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ラスボス前の街が、はじまりの街に宣戦布告した結果――レベル93の将軍が木の棒でスライムと戦う羽目になった  作者: 出水克幸
初心者冒険者がラスボス前の街に行く

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23/26

攻略記録その23 勇者の最終装備、初心者に固定されました

「売れません」


「ですよね」


「預かれません」


「ですよね」


「捨てられません」


「……ですよね?」


 終焉都市ヴァルハラ。


 冒険者組合。


 ラスボス前の街へ来て三日目。


 レベル7の少年は。


 勇者の最終装備を抱えていた。


 昨日。


 魔王城最深部へ。


 安全地帯として緊急転送された結果。


 本来なら。


 勇者一行が最終決戦直前に入手するはずだった。


 伝説級装備。


 蘇生薬。


 魔王耐性の護符。


 その他。


 いろいろ。


 初心者三十四人が先に回収した。


 そして。


 戻せなかった。


「では」


 少年。


 受付嬢を見る。


「どうしたらいいですか?」


「分かりません」


「受付ですよね?」


「こんな案件、初めてです!」


 もっともだった。


――――


 問題の装備。


 机の上。


 置かれている。


 白銀。


 剣。


 刀身には。


 見たこともない文字。


 周囲。


 高レベル冒険者。


 遠巻き。


「本物?」


「本物だ」


「最終装備?」


「たぶん」


「触っていい?」


「ダメ!」


 ミーナが叫ぶ。


「これ以上、取得者増やさないで!」


 少年。


 表示を見る。


《勇者専用武器》


《星断ちの聖剣》


《ユニーク》


《所有者》


《――》


 少年。


「所有者、空欄です」


 グレン。


「なら渡せるのでは?」


「そう思いますよね」


 少年。


 剣を持つ。


 グレンへ。


「どうぞ」


 グレン。


 受け取ろうとする。


《受け渡しできません》


「……」


 もう一度。


《受け渡しできません》


 グレン。


「なぜだ」


 表示。


《クエスト重要品です》


《現在の所有者から直接移動できません》


 少年。


「現在の所有者って誰です?」


 表示。


《あなた》


「僕!?」


 所有者欄。


 空白。


 実質。


 少年。


「表示して!」


 ミーナが叫んだ。


――――


「では地面へ置け」


 グレン。


「拾い直せばよい」


「なるほど!」


 少年。


 剣。


 地面へ。


 手。


 離す。


《重要品は捨てられません》


 少年。


 手。


 離れない。


「……」


 もう一度。


《重要品は捨てられません》


「離してるのに!」


 剣。


 少年の手。


 ぴったり。


 くっつく。


「怖い!」


 振る。


「取れない!」


 ミーナ。


「呪いの装備じゃないですか!」


 表示。


《呪われていません》


「そこだけ否定早い!」


――――


「倉庫」


 少年。


「倉庫なら?」


「試しましょう」


 ヴァルハラ中央倉庫。


 巨大。


 冒険者一人一人に。


 専用保管箱。


 少年。


 箱。


 開く。


 剣。


 入れる。


《重要品は倉庫へ預けられません》


「ダメ!」


 蘇生薬。


 入れる。


《重要品は倉庫へ預けられません》


「これも!」


 護符。


《重要品は倉庫へ預けられません》


「全部!」


 少年。


 鞄。


 見る。


 最終装備。


 最高級蘇生薬。


 護符。


 その他。


「僕の荷物」


「はい」


「全部、魔王戦用になってきました」


「レベル7なのに」


 初心者。


 持ち物だけ。


 エンディング直前。


――――


 さらに。


 別の問題。


《所持重量》


《48/35》


 少年。


「……赤い」


 ミーナ。


「あ」


《重量超過》


《移動速度が低下します》


 少年。


 一歩。


 ずず。


「重っ!」


 一歩。


 ずず。


「歩けない!」


 勇者の最終装備。


 重い。


 当たり前。


 世界最高峰。


 金属。


