↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ラスボス前の街が、はじまりの街に宣戦布告した結果――レベル93の将軍が木の棒でスライムと戦う羽目になった  作者: 出水克幸
初心者冒険者がラスボス前の街に行く

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
21/25

攻略記録その21 レベル7、ラスボス前の街に到着する


「魔王を倒してください」


「今、着いたばかりです」


 終焉都市ヴァルハラ。


 北門。


 リスタを出発した三十四人の元初心者たちは。


 到着して。


 三十秒で。


 世界を救うことになった。


《最終決戦クエスト》


《魔王を討伐せよ》


《推奨レベル90》


 少年。


 現在。


 レベル7。


「断れますか?」


 門番。


「何を?」


「魔王討伐」


「なぜ?」


「レベル7です」


 門番。


 少年を見る。


 木剣。


 革鎧。


 小さな布袋。


「……仮装か?」


「違います!」


 後ろ。


 三十三人。


 だいたい同じ格好。


 門番。


 黙る。


「集団仮装?」


「違う!」


 ミーナが叫んだ。


――――


 終焉都市ヴァルハラ。


 魔王城に最も近い都市。


 世界最高峰の冒険者。


 世界最高峰の武具。


 世界最高峰の魔法設備。


 そして。


 世界最高峰の物価。


「宿に泊まりたいです」


 少年が言った。


 宿屋主人。


「一泊四万八千ゴールドです」


「所持金十七ゴールドです」


「……」


「……」


「馬小屋なら?」


 少年。


 希望。


「二千五百ゴールドです」


「馬の方が金持ち!」


 ミーナが叫んだ。


 リスタ。


 一泊。


 十数ゴールド。


 ヴァルハラ。


 馬小屋。


 二千五百。


「何でそんなに高いんですか!?」


 主人。


 胸を張る。


「最高級竜毛布団」


「いらない!」


「魔力循環浴槽」


「普通のお風呂でいい!」


「魔王軍襲撃時保証」


「何その保険!」


「客室結界耐久ランクS」


「寝るだけなんです!」


 主人。


 不思議そうな顔。


「では、何をしに終焉都市へ?」


 少年。


「観光」


「帰った方がいい」


「宿屋に言われた!」


――――


「もっと安い宿は?」


 ミーナが聞く。


 主人。


「ある」


「どこです?」


「南区」


「いくら?」


「一万二千」


「まだ高い!」


「壁なし」


「壁なし!?」


「屋根のみ」


「それ宿ですか!?」


「雨は防げる」


「四方から魔王軍入ってくるでしょう!」


「そのための護衛オプション」


「いくら?」


「八万」


「部屋より高い!」


 元初心者三十四人。


 宿泊。


 開始五分。


 断念。


――――


「装備を買おう!」


 一人の少年が言った。


「ヴァルハラなら強い武器いっぱいあるんですよね?」


 グレン。


「それは間違いない」


「見るだけなら無料ですし!」


 ミーナ。


「その発想が一番安全かも」


 武器屋。


 入店。


 少年。


 最初の剣を見る。


《聖剣グラン・ヴァリオン》


《価格 1,280,000G》


「次」


 二本目。


《黒竜大剣》


《価格 870,000G》


「次」


 三本目。


《魔断ちの短剣》


《価格 420,000G》


「短剣なのに!?」


 少年。


 棚の端。


「これ安そう!」


 普通の鉄剣。


《価格 12,000G》


 沈黙。


「店主さん」


「何だ?」


「一番安い武器は?」


 店主。


 少年の腰。


 木剣。


 指さす。


「それ」


「もう持ってます!」


「よかったな」


「買い物終わった!」


――――


「でも試しに持ってみたい」


 別の少女。


 鉄剣。


 触る。


《必要レベル75》


《装備できません》


「……」


 別。


《必要筋力64》


《装備できません》


 別。


《必要称号》


《竜殺し》


《装備できません》


 別。


《必要実績》


《魔王軍将軍を三体討伐》


《装備できません》


「買えても使えない!」


