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067.再会

 みんな、ごめん。


 ヤンは全力で走る。


 とうちゃん!


 生きてるんだ、とうちゃんが。


 ボクを待ってる。


 とうちゃん、今行くよ!


 だから……だから待っててよとうちゃん!




* * * * *




 第三十九階層の階層主(ボス)エリアはもぬけの殻だった。

 やはりこれまで同様にヤンが倒してしまったのだろう。

 そしてヤンの姿は当然の如く既にない。


 もう第四十階層の安全層(セーフレイヤー)に向かったのだ。


 キキは一呼吸ついた後にみんなの顔を眺め、軽く頷いた。

 少しヤンに時間をやろう、という意図は通じた。




 ここまで来るのは案の定大変だった。


 第三十七階層は同じく高所設定で尚且つ暴風エリアがあった。

 気圧と気温が更に下がり、一層過酷な環境になった。


 第三十八階層は傾斜が三十度ほどもあろうかという下り急斜面がひたすら続いていて、それに伴い気候条件もどんどん変化していくという難所。

 あまり急ぎすぎると急激な環境変化で体調に影響が出る上、単に斜面を下るだけでも足腰に多大な疲労が蓄積していくというダブルパンチ。

 おまけに斜面には魔物も多数現れ、何度も包囲されるおまけつき。

 比較的ショートな階層だったのが不幸中の幸いだった。


 そしてここ、第三十九階層は熱帯フィールド。

 気温が四十度を超える熱さで、しかも多湿。

 地面は砂利を多く含む粘土質で勾配差が大きい。

 何度もスコールに見舞われ、視界と足下が悪い中での戦闘。

 新しい魔物ロックゴーレムの出現など、一筋縄ではいかない階層だった。


 それらを全てクリアしてここまできた。

 ボスこそ全部ヤンにお任せだったが、道中の中ボスクラスは自力で処理した。

 終わって見ればそれなりに達成感のあるトレイルランニングだったのだ。



 ヤンはお父さんに会えたのだろうか――。


 ジュノ軍曹はここに来るまでの道中で凡その事情はジーグから聞いた。

 まさかヤンにそんな過去があったなんて全然知らなかった。

 五年もの間、ヤンはどんな気持ちで過ごしてきたのだろう。

 お父さんには無事に会えただろうか。


 そう言えば自分もまだ両親のことは話していなかったな、とジュノ軍曹は思い至る。


 やっぱり話しづらいよね。

 楽しい話じゃないし。


 ジュノ軍曹は寂しさと不安とを同じ量だけ抱えたまま、立ち尽くしていた。


「心配か」


 声の主はキキ。


「……はい、少しだけ」


「なに、ヤンのことだ。大丈夫だろう」


 ジーグが根拠のない自信で太鼓判を押す。


 二人ともジュノ軍曹と同じ気持ちなのだろうか、とジュノ軍曹はそっと表情を伺ってみるのだが、元よりポーカーフェイスな二人だったため、全く読み取れず。


 マリオという人とはまだほとんど会話をしていないが、ちょっと怖い印象。


 リンは呼吸を整えながらもいつものように背筋を伸ばして立っていた。


 この人もよくわからなかった。

 常に存在感を纏っているのに、移動中や戦闘中は気配を殺しているかのように静かで不気味ですらあった。


 一瞬、リンと目が合った。


 厳しさの中にも優しさがあるような、そして何かに耐えているような目をしていた。


 そのまま数秒間見つめ合った後にリンが自然に視線を外したところで、「それじゃ、そろそろ」とキキがみんなに声をかけた。




* * * * *




「とうちゃん!」


 第四十階層に出るなり、大声で叫んで走り出すヤン。


 視線の先に人影がひとつ、こちらを向いて立っていた。


「とうちゃんッ!!」


 もっと大きな声で叫びながら更に速度を上げるヤン。


「ヤン!」


 とうちゃんの声がした。


 どんどん近づく。

 顔がはっきり見えた。


「とうちゃん」


 視界が歪む。


 両手を広げたその胸にヤンは飛び込んだ――。



「とうちゃん……とうちゃん……」


「ヤン、よく来てくれた。会いたかったぞ」


