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ラスボス前の街が、はじまりの街に宣戦布告した結果――レベル93の将軍が木の棒でスライムと戦う羽目になった  作者: 出水克幸
高レベル勢の初心者街流入 ゲームバランス崩壊

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15/17

攻略記録その15 五千人でパーティーを組んだら、誰も経験値をもらえない


「招待が来ない!」


 翌朝。


 はじまりの街リスタ、東門前。


 五千人近い冒険者が集まっていた。


 理由は昨夜、攻略律が追加した新しい初心者支援。


《パーティー活動支援》


《パーティー人数が多いほど》


《獲得経験値にボーナスが発生します!》


 だった。


 普通なら。


 二人。


 三人。


 多くても五、六人。


 仲間と冒険しましょう。


 そういう意味だと思う。


 だがリスタには。


 ちょうど。


 数千人いた。


「とりあえず全員組めばいいんだろ?」


 誰かが言った。


 誰も止めなかった。


 そして現在。


「招待まだ!?」


「俺も!」


「誰が誘ってるんだ!」


「知らん!」


「最初に始めた奴!」


「最初って誰だよ!」


 開始十分。


 まだ一匹も倒していない。


――――


「何で五千人いるんですか」


 ミーナが東門へ到着した。


 昨夜。


 嫌な予感はしていた。


 だが。


 嫌な予感が毎回予想より人数を増やしてくる。


「パーティー人数が多いほど得なんだろ?」


 冒険者が答えた。


「そう書いてありましたけど!」


「なら最大人数を試す」


「最大を試さなくていい!」


「何人まで入れるか書いてない」


「だからって五千から始めないで!」


 グレンが後ろからやって来る。


「もう五千人いるのだから、仕方なかろう」


「仕方なくないです!」


「一度試せば上限が分かる」


「あなた、最近すぐ検証側に回りますよね?」


「敵を知るには必要だ」


「敵は仕様です!」


 そのとき。


 一人の冒険者が叫んだ。


「来た!」


 目の前に文字。


《パーティーへの招待が届きました》


「俺も!」


「こっちも来た!」


「承認!」


「承認!」


「入った!」


 歓声。


 だが。


 すぐに別の声。


「俺、来てない!」


「俺も!」


「私も!」


 ミーナが聞く。


「誰が招待してるんです?」


「知らない!」


「だからそこから確認してください!」


――――


 五分後。


 犯人が見つかった。


「私です」


 十五歳ほどの少年が手を挙げた。


 ミーナは顔を見た。


 見覚えがある。


 北門からやって来て。


 街へ入っただけでレベル3になった。


 あの新人少年だった。


「なんであなたが!?」


「昨夜、酒場で」


「はい」


「パーティー人数の検証するって言ってた人に」


「はい」


「『まず俺を誘って』って言われて」


「はい」


「誘いました」


「その後は?」


「近くにいた人を順番に」


「何人?」


「今……六百三十二人です」


「初心者に何を管理させてるんですか!」


 少年の前には。


 大量の表示が浮いていた。


《招待を送信しました》


《招待を送信しました》


《招待を送信しました》


《参加しました》


《辞退されました》


《参加しました》


《招待済みです》


《対象が遠すぎます》


《参加しました》


「見えません!」


 少年が叫ぶ。


「文字で前が見えません!」


「全部閉じて!」


「どうやって!?」


「私も知りません!」


 そして。


 さらに小さな表示。


《あなたはパーティーリーダーです》


 ミーナが固まった。


「……リーダー?」


「はい」


 五千人規模の集団。


 リーダー。


 レベル3。


 冒険歴。


 ほぼゼロ。


「代わって」


「どうやって?」


「……」


「分からないんですか?」


「今調べます!」