 ミーナ。


「ここラスボス前ですから!」


 少女。


「初心者向けあります?」


 店主。


「ない」


「即答!」


「初心者が来る街ではない」


 全員。


 攻略律の推奨ルートを思い出す。


《初心者卒業者におすすめ》


《終焉都市ヴァルハラ》


 ミーナ。


「推薦した奴、ほんとに出てきて!」


――――


 少年。


 自分の木剣。


 店主へ差し出す。


「これ売れます?」


「買い取り一ゴールド」


「八ゴールドで買いました!」


「中古だ」


「七ゴールド下がった!」


 店主。


 木剣を見る。


「傷あり」


「一回戦ったので!」


「耐久減少」


「初心者装備に査定厳しい!」


 その横。


 グレン。


 伝説級剣を置く。


「整備頼む」


「八百G」


 少年。


 固まる。


「整備だけで僕八百人分の木剣……」


 グレン。


「数えるな」


――――


 武器屋を出る。


 少女。


「防具なら?」


 ミーナ。


「嫌な予感するけど」


 防具屋。


《竜鱗鎧 650,000G》


《魔王皮外套 510,000G》


《聖騎士兜 230,000G》


 少女。


「出ます」


「早い!」


――――


 昼。


 三十四人。


 空腹。


「ご飯!」


 食堂。


 メニュー。


《魔竜ステーキ 4,800G》


《深淵魚の香草焼き 3,600G》


《世界樹サラダ 2,900G》


《魔力酒 1,700G》


 少年。


「パン」


「六百G」


「リスタで何個買えるんだろう……」


 ミーナ。


「考えない方がいいです」


「水」


「三百G」


「水!?」


 店主。


「魔王城地下水脈の天然水だ」


「普通の水!」


「聖銀瓶入り」


「瓶いらない!」


「瓶を返せば二十G戻る」


「瓶代二百八十!?」


――――


 グレン。


 メニューを見る。


「戦闘食は性能が違う」


 少年。


「性能?」


 グレン。


《魔竜ステーキ》


《攻撃力+80》


《三十分》


「すごい!」


「だろう」


「食べれば僕も強くなる?」


「食べてみるか」


 ミーナ。


「四千八百Gですよ!」


 グレン。


「俺が出す」


 少年。


 一口。


《必要レベル70》


《効果を十分に引き出せません》


《攻撃力+1》


 沈黙。


 少年。


「味は?」


「硬いです」


 グレン。


 四千八百G。


 攻撃力。


 一。


「パンでよかった」


「はい」


――――


「じゃあクエスト!」


 午後。


 少年たち。


 冒険者組合。


「仕事ならお金も稼げる!」


 ミーナ。


「ようやくまともな発想!」


 掲示板。


 三十四人。


 見る。


《魔竜討伐》


《推奨レベル88》


《報酬120,000G》


「次」


《魔王軍補給基地破壊》


《推奨レベル84》


《報酬95,000G》


「次」


《死霊騎士二十体討伐》


《推奨レベル82》


「次!」


 少年。


 下の方。


「簡単そう!」


《薬草を三枚集めよう》


 全員。


 止まる。


 懐かしい。


「これ!」


「できます!」


「リスタでやった!」


「薬草なら!」


 ミーナ。


 依頼票。


 確認。


《採取場所》


《魔王領・腐敗湿原》


《推奨レベル79》


「薬草三枚でレベル79!?」


 グレン。


「ここの薬草は周囲に毒霧がある」


「薬草より先に死ぬ!」


「毒耐性装備が必要だ」


「いくら?」


「最低三万」


「薬草を買わせて!」


――――


「もっと簡単なの!」


 受付嬢。


「こちらは?」


《角ウサギを五匹討伐》


 少年。


「ウサギ!」


 ミーナ。


「待って」


《推奨レベル80》


「ウサギが80!?」


 受付嬢。


「この辺では弱い方です」


「弱いの基準!」


 別。


《荷物を届けよう》


「戦闘なし!」


 目的地。


《魔王城前線基地》


「戦闘より危ない!」


 別。


《迷子のペットを探そう》


「これ!」


 対象。


《幼体ベヒーモス》


「迷子にするな!」


――――


 少年。


 受付嬢を見る。


「レベル7でもできる仕事ってあります?」