 大量。


 少年。


 筋力。


 初心者。


「捨てられない!」


「預けられない!」


「渡せない!」


「重い!」


 ミーナ。


「完全に詰んでる!」


 少年。


 入口から。


 十歩。


 三分。


「冒険できません!」


 勇者の武器を手に入れた結果。


 初心者。


 移動不能。


――――


「装備すれば?」


 一人。


 言った。


 全員。


 止まる。


 少年。


「装備?」


「持ってるより背負った方が」


「重量は変わらんだろ」


「装備補正あるかもしれない」


 検証。


 開始。


 少年。


 聖剣。


 装備。


《必要レベル90》


《装備できません》


「ですよね」


 終了。


 三秒。


 別の冒険者。


「見た目装備枠」


 ミーナ。


「何ですかそれ」


「性能を反映せず、見た目だけ装備する」


「そんなのあるんですか?」


「ある」


 少年。


《外見装備》


《星断ちの聖剣》


 選択。


《外見装備として設定しました》


「できた!」


 少年。


 背中。


 巨大な聖剣。


「かっこいい!」


《性能は反映されません》


「分かってます!」


《重量は反映されます》


「意味ない!」


 見た目。


 最終装備。


 性能。


 木剣以下。


 重量。


 最終装備。


 一番悪いところだけ。


 残った。


――――


「重量を上げればいい」


 グレン。


「筋力を振れ」


 少年。


 首。


 振る。


「前回、百人の師匠に決められました」


「そうだった」


 ステータス。


 バランス型。


 筋力。


 一足りない。


 何にでも。


 一足りない。


「未使用ポイントは?」


「ゼロ」


「レベルを上げる」


「今、ヴァルハラです」


 周辺。


 推奨レベル。


 75以上。


「……」


「……」


「リスタへ戻るか」


「帰還地点登録してません」


「……」


「……」


 グレン。


「魔王城の方が帰りやすかったな」


「言わないでください」


――――


「では」


 商人。


 現れる。


「重量増加袋を」


 ミーナ。


「出た」


「何ですその反応」


「あなたが来ると大体お金の話なので」


 商人。


 胸。


 張る。


《次元拡張鞄》


《重量許容量+100》


「これ!」


 少年。


 目。


 輝く。


「いくら?」


「九万八千G」


「帰ってください」


 即答。


「分割払い可能」


「帰って」


「百二十回払い」


「何年払わせるんですか!」


「冒険者なら将来性が」


「レベル7です!」


 商人。


 少年の持つ聖剣を見る。


「担保」


「絶対ダメ!」


 ミーナ。


 商談。


 終了。


――――


 昼前。


 ヴァルハラ。


 中央通り。


 異様な光景。


 レベル7の少年。


 勇者の最終装備。


 引きずる。


 後ろ。


 ミーナ。


 グレン。


 元初心者三十三人。


 さらに。


 野次馬。


 数百人。


「それ本物?」


「本物らしい」


「どこで?」


「魔王城」


「レベル7で?」


「安全地帯だったらしい」


「何それ」


 少年。


 ずず。


 ずず。


「見世物じゃないです……」


 そして。


 当然。


 出た。


「写真……じゃなくて、記念画いいですか?」


「ダメ!」


 ミーナ。


「観光名所にしないで!」


 十分後。


 商人。


 看板。


『勇者の最終装備を持つ新人』


『見学無料』


「誰が許可した!」


――――


 午後。


 さらに。


 事態。


 変わる。


「勇者一行が帰還したぞ!」


 ヴァルハラ。


 西門。


 鐘。


 鳴る。


 街中。


 ざわつく。


 少年。


「勇者?」


 グレン。


 顔。


 変わる。


「本物だ」


 西門。


 人。


 割れる。


 白銀の鎧。


 赤い外套。


 長剣。


 数名の仲間。


 傷。


 疲労。


 それでも。


 立つだけで。


 周囲の空気が違う。


 勇者一行。


 ついに。


 ヴァルハラ到着。


「四天王を一人倒したらしい!」


「神器は?」


「六つ!」