 泣きじゃくるヤンの背中に腕を回し、頭を抱えてなでながら優しく話しかけるエル。


 その頬も濡れていた。


「ボクも……ボクも会いたかったよ、とうちゃん」


 ヤンの頬を大粒の涙が滝のように流れ、顔はくしゃくしゃ。


 実に五年ぶりとなる父子の再会であった。


「ずいぶん大きくなったな。見違えたぞ」


 エルの胸に喜びと安堵が溢れる。



 ヤンが近づいてくるのをドリルの共鳴で感じていたエルは、いよいよという時になって、自分で建てたログハウスから外に出て、ヤンの姿が目に入ってくるのを待ちわびていたのだった。


 ところが、最初に人影が見えた時には一瞬世界が揺らぐ感覚に襲われた。


 無理もない。

 エルが知っている記憶の中のヤンはまだ七歳のヤンのままだったのだ。


 そこへ160cm超えの男子が現れたのだから、すぐに結びつかないのも当然だった。


 それでもドリルはヤンがすぐ近くに来たことを明確に示している。

 その相貌がはっきりとしてくると同時に声が聞こえた。


 ああ、あれは……間違いない、ヤンだ。


 なんということだろう。

 あんなに大きくなって。

 あんなに立派になって。

 こんなところまで来られるほど強くなって。


 そしてとうとう目の前にヤンが……と思ったら全力のタックルがきた。


 一瞬呼吸が出来なくなり、後から痛みがやってきた。

 そのまま気を失って倒れてしまうかと思ったが、なんとか気力をふり絞って耐える。

 この瞬間のために今まで生き延びてきたのだ。

 ヤンを再び抱きしめるために。

 大事なことを伝えるために。


 だが今は、今だけはもう少しだけこのままでいさせてくれ。


 アリア、間に合ったよ――。




* * * * *




 ヤンはようやく本来の自分を取り戻すと、現実に引き戻された。


 やっぱりとうちゃんの様子がおかしい。


 五年前までは現役の案内人(ガイド)で戦闘オプションもこなせるくらい、身体はしっかりしていたはずなのに、今のとうちゃんの身体はようやく立っている感じで、まるで病人のように弱弱しく痩せていた。


 本当は最初に抱き着いた時、いや抱き着く前にそのシルエットで異常はわかっていた。

 抱きつく時にも相当加減をしたのに後ろに倒れそうになったので、ヤンは自分で踏ん張って逆にとうちゃんを支えなければならなかった。


 だが、そんなことよりもとうちゃんに会えた喜びの方が勝った。


 幻じゃない、幽霊でもない、本当の本物の生きているとうちゃんが今確かにここにいる。


 それが確認できただけで充分だった。

 今この時こそが、この五年間で一番幸せな瞬間に間違いなかった。


 でもその感激感動が落ち着いてよく見ると、考えると、決して安心してばかりはいられない現実が目の前に立ち塞がるのだった。


「とうちゃん、いったい何があったの」


 まずはそこから聞くべきだ、とヤンは思った。


 五年前のあの日、あの場所でとうちゃんに起きた真実を。


「うん。とうちゃんが知ってることは全部話そう。でもそれはみんなが来てからの方がいいかもしれないね」


 とうちゃんは仲間がこちらに向かっていることを知っているんだ。

 ちゃんと【気配察知】が使えているんだ、とヤンは安心した。


「そのまえにひとつ。お前ももう気付いているだろうが、とうちゃんはもうあまり長くない。だからここから先の時間の使い方はヤン、お前にも協力してほしい」


 やはりそうなのだ。

 再びヤンの瞳が涙で曇る。


 とうちゃんの体内(インナー)ドリルはもう最後のひとつだけになってしまっていた。

 それも、かつての豪快な回転ではなく、かろうじて回っているだけのものに。


「とうちゃん」


 ヤンは言うなりドリルの回転を上げる。


 ギュルルルルルルル……


 体内にエネルギーを満たしながら、七つのドリルの回転を一気に上げる。

 これまでは最大五つまでしか高速で同調させることができなかった。


 でも今ならできる気がする。


 いや、やらなきゃいけないんだ。


「ヤン、お前……」


 ギュルルルルルル……キュルルルルルル……


 回転音が一段高くなった。

 

