8 院長の患者たち
「それじゃあ、最後に一つだけ聞く。K-9濃度だけ異常に低かった。薬は飲んでいるな?」
「はい、勿論」
「よし、じゃあ、診察は終わりだ。……雨宮君」
「……へ、俺ッスか!?」
いきなり名前を呼ばれて、俺はベッドで軽く飛び上がった。院長の声は低くて重く、鼓膜を激しく揺らす。え、なになに、俺が聞き耳を立ててたってバレた?いや、普通に聞こえてくる距離だけどね?いや、マジで!!
「中谷さんのことを宜しく頼んだ」
「はい……はいっ!?」
「はい、は一回でよろしい」
そう言って院長は223を出て行った。昨日に引き続き、何故か名指しで中谷さんと仲良くするように、的なことを頼まれてしまった。院長からだぞ?院長からそう言われるって、よっぽど何かあるぞ?
不意に中谷さんと目が合って、手を振られた。一応、振り返す。
「よろしくねー、嵐君」
「何がよろしくなんだか俺には分からないんだが、まぁ、よろしく……」
ようやく普段の223に戻る。いや、中谷さんが自分の部屋に戻る気配がないので、普段通りとは言えないか。目覚めのアレの件もあるし。当然のことながら内鍵なんて無いし、中谷さんは実質、223に入り浸り放題だ。でも、看護師さんたちがそれを見過ごしてくれるとは思えないので早く検温に来て、中谷さんを自分の部屋へ戻してほしい。
そんな時に223の扉が再び開いた。
「遅くなっちゃってごめんねー!検温だよー!」
「おはようございまーす、宮田さん……って、何で夜勤さんが日勤さんの仕事してるんスか?」
「一人、遅刻なのよー。石見ちゃん、寝過ごしたって」
へぇ、石見さんも寝坊なんてするんだ。そんなことを思いつつ、俺は宮田さんから体温計を貰う。ようやく、日常感を感じられた。が、しかし。なんで普通にここで中谷さんの検温してるんスか、宮田さん!!