「あと一つ!」


 ミーナ。


 嫌な汗。


「……待って」


 少年。


「何です?」


「昨日の表示」


《神器》


《2/7》


「昨日は二つだったような」


 グレン。


「勇者一行側の進行度では?」


「でも今六つ」


「進んだのだろう」


 ミーナ。


 少年の鞄。


 見る。


「……この中」


「はい」


「何入ってましたっけ」


 少年。


 確認。


《魔王耐性の護符》


《終焉の霊薬》


《星断ちの聖剣》


《黒き鍵》


《名もなき欠片》


 ミーナ。


「最後二つ何!?」


「宝箱から」


「聞いてない!」


 グレン。


 黒き鍵。


 見る。


 顔。


 固まる。


「それ」


「何です?」


「神器の一つでは?」


 全員。


「……」


 少年。


 震える。


「僕」


「はい」


「神器も持ってる?」


「たぶん」


「返せない?」


「たぶん」


 勇者。


 神器。


 六つ。


 七つ目。


 初心者。


「ラスボス前まで来てる勇者より」


 ミーナ。


「レベル7の方が進行アイテム持ってる!」


――――


 勇者。


 近づく。


 少年。


 固まる。


「勇者だ」


「はい」


「どうしよう」


「普通に」


 勇者。


 少年の背中。


 聖剣。


 見る。


 止まる。


「……」


 少年。


「……」


 勇者。


「それ」


「はい」


「どこで?」


「魔王城」


 勇者。


 仲間。


 一斉。


 止まる。


「魔王城?」


「はい」


「行ったのか?」


「はい」


「どうやって?」


「安全な場所へ逃げたら」


「……」


 勇者。


 理解。


 できない。


 当然。


「貸してくれ」


「はい!」


 少年。


 喜ぶ。


「やっと!」


 聖剣。


 勇者へ。


《受け渡しできません》


「……」


 勇者。


「もう一度」


《受け渡しできません》


 勇者。


 眉。


 動く。


「なぜだ」


 少年。


「僕も知りたいです」


――――


 勇者。


 手。


 伸ばす。


 聖剣。


 握る。


《他者所有の重要品です》


《取得できません》


「我の武器だぞ」


 少年。


「そうですよね!」


《現在の取得者》


《レオン》


 少年。


「僕の名前出た!」


 ミーナ。


「今まで空欄だったのに!」


 少年。


 レオン。


 ここでようやく。


 名前。


 出る。


 勇者。


 レオンを見る。


「レオン」


「はい」


「返せ」


「返したいです!」


 人生で。


 初めて。


 勇者に名前を呼ばれた言葉。


「返せ」


 だった。


――――


 勇者一行。


 冒険者組合。


 緊急会議。


 受付嬢。


「取得済みユニークアイテムは」


「うむ」


「再取得不可です」


 勇者。


「知っている」


「同一品は世界に一つ」


「知っている」


「現在」


 レオン。


 指す。


「彼が所有しています」


 勇者。


「なぜだ!」


 レオン。


「ごめんなさい!」


 ミーナ。


「この子に怒らないで!」


 勇者。


 頭。


 抱える。


「四天王を倒し」


「はい」


「神器を集め」


「はい」


「王都を救い」


「はい」


「三十七の依頼を終え」


「はい」


「ようやく聖剣を受け取るところまで来た」


「はい」


「それを」


 レオン。


 見る。


「レベル7が持っている」


「はい」


「しかも」


 受付嬢。


「外見装備しています」


 勇者。


「外見だけ!?」


 レオン。


「性能は出ません」


「なぜつけた!」


「重さ同じでした」


「意味が分からん!」


――――


「取得権を移せないのか」


 勇者の仲間。


 魔法使い。


 聞く。


 受付嬢。


「方法があります」


 全員。


 前。


 乗り出す。


「本当ですか!?」


「はい」


 表示。


《ユニーク重要品の所有権移転条件》


 一。


《取得者が関連クエストを完了》


「……」


 二。


《または取得者が関連クエストを放棄》


「放棄!」


 ミーナ。


「それ!」


 受付嬢。


「では」


