2 薬を窓から投げ捨てる女
……どうしたものか。今見てしまったものを正直に看護師さんたちに伝えるか、否か。伝えたら、中谷さんの立場はめちゃくちゃ悪くなる。それこそ本当に隔離、拘束かもしれない。後藤さんとも徹君とも顔を見合わせる。とんでもないことをしでかした中谷さんの顔を見ると、何だか悲しげだった。
あぁもう、世話の焼ける新米患者だ。
「宮田さん、中谷さんは投げ捨てる振りをして薬、飲んだそうですよ」
「え、ほんと!?」
「ちょっと悪ふざけが過ぎてるんで、きっちり叱っといてくださいッス」
「もー!中谷さんっ!!」
一瞬、中谷さんと目が合った。まん丸く開かれた目。俺は柄にもなくウインクをして223へと戻る。後藤さんも徹君も俺に続く。後藤さんに背中をつつかれた。からかいたいのは分かってますよ。
まぁ、これで中谷さんが隔離、拘束になることはないだろうからいいや。
「嵐君、どういう心境の変化?」
「別に、俺の心境は何も変わってないですよ」
「でも、嵐、中谷さんの為に嘘ついたじゃんか」
自分でもよく分かっていない。なぜ、宮田さんにあんな嘘をついたのか。中谷さんの為になるわけでもない嘘だ。本当に中谷さんのことを思うなら、見たものを見たまま伝えれば良かったはずだ。あの嘘には俺が得をする要素も無い。
ただ、何でだろう。あの悲しげな顔を見たら、真実なんてどうでも良くなってしまって。