 ドリルの回転音はイメージの産物だ。

 実際に外に音が聞こえているわけではない。

 だが、ドリルの回転自体もイメージで行うものなので、必然的に音も身体の中から聞こえてくるようになるのだった。


「とうちゃん、これで」


 ヤンはとうちゃんの両手をしっかりと握り、エネルギーを流し込む。


 ……シュルルルルル


 とうちゃんのドリルが少し息を吹き返したのを感じた。


「ここまでよく訓練したな、ヤン。えらいぞ」


 両手を握りしめられたまま、満面の笑みを浮かべるとうちゃんの顔。


 心なしか血色もよくなってきたように思えた。


「ありがとう、ヤン。これでもう少しは持ちそうだ」


「とうちゃん……」


 ヤンは再びとうちゃんの薄くなった胸を抱きしめる。


 ドリルのエネルギー自体は生命エネルギーではないので、直接的な延命効果はない。

 ただ、体内(インナー)ドリルの回転は身体機能を補助するため、間接的な効果は期待できるのだ。


 だから、ヤンが今やったようにエネルギーを相手に流し込んでも、相手のドリルがそれに応えて反応しなければ何の効果もない。


「すまない、ヤン。せっかく会えたのにまたお前に寂しい思いをさせてしまう。許してくれ」


「大丈夫だよとうちゃん。また今みたいにやればいいんだから」


 もちろんそんなことはない、というのはヤンも知っている。

 知っているが今はそうでも言わないと絶望感で立ち上がれなくなってしまいそうなのだった。


 今こうしてとうちゃんといられる時間を一秒も無駄にしない。


 悲愴なまでの決意でヤンは笑っていた。


「おっ、来たぞ。あれがお前の仲間か、ヤン」


 とうちゃんが指差した先を振り向くと、移動エリアに複数の人影が現れた。




* * * * *




「エルさん!」


 ヤンの肩を抱いたエルの姿が見えた瞬間、ジーグは大きな声で呼びかけると堪らず走りだした。

 その表情は笑っているようにも見えるし、泣いているようにも見えた。


「ジーグくん、来てくれたのか」


 エルはジーグと握手をしながら相好を崩す。

 ヤンもエルと並んで立って仲間の到着を迎える。

 その右手はしっかりとエルの腰に回されていた。


「エルさん、よくぞご無事で……良かった。本当に良かったな、ヤン」


 ヤンの肩に片手を置いた瞬間とうとう我慢できなくなってうるうるするジーグ。


「ここまでヤンを送り届けてくれてありがとう」


 エルが再びジーグの空いた手を取って礼を言う。


「いや、そんな。ヤンはひとりで上がってきたようなもんです。本当にこいつはたいしたヤツです」


 照れ笑いというより苦笑いのヤンと、誇らしげに笑うエルを交互に見ながら、ジーグは自分の役目を思い出していた。


「エルさん……」


 キキが到着してジーグの横に並んだ。


「まさかキキくんか。大きくなったなぁ、見違えたよ」


 エルがキキの肩に両手を置いたかと思うと、そのままぐっと引いてキキを抱きしめる。


 キキは自分も抱きしめ返したかったが、ヤンの手前それは少し気が引けてしまって黙って両手をだらりと下げたまま、頭だけエルの胸に押し付けた。


(エルさん……こんなに痩せてしまって……)


 チラとヤンの方に視線だけ向けると、ちょうど目が合ってしまった。

 すぐに視線を反らして目をつぶるキキ。


(当然ヤンもわかってるんだよな)