 受付嬢。


 考える。


 一分。


 二分。


 三分。


「受付の掃除?」


「冒険者じゃなくなってる!」


――――


 仕方なく。


 街を見て回る。


 ヴァルハラ。


 巨大な城壁。


 黒い石畳。


 空へ伸びる塔。


 武装した冒険者。


 巨大な竜を引きずる兵士。


 魔導砲。


 飛行艇。


 リスタとは。


 何もかも違う。


 少年。


 目を輝かせる。


「すごい……」


 ミーナ。


 少し笑う。


「でしょう?」


「はい!」


 少年。


 走る。


「あれ何ですか!?」


「転移門」


「乗りたい!」


 巨大な青い光の門。


《高速移動施設》


 少年。


 手を触れる。


《移動先を選択してください》


 一覧。


《魔王城前》


《滅びの峡谷》


《深淵墓地》


《竜骨山》


《終末平原》


「全部怖い!」


 少年。


「リスタは?」


《未登録》


「帰れない!」


 ミーナ。


「一度訪れただけじゃ登録されないんですか!?」


 グレン。


「転移門に触れていないからだろう」


「最初に教えて!」


 高速移動。


 行き先。


 全部死地。


 元の街。


 なし。


――――


 別の少年。


 町の中央。


 巨大な掲示板。


「これは?」


 住民。


「魔王攻略情報だ」


「見てもいい?」


「好きにしろ」


 少年。


 読む。


『第二形態は闇耐性必須』


『HP50%以下で全体即死』


『第三形態移行前に右腕破壊』


『真エンディング条件』


 ミーナ。


 走る。


「見ないで!」


「なんで!?」


「まだ何も知らないでしょう!」


「魔王って第二形態あるんですか?」


「知っちゃった!」


「第三も?」


「そこも!」


「真エンディングって?」


「読まないでえええ!」


 ラスボス前の街。


 町中。


 ネタバレだらけ。


――――


 さらに。


 道端。


 老人。


「若者よ」


 少年。


「はい?」


「ついにここまで来たか」


「今日来ました」


「長い旅だったな」


「二週間くらいです」


「数多の仲間との別れを乗り越え」


「誰も死んでません」


「伝説の七つの神器を集め」


「一本も持ってません」


「四天王を倒し」


「会ったことないです」


 老人。


 止まる。


「……誰?」


「こっちが聞きたい!」


 ミーナ。


「終盤NPCの会話しか用意されてない!」


――――


 別の女性。


 少年を見る。


「あら、勇者様」


「違います」


「魔王城でお会いしましょう」


「行きません」


「必ず帰ってきてね」


「今日初対面です!」


 別の兵士。


「王都の仇を!」


「王都行ったことない!」


 別。


「妹を頼む」


「妹誰!?」


 ヴァルハラ。


 全住民。


 物語。


 終盤。


 三十四人。


 物語。


 序盤。


 会話。


 全く噛み合わない。


――――


「もう町の中だけにしましょう」


 夕方。


 ミーナ。


 疲れていた。


「外には絶対出ない」


 三十四人。


「はい」


「門から外を眺めるだけ」


「はい」


「敵に近づかない」


「はい」


「攻撃しない」


「はい」


「拾わない」


「はい」


「知らない人についていかない」


 少年。


「子ども扱い!」


「今の皆さんには必要です!」


――――


 南門。


 外。


 終末平原。


 黒い土。


 赤い空。


 遠く。


 魔王城。


 少年たち。


 息を飲む。


「……あれが」


 グレン。


「魔王城だ」


「すごい」


 その時。


 草むら。


 がさ。


 三十四人。


 止まる。


「何?」


 小さい影。


 出る。


 白い。


 ふわふわ。


 長い耳。


「ウサギ!」


 少年。


 笑う。


「かわいい!」


 ミーナ。


「待って」


「見るだけ!」


「表示!」


 ウサギ。


《終末角ウサギ》


《Lv82》


 少年。


「……」


 ウサギ。


 鼻。


 ひくひく。


 少年。


 後ずさる。


「リスタのスライムより」


「はい」


「七十五レベル高い」


