7 院長の患者たち
「仕方ない、君の望み通りここで診察をするとしよう」
「え、やだ、やった!」
「嫌なのか嬉しいのか、どっちだね」
院長は中谷さんの方を向き、俺に背を向けた。どうやら本当に俺の診察は終わったらしい。薬10錠追加という結果で。一体、何の薬を増やすつもりなんだろう。正直なところ、俺は薬の効果というものを感じたことが一切無かった。そういうものだ、と言われれば何も言えないんだけど。だけど。
特殊体質とか、そういうオチだったら俺は泣く。毎日毎日、大量の薬を飲むのは面倒くさいという意味で辛いのだ。今まで息を殺していた後藤さんと徹君からの視線を感じ、俺は二人の顔を見る。
二人が唇の動きだけで言ったのは「ご愁傷様で」。ご愁傷様返しがやってきた。
「それで、入院してみてどうだね」
「まぁ、自傷他害はやってないですよー」
「やっていたら、隔離に加えて拘束だぞ」
「やだー、先生こわーい!」
「……はぁ」
中谷さん、強い。診察で院長が劣勢になるなんてことなんて、皆無なはずなのだが。院長と中谷さんの会話は続く。俺だけでなく、後藤さんも徹君も聞き耳を立てている。聞き耳を立てず聞きたくないとしても、聞こえる距離だが。
「血液検査の結果だが、血中のK-13濃度が高かった。妄想は無いか?」
「空想なら暇でよくやってますけど、自覚出来る妄想は無いです」
「次にK-35濃度も高かったが、夜は眠れたかね?」
「バッチリです。自宅より爆睡出来ましたよ」
「そうか」
……Kなんちゃら濃度、とやらを理解している風な中谷さんが恐ろしい。俺も後藤さんも徹君も、聞き耳は立てているが会話の内容は理解出来ない。中谷さん、本当に「K型性精神疾患様症状」とかってやつなのか。