 爆発しかけた嬉しさの奥から切なさやるせなさが湧き上がってくる。


「キキくんもありがとう。ヤンと一緒に来てくれて」


 ようやくエルの胸から頭を離して、キキはその目をしっかりと見る。


「いえ、当然です。約束ですから」


 かつてエルと交わした約束。

 それを今も憶えています。

 ちゃんと守っています、というのを絶対に直接伝えたかったのだ。


 エルは嬉しそうに大きく頷くだけで、キキの頭を右手でわしゃわしゃとやる。


(ああ、懐かしいな。エルさんのこれ)


 子供時代に何度も何度もやってくれたスキンシップ。

 きちんと髪を整えても、これでぐしゃぐしゃになるのでいつしか最初からぐしゃぐしゃのまま無頓着で過ごすようになってしまったのだった。


「エルさん、御無沙汰です」


 柄にもなく遠慮がちなマリオの声がした。

 すぐ後ろに立っていたのに気付かなかったキキは、どうぞとばかりに場所を譲る。


 そこには頭を下げたまま微動だにしないマリオがいた。


「マリオくん。君もすっかり大人になったな」


 エルが言った途端、頭を上げたマリオは赤面してまたすぐ俯いてしまった。


「いえ、お恥ずかしい限りです」


 俯いたままいつにない小声で話すマリオ。


 もはやこの時点で周囲はみな心の中で騒然となっていた。

 こんなに殊勝なマリオは今まで見た事がない。

 いや、こんなのマリオじゃない、誰だよコイツ!ぐらいの衝撃。


「まさか君まで来てくれるなんて、嬉しいよ。ありがとう」


「いえ、オレはジーグ……先輩に頼まれただけで、その……また会えて嬉しいです!」


 突然大声になって顔を上げると、エルの目を見てその手を両手で包み、離さないマリオ。


「みんなには心配かけたね。すまなかった」


 みんなの顔を見てから改めて頭を下げるエル。


「そんな! なに言ってるんですか。頭をあげてくださいエルさん」


 慌ててジーグが促す。


「とうちゃん」


 ヤンがエルの視線をやや離れた位置に誘導する。


 そこにはリンとジュノ軍曹が立っていて、エルの視線を受けて深く一礼をした。


「リンくんも、わざわざありがとう」


「いえ、任務ですから」


 改めて挨拶の礼をするリン。


 エルとは仕事上何度か顔を合わせる機会があったし、なにより父ソウジロウが存命だった頃にはよく道場にきて稽古をしていたので意外と古くからの顔見知りなのだった。


「で、そちらは?」


 エルは思い出そうとしたがどうしても思い出せないので、申し訳ないと思いながらも直接聞くしかなかった。


「あ、ペクちゃんはぼくの友だちなんだ」


 相手が答える前にヤンが紹介する形になってしまった。

 心なしか、ヤンが落ち着かないようにも思えた。


「はじめてお目にかかります。ペク・ジュノと申します。よろしくお願いします」


 そう言って彼女は軽く礼をした。

 美しく洗練された姿勢と動きに、既に只者ではない雰囲気を感じ取るエル。


 ドリルとは少し違うが、体内エネルギーがしっかり制御されている。


「ヤンの父親のエルです。いつもヤンがお世話になっています」


 エルも頭を下げて礼を言う。

 ここまではまぁ形式的な挨拶と言えよう。


「ヤン、このお嬢さんはいったい……」


「とうちゃんもわかるでしょ。ペクちゃん、すごいんだよ」


 息子が手放しで女の子を褒めるのを聞くのはなんともこそばゆいな、とエルは思いながらも、なるほどと合点がいったのだった。


 褒められた本人はいたく恐縮している様子。


「お前が教えたのか?」


「ううん。最初っからだよ。円空拳っていうんだってさ」


 さっとエルの顔色が変わった。


「まさか、アルトミックの生まれなのか!?」


 思わずやや強い口調になってしまったエル。


「あ、いえ。両親がそうなんですけれど、私はベリオール生まれです」


「ペクちゃんは帝国軍の回復士なんだよ」