 はじまりの街は。


 初心者育成の結果。


 初心者に軍団を率いさせていた。


――――


「リーダー権限って何ができるんだ?」


 グレンが聞いた。


「確認します」


 少年が表示を触る。


《パーティー設定》


 一、招待。


 二、追放。


 三、リーダー譲渡。


 四、戦利品分配方式。


 五、集合地点指定。


 六、活動目標設定。


「追放」


 ミーナが止める。


「押さないで」


「押してません」


「絶対押さないで」


「はい」


「特に全員追放みたいなのがあったら――」


 少年が画面を見る。


「あります」


「あるの!?」


《パーティーを解散する》


「触らない!」


「はい!」


 周囲から声。


「まだ招待来ないぞ!」


「早くしろ!」


「リーダー!」


 少年が振り返る。


「俺です!」


「お前かよ!」


 全員が同時に叫んだ。


――――


 午前八時。


 ようやく。


 五千人のうち。


 三千八百十四人が同じパーティーに入った。


「中途半端!」


 ミーナが叫ぶ。


「なんで全員じゃないんですか!」


「招待拒否した人がいます!」


「なぜ!」


「知らない人からの招待は断る設定にしてるって!」


「そこだけ慎重!」


 別の問題も出ていた。


「俺、別パーティー入ってた!」


「抜けろ!」


「昨日から組んでるんだ!」


「じゃあそっち解散!」


「嫌だ!」


「固定パーティーなんだぞ!」


「五千人ボーナスの方が得だ!」


「友情を経験値で売るな!」


 さらに。


「招待が多すぎて誰から来たか分からん!」


「全部受けろ!」


「別のパーティーだった!」


「何やってんだ!」


 東門前。


 戦闘ゼロ。


 被害ゼロ。


 なのに。


 ものすごく疲れる。


 MMOにおける最大の敵は。


 時々。


 敵ではなく人間関係である。


――――


 午前九時。


 ついに。


 四千九百七十二人。


 同一パーティー。


「あと二十八!」


「誰だ!」


「寝坊!」


「起こせ!」


「一人は宿屋!」


「連れてこい!」


「三人は道具屋!」


「待てる!」


「一人トイレ!」


「待つな!」


「待ってやれ!」


 五千人パーティー。


 敵を倒す前に。


 点呼が始まった。


「一番から百番!」


「います!」


「百一から二百!」


「います!」


「二百一!」


「いない!」


「誰!?」


「分からん!」


「番号振った意味!」


 グレンが額を押さえる。


「軍の方が簡単だ」


「軍人は命令聞きますからね」


 ミーナが答える。


「冒険者は?」


「経験値のためなら聞きます」


「なら同じでは?」


「報酬が変わるとすぐ離脱します」


「軍より面倒だな」


――――


 午前十時。


 ようやく。


《パーティーメンバー数》


《5000》


 歓声が上がった。


「できた!」


「五千人!」


「最大だ!」


「まだ最大か分かりません!」


 ミーナが訂正する。


「入ったんだから最大だろ!」


「まだ入る可能性あります!」


 全員。


 少し考えた。


「呼ぶ?」


「呼ばない!」


 ミーナの声が一番大きかった。


「今いる人数で試すだけ!」


「よし!」


「一匹だ!」


「スライム一匹倒せ!」


 五千人が。


 一匹のスライムを見る。


 スライムも。


 五千人を見る。


 ぽよん。


 逃げた。


「逃げたぞ!」


「追え!」


「五千人で追わないで!」


――――


 草原の端。


 ようやくスライムを囲んだ。


「誰が倒す?」


 沈黙。


 昨日。


 止めの一撃を誰が取るかで揉めた。


 今日は。


 五千人。


「俺!」


「俺!」


「俺!」


「私!」


「俺だ!」


 四千人くらいが手を挙げた。


「決まらない!」


 ミーナが叫ぶ。


「リーダーが決めろ!」


 誰かが言った。


 全員が。


 レベル3の少年を見る。


「えっ」


 少年が青ざめた。


