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神様にもらった回復チートで荒稼ぎしてたら、普通に脱税で捕まりました  作者: ももの樹


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17/32

晴らす

澪が、尻尾を掴んだのは、翌朝だった。

「出た」

管制ルームのモニターの前で、澪がぽつりと言った。エナドリが、また三本、空になっていた。

「誰だ」

「政界の人間。……名前、出していい?」

「言え」

澪が、モニターに名前を映した。

二階堂孝之にかいどう たかゆき。現職の大物議員。沢渡と同じ党の、三つ上の先輩にあたる。

「この人が、改ざんの元データを作って、流した。証拠、全部ある」

七海が、静かに息を吸った。「……なぜ」

「沢渡さんの恩師が、三十年前に握ってた利権。それを今も持ち続けてるのが、二階堂。恩師が生きてたら、邪魔だった。だから汚名を着せた。今回は……沢渡さんまで巻き込んで、二人まとめて潰す気だった」

「えげつないな」

「政界って、そういうとこみたい」

澪は、言い切った。興味なさそうに。

俺は、スマホを取り出した。

「沢渡さん。今日、来れますか」

 

その午後。

沢渡は、基地の応接スペースに、現れた。

俺は、向かいに座って、まず、鑑定を飛ばした。二階堂のことを知っているかどうか確かめるために。

鑑定の結果は、シンプルだった。

沢渡は知らなかった。三十年間、ずっと知らなかった。

恩師が、なぜ汚名を着たのか。誰が仕組んだのか。

「沢渡さん。犯人、わかりました」

沢渡の顔が、固まった。

「……誰だ」

「二階堂孝之」

しん、と、なった。

「……証拠は」

「あります。改ざん前のデータ、改ざんの経路、流した先まで。ぜんぶ」

沢渡は、しばらく、テーブルを見つめていた。

それから、目を閉じた。

「……先生は。三十年、汚名を背負って、逝った」

「ええ」

「先生が逝く前に、一度だけ。“わしは、何もしていない”と、言っていた。わしは、信じていた。……それだけだった」

震える手を、膝の上で、握り合わせた。

「これで、晴らせるか」

「晴らせます」

俺が言い切ると、沢渡は、深く、頭を下げた。

声は、出なかった。

 

あとのことは、沢渡が動いた。

証拠を手に、党の上層部へ。マスコミへのルートは、沢渡自身が持っていた。二階堂の件は、そこから一気に動いた。

俺たちは、何もしなかった。

証拠を渡しただけだ。

 

数日後。

ニュースで二階堂の名前を見た。

引責辞職。与党内の調査が入るらしい。コメントは「一身上の都合」だった。

「一身上の都合」じゃ、ないけどな。

澪が、モニターをちらっと見て言った。「コメントが嘘だ」

「そうだな」

「鑑定しなくても、わかる」

「天才か」

「そう」

七海が、横で小さく、息をついた。「……すごい自己評価ですね」

「事実を言っただけ」

「そうですね」

珍しく、七海が、否定しなかった。

 

翌週。

沢渡から、報酬が届いた。

七海が金額を見て、一拍置いた。

「……名誉を、晴らす値段としては」

「いくら」

「五億、です」

ごおくか。今回は、俺もむせなかった。むせる回数が、多すぎて、慣れてきた気がする。それはそれで、どうかと思うけど。

「青柳さん」七海が、帳簿から目を上げた。「今年の確定申告、また何もしませんでしたよね」

「…………」

「来年の三月は」

「追々で」

「三月は毎年来ます」

「…………追々で」

七海が、帳簿を静かに閉じた。

何も言わなかった。

ただ、その目が、雄弁だった。

 

夜。

澪が、モニターの前で、ぽつりと言った。

「なあ、りおん」

「ん」

「次、何する」

「稼ぐ」

「それ以外」

俺は、少し考えた。

「……まあ、来た奴を、助ける。それだけだろ」

澪は、それを聞いて、小さくうなずいた。

「あたしも、それでいい」

 

金は、積み上がる。

爆弾も、一緒に、積み上がっている。

でも今は、まだ。

誰も、気づいていない。


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