4 中谷さんが繋ぐ
「たった数ページの間だけだったけど、居なくなってすんませんした!」
「……メタ発言過ぎるよ、嵐君」
珍しく私が嵐君にツッコミを入れる。でも、本当にこれからどうなっちゃうんだろう。落ち着いて、私の脳内で病理外健忘の知識と嵐君の病状を照らし合わせていく。嵐君はどのタイプ……?私はしばらく考え込んでいた。
そして、答えが出た。
「嵐君!!」
「な、ななな、なに……」
「嵐君、もう全健忘を起こさないよ!!」
私の言葉に嵐君が、後藤さんが、徹君が固まる。ちゃんと考えてみたら、嵐君の病状は私の母とそっくりなのだ。日常の記憶の喪失、全健忘の繰り返し。そう、今更だけど私は一番近しい身内に病理外健忘の人間を持っていた。だから、付き合いが短かろうと嵐君のことが少しだけ分かったし、今こうして、嵐君のこれからを断言出来た。
私の母も全健忘の繰り返しの末、記憶をまるっと取り戻してから全健忘を起こさなくなり精神科で、これからは日常の健忘だけで済むだろう、と言われた。その母は、私のK型性精神疾患様症状の影響で精神を病み……自殺したが。
……いい、母のことはいい。嵐君には関係ない。とにかく、嵐君はもう、私を忘れない。
「何だか知らないけど、中谷さんがそう言うならそうなんだろうな」
「良かったじゃないか、嵐君。僕も、ゲイだというカミングアウトを繰り返さなくて良くなった」
「俺も具合悪いんだと勘違いされて違うって言わなくて済むようになったわけか」
223の男三人は素直過ぎる。医者でもない私の断言を真に受けてくれる。でも、本当なんだよ。私、母の為にほとんど出回っていない病理外健忘の医学書を子供の頃から読んでいたから、間違っていないはずだ。