「はい」


「ウサギなのに?」


「ここでは」


 受付嬢の言葉。


『弱い方です』


 少年。


「帰りたい」


 ミーナ。


「正しい判断です」


 全員。


 一歩。


 後ろへ。


 ウサギ。


 一歩。


 前へ。


「来た」


「走らないで!」


「なんで!?」


「追われるかも!」


 ウサギ。


 跳ねる。


 少年の方へ。


「うわあああああ!」


 三十四人。


 一斉に逃げた。


 グレン。


「俺が倒す!」


 剣を抜く。


 一閃。


 ウサギ。


 横。


 跳ぶ。


「避けた!?」


 もう一度。


 ウサギ。


 グレンの横を抜ける。


 門。


 ヴァルハラ市内へ。


 入る。


 ミーナ。


「え?」


 角ウサギ。


 街中。


 走る。


 兵士。


「魔物侵入!」


「閉門!」


 門。


 閉まる。


 三十四人。


 外。


「待って!」


 ミーナ。


 内側。


「開けて!」


 兵士。


「戦闘警戒中です!」


「その敵、中にいるでしょう!」


《魔物侵入時》


《城門を封鎖します》


「侵入された後に閉めるな!」


 三十四人。


 城外。


 レベル平均7。


 周辺推奨レベル。


 75以上。


 後ろ。


 がさ。


 がさがさ。


 全員。


 ゆっくり振り返る。


 ウサギ。


 二匹。


 三匹。


 十匹。


《終末角ウサギ Lv81》


《終末角ウサギ Lv83》


《終末角ウサギ Lv80》


 少年。


「ミーナさん」


「はい」


「これ」


「はい」


「クエストにありましたよね」


《角ウサギを五匹討伐》


 少年。


 数える。


「五匹どころじゃない」


 グレン。


 剣を構える。


「全員、俺から離れるな!」


 少年。


「これがラスボス前……」


 ミーナ。


「まだ町の門前です!」


 その瞬間。


 三十四人の前。


 同時に。


 表示。


《新しい地域を発見しました》


《終末平原》


 ミーナ。


「あ」


《地域推奨レベルとの差を確認しました》


「待って」


《初心者卒業者向け救済措置を検索します》


「検索しないで!」


《適切な救済措置が見つかりません》


 ミーナ。


「ですよね!」


《代替処理を実行します》


「それが一番怖い!」


 地面。


 三十四人の足元。


 青い光。


 巨大な円。


 グレン。


「何だこれは」


 光。


 強くなる。


《危険地域から》


《安全な場所へ緊急退避します》


 少年。


「助かった!」


 ミーナ。


「待って!」


「なんで!?」


「ここで安全な場所ってどこ!?」


 光。


 爆発。


 三十四人。


 グレン。


 ミーナ。


 消える。


――――


 同時刻。


 魔王城。


 最深部。


 巨大な玉座。


 魔王。


 目を閉じていた。


 側近。


 跪く。


「陛下」


「何だ」


「勇者一行はまだ終焉都市へ到達しておりません」


「そうか」


「決戦までは今しばらく――」


 青い光。


 玉座の前。


 炸裂。


 三十四人。


 グレン。


 ミーナ。


 落ちてくる。


「うわあああ!」


「痛っ!」


「何ここ!?」


 魔王。


 目。


 開く。


 少年。


 顔。


 上げる。


 玉座。


 巨大な角。


 黒い鎧。


 ラスボス。


 沈黙。


 少年。


「……宿屋?」


 ミーナ。


「どう見たら宿屋になるんですか!」


 表示。


《緊急退避完了》


《安全判定》


《敵対イベント未開始》


 魔王。


「……誰だ?」


 ミーナ。


 表示を見る。


 理解。


 したくない。


「イベント」


「何だ?」


「まだ始まってないから」


「だから?」


「ここ」


 魔王城最深部。


「安全地帯扱いです」


 魔王。


「は?」


 レベル7の元初心者たちは。


 ヴァルハラ到着初日に。


 町の宿へ泊まることすらできなかったのに。


 ラスボスの部屋へは。


 無料で到着した。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。