「俺!?」


「リーダーだろ!」


「決めろ!」


「そんな責任あるんですか!?」


「リーダーだからな!」


 少年が泣きそうになる。


「じゃ、じゃあ……」


 周囲を見る。


「グレンさんで」


「なぜ俺だ」


「強そうだから」


「初心者らしい理由!」


 グレンが剣を抜く。


「一匹でいいのだな」


「はい!」


「倒すぞ」


 一閃。


 スライム消滅。


《経験値を獲得しました!》


 全員が息を止める。


《パーティー活動支援》


《人数ボーナスを適用します》


「来た!」


「五千人!」


「何倍だ!?」


 表示。


《パーティーボーナス》


《+500%》


 歓声。


「五倍!」


「すげえ!」


「経験値二倍もある!」


「十倍!」


「レベル上がるぞ!」


 五千人が。


 自分の表示を確認する。


 そして。


 静かになった。


「……一」


 誰かが言った。


「え?」


「経験値、一」


 別の男。


「俺も一」


「俺も」


「私も一」


 ミーナが表示を見る。


 もう一行あった。


《獲得経験値をパーティーメンバーで分配しました》


 沈黙。


「……あ」


 五千人。


 ボーナスは増えた。


 だが。


 五千人で割った。


 結果。


 ほぼ何も残らなかった。


「一匹で経験値一?」


「はい」


「五千人集めて?」


「はい」


「二倍期間で?」


「はい」


「五倍ボーナス付いて?」


「はい」


「一?」


「一です」


 誰かが。


 小さく言った。


「ソロの方がよくない?」


「それを言うなあああ!」


――――


 解散。


 五千人。


 一斉に。


《パーティーから退出しました》


《パーティーから退出しました》


《パーティーから退出しました》


《パーティーから退出しました》


 レベル3の少年の前。


 表示が滝のように流れる。


「見えない!」


「閉じて!」


「追いつかない!」


《メンバーが退出しました》


《メンバーが退出しました》


《メンバーが退出しました》


「うるさあああい!」


 五千人パーティー。


 結成。


 約二時間。


 戦闘。


 一回。


 解散。


 三分。


 冒険とは。


 時に。


 準備の方が長い。


――――


「四人だ!」


 誰かが叫んだ。


 ミーナの顔が引きつる。


「今度は何ですか」


「分配されるなら人数を減らせばいい!」


「普通のこと言ってる!」


「二人!」


「三人!」


「四人!」


「何人が一番効率いいか調べるぞ!」


「また検証!」


 一瞬で。


 草原が小集団に分かれた。


 二人組。


 三人組。


 四人組。


 五人組。


 十人組。


 中には。


 三十七人組。


「何で三十七?」


「友達が三十七人だった」


「効率の検証してください!」


 冒険者たちは。


 同時にスライムを倒し始めた。


「二人組!」


「一人あたり二十六!」


「三人!」


「二十四!」


「四人!」


「二十二!」


「五人!」


「十八!」


「八人!」


「十二!」


「十六人!」


「七!」


「五千人!」


「一!」


「もう五千試さなくていい!」


 記録係が黒板へ書く。


 数字。


 数字。


 数字。


 その下。


 大きく。


『現在の最高効率』


『二人パーティー』


 全員が黒板を見る。


「二人か」


「二人だ」


 その瞬間。


 東草原にいた数千人が。


 一斉に。


 二人組を作り始めた。


「組もう!」


「いいよ!」


「俺と!」


「ごめん、もう相手いる!」


「えっ」


「誰か!」


「二人組作って!」


 ミーナが顔を覆った。


「修学旅行みたいになってる……」


――――


 午前十一時。


 新たな問題。


 奇数。


「一人余った!」


 冒険者が叫ぶ。


「誰か三人にしてくれ!」


「効率落ちる!」


「酷い!」


「じゃあ俺と替わる?」