《関連クエストを確認します》


 レオン。


 表示。


《???》


「何これ」


《未発生クエスト》


「未発生!?」


 ミーナ。


 叫ぶ。


「クエスト始まる前にアイテム取ってるから!」


 取得。


 先。


 クエスト。


 後。


 だから。


 放棄。


 できない。


「では完了」


「未発生なので」


「開始」


「開始条件を満たしていません」


「条件は?」


《四天王を全員討伐》


《神器を七つ集める》


《勇者認定》


 レオン。


 見る。


「無理です」


 勇者。


「当たり前だ!」


――――


「待ってください」


 ミーナ。


 表示。


 見る。


「神器七つ」


「うむ」


「今」


 勇者一行。


 六つ。


「七つ目」


 レオン。


 鞄。


 黒き鍵。


《神器・冥界鍵》


 全員。


 沈黙。


 勇者。


「……」


 レオン。


「これですか?」


 勇者。


「それだ」


 レオン。


「返せないです」


 勇者。


 机。


 拳。


「知っている!」


 ラスボス戦。


 必要な物。


 全部。


 初心者側。


――――


 勇者。


 深呼吸。


「つまり」


「はい」


「我々は」


「はい」


「最後の神器を持っている」


「はい」


「レベル7の少年を」


「はい」


「四天王最後の一人討伐へ」


 ミーナ。


「やめて」


「連れて行く必要がある?」


「やめて!」


 受付嬢。


「現状では」


「現状では?」


「所有権を移す最短ルートです」


 レオン。


「僕、行くんですか?」


 勇者。


 レオンを見る。


 レベル7。


 木剣。


 革鎧。


 勇者の聖剣。


 背中。


 重くて。


 動き。


 遅い。


「……」


「……」


「守る」


 勇者。


 言った。


 ミーナ。


「やめましょう!」


「他に方法がない!」


「世界最高峰の勇者パーティーが初心者の護衛になるんですよ!?」


 グレン。


「逆に安全では?」


 ミーナ。


 止まる。


「……確かに」


 レオン。


 目。


 輝く。


「勇者さんと冒険?」


「そうなる」


「行きたいです!」


「即決しない!」


――――


 その瞬間。


《パーティー結成条件を確認しました》


 ミーナ。


「嫌」


《勇者一行》


《レオン》


《同一目的を確認》


「勝手に目的合わせないで!」


《特別パーティーを結成します》


 表示。


《勇者パーティー》


《勇者》


《大魔導士》


《聖女》


《剣聖》


《レオン Lv7》


 沈黙。


 レオン。


「僕だけ数字低い」


 勇者。


「気にするところはそこか」


《パーティー平均レベルを算出します》


 ミーナ。


「あ」


 勇者。


「何だ?」


 ミーナ。


「リスタで嫌な思い出が」


《平均レベル》


《74》


 勇者。


「まあ」


 表示。


 続く。


《戦力差が大きすぎます》


「待て」


《適正化を実施します》


 勇者。


「待て!」


《低レベルメンバーに合わせ》


《レベルシンクを――》


 勇者。


「やめろおおおお!」


 ミーナ。


「また来たああああ!」


 光。


 勇者。


 世界を救う者。


 レベル92。


 矢印。


《Lv10》


 大魔導士。


《Lv10》


 聖女。


《Lv10》


 剣聖。


《Lv10》


 レオン。


《Lv7》


 勇者。


 自分の剣。


 確認。


《使用技能》


《斬る》


《強く斬る》


 勇者。


 震える。


「我は」


「はい」


「四天王を三人倒した」


「はい」


「昨日まで」


「はい」


「世界を救っていた」


「はい」


「今日」


 表示。


《初心者支援パーティー》


 勇者。


「初心者の護衛になった」


 レオン。


「よろしくお願いします!」


 勇者。


 天井を見る。


「魔王を倒すより難しいかもしれん」


 ラスボス前の街。


 ついに。


 世界を救う勇者まで。


 初心者コンテンツへ巻き込まれた。

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