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神様にもらった回復チートで荒稼ぎしてたら、普通に脱税で捕まりました  作者: ももの樹


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知ってる人

連絡が来た経路が、少し、珍しかった。

「早川さんからの紹介です」と書いてあった。

「早川って」

「25話——いや、前に来た記者の方です」と、七海。

「あいつ、紹介とかするんだな」

「信頼してくれてるんでしょう。ありがたいです」

来たのは、二十三歳の青年だった。

小柄で、目が細くて、なんとなく夜に生きてる感じがした。

城田蓮しろた れんです。プロゲーマーをやっています」

「プロゲーマー」

「……知らないですか」

「ゲームは、昔、スーファミをちょっとだけ」

城田が、少し、苦笑した。

「まあ、そういう方の方が、先入観なくていいかもしれないです」

 

そこへ、地下から澪が上がってきた。

城田を見て——止まった。

「城田蓮?」

「……あ、はい」

「シロレン?」

「……配信のアカウントです、はい」

澪の目が、少し、光った。

いつも面白いものにだけ灯る、あの光だ。

「……本物?」

「本物です」

「……すごい」

澪が、そのまま固まった。

俺は、七海を見た。七海が、首を傾けた。

「澪さん、ゲームを見るんですか」

「見てた。配信。睡眠時間がないから、流しながら作業してて」

「流し見で、顔を覚えていたんですか」

「動きが変だから。ゲームの動きが。面白くて」

「動きが変」と、城田が言った。「それ、褒めてますよね」

「褒めてる。いい意味で変」

城田が、ちょっとだけ、嬉しそうな顔をした。

 

俺は、鑑定をかけた。

 

城田蓮しろた れん/23歳・男】

体の状態:両手首の腱鞘炎が重症。腕全体に炎症が広がっている。医師には「完全休養しかない」と言われた

本当の状況:今月末に、チームの大会がある。それに出たい

いちばん恐れていること:自分が出られないことで、チームメンバーに迷惑をかけること

 

「両手首ですね」

「……はい。三ヶ月前から、だんだん悪くなって。先月から、まともに動かせなくて」

「大会が、今月末?」

城田が、驚いた顔をした。「……よく、わかりますね」

「見えます。チームのために出たいという感じも」

城田が、少し、黙った。

「……正直に言うと、自分のためでもあります。この大会で負けたら、もう一年、その借りを引きずる。チームのためだけじゃないです」

「そっちの方が本音っぽいですね」

「……そうです」

「その方が、いいと思います」

「え?」

「チームのためだけだと怪我してでも出ようとするでしょ。自分のためでもある、の方が、無理をするラインが下がる気がします」

城田が、しばらく俺を見ていた。

「……先生って、ゲーム知らないのにそういうことは、わかるんですね」

「ゲームじゃなくて、人の話だから」

 

両手首の施術は、時間がかかった。

炎症が、思ったより奥まで入り込んでいた。

光が、ゆっくり広がって、引いた。

「動かしてみてください」

城田が、両手を、ゆっくり開いた。

閉じた。

回した。

「……痛くない」

もう一度。

「全然、痛くない。嘘みたいだ」

「本当に治ってますよ」

「……大会、出れる」

城田の声が、少し、高くなった。

二十三歳の声だ、と思った。

「ただ」と、俺は言った。「治ったからって、無茶はしないでください。また同じことになります」

「わかってます」

「わかってても、やる人が多いんで、一応」

「……気をつけます。本当に」

 

帰り際。

澪が、珍しく、玄関まで来ていた。

「あの」と、城田。「ゲーム、見てたって言ってましたよね」

「うん」

「どのへんが変でしたか。動きの」

澪が、少し考えた。

「初動が、他の人より0.2秒くらい早い。でも、それを消してる。わざと遅くしてる感じがした」

城田が、固まった。

「……なんで、わかるんですか、それ」

「フレームで見てた」

「フレームで見てた」

「うん。フレーム解析してた、暇だったから」

城田が、澪を、しばらく見ていた。

「……あなた、何者ですか」

「天才ハッカー」

「……本当に?」

俺が言った。「本当です」

城田が、また、ちょっと笑った。

「いいチームですね、ここ」

「そうですか」

「うん。なんか、みんな変で、いい意味で」

澪が「そう」と言った。

それだけだったけど、なんか、嬉しそうだった。

 

「大会、応援してます」と、七海が言った。

「ありがとうございます。見てもらえると嬉しいですが、ゲームは」

「勉強します」

「本当ですか」

「今日から」

城田が、出ていった。

七海が、帳簿に書き込みながら言った。

「今日のお代、ちゃんともらいましたか」

「もらった」

「いくらで言いましたか」

「三十万円で」

「両手でしたが、それでよかったですか」

「若い子だったし。紹介料的な意味で、それくらいで」

七海が、帳簿に書き込んだ。

「……早川さん経由の紹介は、固定読者みたいなものですから。安くしてよかったと思います」

俺は、七海を見た。

「本当に勉強するのか」

「……する気はあります」

「気は、か」

「追々で」

「今、俺の口癖を使ったか」

七海が、すっと視線を逸らした。

「……記録します」

それだけ言って、帳簿を開いた。


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