みを浮かべたその時、背後から不意に声がした。

「ほう。松阪牛のA5ランク。いくらだった?」

「八万九千八百円……」

答えてからハッとして振り返ると、そこには黒いレザージャケットを着た伊神が立っていた。夏生はギョッとして後ずさる。

「え?」

「随分と奮発したな。えー、まあ、三百万払ってもらおうか。銀行振り込み? 現金?」

伊神は薄笑いを浮かべ、夏生に迫った。夏生も負けじと言い返す。

「あなたもしつこいですね。あの時、狐の妖怪を追い出したのはあの青年と彼女だったじゃないですか」

そこへさくらもやってきて、加勢に入る。

「実際、おじさんが狐の妖怪を追い払ったわけじゃないし。本当は、追いかけていったお兄ちゃんとお姉ちゃんが退治したんじゃないですか?」

伊神は一瞬顔をしかめたが、すぐに居直ったように答えた。

「その前に……契約は成立してたんだよ。お嬢ちゃん」

さくらが言葉に詰まると、伊神はさらに夏生へにじり寄った。

「とりあえず、利子として、この肉はもらっていくからな」

伊神が夏生の手から強引に肉の入ったクーラーバッグを奪い取ろうとしたその時、少し離れた場所にいた奈美が怒り心頭で駆け寄ってきた。

「ちょっとあなた! 私の可愛いさくらちゃんに何するの!」

奈美は伊神を指差し、猛烈な勢いでまくし立て始めた。

「何か変なことしたんじゃないでしょうね! あなた、それどうするつもり? それうちの物なんですけど! 勝手に持っていかないでちょうだい! あなたでしょ? 妖怪ハンターとか名乗ってる変な男って!」

「そうだそうだ」

夏生も後ろから頷く。

「一日に何度も夏生さんに嫌がらせのように電話してくるの、やめてくださらない? それに……妖怪ハンターだったら、どうしてさっさとあの時、私を助けなかったのよ!」

伊神がたじろぐ中、奈美の追及は止まらない。

「あなた、本当は妖怪ハンターじゃなくて……インチキなお札を売りつける詐欺師なんでしょ? ねえ、あんまりしつこいと警察呼ぶわよ!」

「ああ、それいい」

と夏生。奈美はさくらに手を差し出した。

「さくらちゃん、電話ちょうだい!」

「はい」

「はい、百十番」

奈美が携帯電話を操作するのを見て、伊神は顔色を変えた。

「おいおいおい、ちょ、ちょ、待て待て!」

伊神は慌てて奈美を止めようとするが、もはや形勢不利と悟ったのか、手に持っていた肉の入ったクーラーバッグを抱え、身を翻して走り出した。

「あ! ちょっ!」

夏生が声を上げる。奈美がさらに怒鳴った。

「あ、それ! お肉泥棒よ! ちょっと、早く追いかけて捕まえて!」

「ええっ! いや、待て!」

夏生は仕方なく、逃げる伊神の背中を慌てて追いかけていくのだった。

逃げながら伊神が叫ぶ。

「今夜はすき焼きだ!」

第十五章「森のバーベキューと高級和牛」、いかがでしたでしょうか。

前作で大和と雛に助けられた夏生一家ですが、伊神もちゃっかりとちゃっかり「契約成立」を盾に取り立てを続けていたようです。しかし、高級ホテルに行きたかった不満とA5ランクの和牛への執念が合わさった奈美の怒涛のまくし立ての前には、悪徳ハンターの伊神もタジタジ。最終的に「今夜はすき焼きだ!」と肉泥棒に成り下がる伊神の逃走劇が、見事なコメディシーンを生み出していました。

本作の映像版では、各キャラクターのコミカルな表情や絶妙な掛け合いが、より一層の笑いを誘います。前作での狐妖怪退治の顛末を知っているとさらに楽しめるエピソードとなっておりますので、ぜひ以下の配信サイトで前作『もしも、僕の彼女が妖怪ハンターだったら。。。』と併せてご覧ください!

『もしも、僕の彼女が妖怪ハンターだったら。。。』(仮)

BOXX: https://vodbox.stores.play.jp/programs/9679e871-e973-4716-8157-47da2e97d789

U-NEXT: https://video.unext.jp/?td=SID0197671

Amazonプライムビデオ: https://www.amazon.co.jp/gp/video/detail/B0GN3Y6DZL/ref=atv_dp_amz_c_TS5124c5_1_6?jic=16%7CCgNhbGwSA2FsbA%3D%3D

『もしも、僕の彼女が妖怪ハンターだったら。。。(おかわり)』

Amazonプライムビデオ: https://www.amazon.co.jp/gp/video/detail/B0GCHC7259/ref=atv_dp_amz_c_TS5124c5_1_6?jic=16%7CCgNhbGwSA2FsbA%3D%3D

U-NEXT: https://video.unext.jp/title/SID0282708

肉を追って走り去った夏生と伊神。一方、気絶させられた大和たちはどうなっているのか……? 次章の展開もどうぞお楽しみに!

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