「え……」


 情報量が多すぎてやや混乱してしまったエル。


「その辺の話はあとでゆっくりするから。ね、ペクちゃん」


「あ、はい」


 とにかく二人がとても仲が良さそうだというのだけはわかったので、今はとりあえずそれでよしと納得するエル。


「みんな、ここで立ち話もなんだから中に入って話そう」


 そう言ってエルは自らログハウスのドアを開けてみんなを中へ迎え入れた。




* * * * *




「急ごしらえの粗末な狭い家で申し訳ない」


 エルが本当に申し訳なさそうに頭の後ろに手をやりながら、部屋の隅に立っていた。


 ログハウスの中は簡単なLDK風の作りになっていた。

 外から見た印象より中は広く感じた。

 奥におそらくは寝室に通じる扉がひとつあった。


 丸テーブルひとつに椅子は四脚。


 だが、壁際に簡易ベッド兼用になりそうな長椅子が備え付けてあるので、結構な人数が座れるようになっていた。


「好きに座ってくれ」


 エルが言うより早く、みんな適当に座り始めていた。


「ん? ジーグくんは……」


 言いかけたエルが、何やら難しい顔になった後で安心したような表情に変わる。


「とうちゃん」


 ヤンがエルの方を見ると、エルが頷く。


 ジュノ軍曹とキキも外を気にするようなそぶりを見せていた。


「なんだよ、どうしたんだ?」


 妙な雰囲気に気が付いたマリオがキョロキョロし出したその時、扉を叩く音がした。


 コンコン。


「エルさん、入ります」


「どうぞ」


 ジーグの声にエルが答え、ジーグが扉を開けて中に入ってきた。


 そしてその後ろからもう一人――。


「か、閣下!」


 リンがすっと立ち上がって敬礼のポーズを取る。

 入ってきたのはオスカーだった。


「なっ、なんであんたが……どっから来たんだよ」


 マリオも驚愕して立ち上がる。

 ギルドマスターをあんた呼ばわりとは随分いい度胸だな。


 他のみんなも立ち上がり、ジーグとオスカーを迎え入れる。


 オスカーは真っ直ぐエルの所まで歩いて行くと、そのままガシッと抱きしめた。


「オスカー、どうしてここに」


 再会の感激よりも戸惑いの方が大きい様子のエル。


「その秘密は後で。とにかくよかったエルさん。ヤン君のお手柄だ」


 抱きしめた腕を解いてエルの手を両手でしっかり握りしめると、ヤンの方を見て微笑むオスカー。


 ヤンもなぜオスカーがここにいるのか理解できないまま、ちょこんと頭を下げる。


 まだざわざわしている中、オスカーが促して全員を座らせる。


「君たちも色々思うところはあるだろうが、今はそれよりもエルさんの無事が確認できたことを喜ぼうじゃないか」


 ジーグが拍手をするとみんなも倣う。


 エルとヤンだけが照れたようにしている。


「エルさんとヤン君のおかげで、我々はこの第四十階層を手に入れた。これは我らがバルベルにとって新しい時代の幕開けを意味する。本当に喜ばしいことだ。改めて二人に礼を言いたい。ありがとうエルさん、ヤン君」


 ジーグが拍手すると以下略。


 エルとヤンはジーグに立たされてやはり照れたように笑っている。


「そして君たちの協力に心から感謝すると同時に、その勇気と努力に敬意を表する」


 オスカーが深々と頭を下げたので、みんなも恐縮して立ち上がり礼をする。


「というわけで堅苦しい話はここまでだ。みんなエルさんの話が聞きたいだろうからな。もちろん私もだ」


 笑いが起きて、和やかな空気になる。


 ようやくオスカーもエルの隣に座り、いよいよメインイベントの時間。


 エルが口元に笑みを称えながらも、真剣な目で語り始めた。


 「それじゃあまず、あの日実際に起きた事について話そう。」


 いよいよ五年前の真実が明かされる時がきた――。

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