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神様にもらった回復チートで荒稼ぎしてたら、普通に脱税で捕まりました  作者: ももの樹


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16/32

治せないお悩みです

御堂会長が、「毛色の違う世界の人間」と言っていた、その意味は。

数日後、すぐにわかった。

 

紹介されてきたのは——現職の、国会議員だった。

沢渡清成さわたり きよなり。当選、八回。党の重鎮、ってやつらしい。七海が名前を聞いて、ちょっと息を呑んでいた。

地上のボロ屋の応接で、その爺さんは、深々と、頭を下げた。

「鷹司さんからも、御堂さんからも、聞いておる。……どうか、わしを、若返らせてくれんか。次の選挙が、最後の勝負でな」

立派な頼みごとだ。

俺は、いつものを、やる。

鑑定。

 

沢渡清成さわたり きよなり/71歳・男】

体調:年相応。大病なし。むしろ同年代では、かなり健康

表向きの願い:若返って、選挙を勝ち抜きたい

本当の状況:古い汚職疑惑の「証拠」が出回り、失脚寸前

本当の願い:自分を政界に導いた、亡き恩師の名誉を、守りたい

 

……お。

これは、めずらしいパターンだ。

「沢渡さん。あんた、体、どこも悪くねえよ」

「……は?」

「ピンピンしてる。若返らせる必要、ない。あんたが欲しいのは——回復じゃ、ないだろ」

沢渡の、顔が、こわばった。

俺は、続けた。

「あんた今、古い疑惑で、追い込まれてる。決定的な“証拠”ってやつが、出回ってんだろ。それ、なんとかしてほしい。……違うか?」

しん、と、なった。

沢渡は、しばらく俺を、見つめて。

それから、観念したように肩を、落とした。

「……噂は、本物か。なんでも、見抜くと」

 

沢渡が、語ったのは、こうだ。

三十年前。汚職に手を染めた、とされる、一枚の記録。そこに当時の上司——沢渡の、恩師の名が、ある。

その恩師は、潔白を訴えながら、汚名を着たまま、亡くなった。

そして今。なぜか、その古い記録が、掘り起こされ。沢渡まで、同じ穴のムジナだと、叩かれている。

「わしは、構わん。落選も、引退も。……だが、あの記録のせいで、恩師が、二度、殺されるのだけは、耐えられん」

爺さんの、声が、震えていた。

俺は、ふう、と、息を吐いた。

なるほど。

これは——“治す”話じゃ、ない。

俺の、もう片方の力の、出番だ。

「その記録、現物。見れるか?」

「……写しなら、ある」

沢渡が、震える手で、古びた書類のコピーを、差し出した。

俺は、それに意識を、向けた。

念じる。人じゃなく紙とインクと、そこに刻まれた“データ”そのものへ。

 

【記録/鑑定】

種別:三十年前の、内部記録とされるもの

真贋:偽。少なくとも、一部が、後から改ざんされている

改ざん箇所:恩師の署名と、日付。元は、別人の名だった

作成の新しさ:紙は古いが、改ざんは、ごく最近

目的:恩師(と沢渡)に、罪を、なすりつけるため

 

「……これ、ニセモノだわ」

「な……っ」

「正確には、本物の記録を、いじってある。恩師の署名と、日付。そこだけ、最近、書き換えられてる。元は、別の名前だった」

沢渡が、口を、ぱくぱくさせた。

「で、でも……そんなもの、どうやって、証明……」

「うちに得意なやつが、いてな」

 

地下2階。

事情を聞いた澪は、その書類のスキャンを、淡々と、眺めて。

「……うん。りおんの言うとおり。署名のとこだけ、インクの“層”が、新しい。デジタルでバラせば、すぐ出る」

「お前、紙、見ただけでわかんのか」

「わかんない。でも、たどれる。これ、どこかで一回、スキャンされて、加工されて、刷り直されてる。元データの在りか、追える」

澪の、目が、すっと光った。

例の、面白いものにだけ灯る、あの光だ。

「……りおんが“ニセモノ”って当てて。あたしが“誰が作ったか”を、出す」

「役割、きれいに分かれてんな」

「うん。最近、これ、ばっかり」

七海が、横で、ため息を、ついた。

「……うちは、若返り屋では? いつのまにか、探偵業も、始めてませんか」

「人助けだよ、人助け。ついでに報酬もガッポリ」

「……その報酬の」

「わかってる。申告な」

「学習が、早くて、助かります」

ちょっとだけ、塩が、ゆるんだ。

 

その夜。

澪は、ひと晩、潜って。

“誰が、その記録を改ざんし、流したか”の、尻尾を、掴みかけていた。

たどった先に、いたのは——沢渡を、引きずり下ろして得をする、政界の、別の誰か。

そして、その糸は。

思っていたより、ずっと上のほうへ、伸びていた。

「……りおん」

モニターを睨んだまま、澪が、ぽつりと言った。

「これ。ちょっと、デカいかも」

俺は、にやっとした。

治せないお悩みも、ときには、引き受ける。

なんせ、こっちには——人も、モノも、データも、見抜く目が、あるんだ。

「面白いじゃねえか。やろうぜ」

 

恩師の、汚名を、晴らす。

たった、それだけのために政界の闇に、首を突っ込む。

……まあ、いつもの俺なら、面倒くさがるところだ。

でも、爺さんの、あの震えた声を、聞いちまった以上。

やらないって選択肢は——やっぱり、なかった。


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