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第十四章 誤解と飛んでくる手毬

映画ノベライズ『もしも、僕の彼女が妖怪ハンターだったら。。。(おかわり)』第十四章「誤解と飛んでくる手毬」をお届けします。

前章の「一反木綿騒動」でとんでもない光景を目撃してしまった市華を、車で送り届ける大和。気まずい沈黙が破られた途端、二人の会話は見事なまでのすれ違いを見せます。

市華の盛大な勘違いと、それに勝手に焦って自意識過剰な振る舞いを見せる大和。緊迫感とコメディが入り混じる中、唐突に訪れる理不尽な「物理攻撃」の完璧なタイミングをお楽しみください。

木漏れ日が差し込む並木道を、大和の運転するシルバーのミニバンが走っていく。

車内には重い沈黙が漂っていた。大和は運転席で「あー……」と気まずそうに息を吐き、助手席の市華は前を向いたまま静かに口を開いた。

「稲田さん」

「はい」

大和が緊張した声で返事をする。

「稲田さんって、そっちの方だったんですね」

「そっちの……え? うわっ!」

大和は驚愕のあまり急ブレーキを踏んだ。キキッというタイヤの摩擦音が響き、車が急停止する。大和は慌てふためきながら、助手席の市華に向かって身を乗り出した。

「いやいやいやいや、あれは誤解だよ。あれはあの、翔太とはあの、事故みたいなもんで……」

朝の一反木綿による男同士の密着ハプニングを必死に弁解する大和に対し、市華は冷ややかな声で返した。

「あ、そうですか。てっきり……」

「てっきりも何もないよ。翔太と雛ちゃんなんか比べられないのよ。翔太と雛ちゃんだったらもう雛ちゃんの方が好きに決まってるし」

大和が必死に雛への想いを主張すると、市華の表情がスッと硬くなった。

「雛さんのことは、諦めてください」

「市華ちゃん……」

大和が言葉を失う中、市華はシートベルトを外し、バッグを持って無言で車のドアを開け、外へと出ていってしまった。大和も慌てて運転席のドアを開け、後を追う。

「市華ちゃん、ちょっと、ちょっと、ちょっ……市華ちゃん!」

大和は車の前を歩き去ろうとする市華を呼び止め、木陰で彼女と対峙した。市華は振り返り、真っ直ぐに大和を見つめる。大和は意を決したように、少し早口で告げた。

「ごめん! ごめん。あの、僕やっぱり雛ちゃんのことが好きだから。市華ちゃんの気持ちには応えられな……」

大和が最後まで言い切るより前に、突如横から飛んできた古風な手毬が、大和の顔面にクリーンヒットした。

「ああっ!」

短い悲鳴を上げ、大和はそのまま白目を剥いて地面に崩れ落ちた。市華は、足元で気絶している大和を無表情のまま冷ややかに見下ろした。

そこに、一台の車が通り過ぎていく。運転席には笑顔の伊坂夏生の姿があった。開いた窓から、

「そろそろじゃないのー?」

という楽しげな声が聞こえ、車はそのまま走り去っていく。

木漏れ日の下、仰向けに倒れたまま気を失っている大和の情けない顔。どこからともなく、アホ、アホ、と鳴くようなカラスの声だけが虚しく響いていた。

第十四章「誤解と飛んでくる手毬」、いかがでしたでしょうか。

自分が好意を寄せられていると完全に勘違いし、いっちょ前に市華を振ろうとした大和の顔面に手毬がクリーンヒットする怒涛の展開。カラスの「アホ」という鳴き声(?)とともに白目を剥いて気絶する大和の情けなさは、本作屈指の爆笑シーンです。

この手毬は、これまでの章で水晶が持っていたものと同じようですが……なぜ大和の顔面に飛んできたのでしょうか。

一方で、コメディの裏に隠された市華の「雛さんのことは、諦めてください」という鋭い言葉が気になります。単なる恋のライバル宣言とは思えないその口ぶりには、深い事情が隠されていそうです。

さらに、絶妙なタイミングで通り過ぎていった伊坂夏生(いさか なつき)の姿も! 謎が謎を呼び、登場人物たちの思惑が交差し始めます。次章の展開もどうぞお楽しみに!

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