「相方捨てるな!」


 パーティー人数。


 二人が最適。


 それだけで。


 人間関係が壊れ始めた。


「昨日まで一緒だっただろ!」


「でもあいつの方が次のレベル近い」


「経験値で選ぶな!」


「レベルアップ全回復あるんだぞ!」


「友情より回復か!」


「回復は命に関わる!」


 正論だった。


 だから余計に悲しい。


 さらに。


「回復役と組む!」


「火力と組む!」


「足速い奴!」


「スライム探すの上手い人!」


「経験値だけじゃなく効率まで!」


 冒険者同士の相方募集。


 いつの間にか。


 面接になった。


――――


 昼。


 冒険者組合の掲示板。


『相方募集』


『レベル12』


『東草原周回』


『継続一時間以上』


『途中離脱なし』


『回復薬持参』


 その隣。


『相方募集』


『経験値効率重視』


『初心者歓迎』


『初見歓迎』


『ただし効率理解者のみ』


 ミーナが止まる。


「初見なのに理解者?」


 受付嬢が遠くを見る。


「もう突っ込まないことにしました」


 さらに。


『相方募集』


『失敗しても怒らない人』


『楽しく』


 その紙だけ。


 誰もいなかった。


「……悲しい」


 ミーナが呟いた。


――――


 午後一時。


 二人パーティーだらけになった東草原で。


 別の声。


「回復役が足りない!」


 昨日復権したばかりの神官たち。


 今日は。


 奪い合いになっていた。


 二人パーティー。


 一人を回復役にすると。


 火力が一人になる。


 狩りが遅い。


 両方火力にすると。


 事故が怖い。


「回復できて攻撃もできる人!」


「そんな都合いい人いない!」


「神官戦士!」


「五人しかいない!」


「予約!」


「俺が先!」


 募集掲示板。


『回復も攻撃もできる方募集』


『報酬優遇』


『食事付き』


『回復薬支給』


 神官の女性が腕を組む。


「昨日まで不要って言ってたわよね?」


 男たちが頭を下げる。


「申し訳ありませんでした」


「もっと」


「回復役は必要です」


「もっと」


「回復役は神です」


「よろしい」


 本物の神より。


 神官が強くなった。


――――


 午後二時。


 パーティーリーダー問題。


「勝手に抜けるな!」


「飯だから!」


「一言言え!」


「言った!」


「聞いてない!」


「戦闘中だった!」


「じゃあ待て!」


「腹減ってるんだよ!」


 二人パーティーですら。


 揉める。


 さらに。


《パーティーメンバーが遠すぎます》


「経験値入らない!」


「どこ行った!」


「トイレ!」


「近くでしろ!」


「嫌だよ!」


 ミーナが通りかかる。


「人間らしく生活してください!」


 効率化。


 とうとう。


 排泄と戦い始めた。


――――


 午後三時。


 戦利品問題。


 二人組がスライムを倒した。


 地面に。


 小さな青い欠片。


「出た!」


《スライムの核片》


 一人が拾う。


 もう一人。


「あ」


「何?」


「それ俺も欲しかった」


「一個しかない」


「じゃあどうする?」


 二人の前。


 表示。


《戦利品の分配方法を選択してください》


 一、順番。


 二、ランダム。


 三、リーダー管理。


 四、希望者抽選。


 二人が黙る。


「抽選?」


「公平じゃない?」


「じゃあ」


《希望しますか?》


 二人とも。


《希望する》


 数字が浮く。


 一人。


《17》


 もう一人。


《92》


「俺!」


《戦利品を獲得しました》


 17の男が固まる。


「……運?」


「運だな」


「俺が止め刺したのに!」


「抽選選んだだろ」


「納得いかん!」


 周囲。


「何してる?」


「戦利品抽選!」


「面白そう!」


「試す?」


「試すな!」


 ミーナが叫ぶ。


 遅かった。


 次々に。


《希望》


《希望》


《辞退》


《希望》


《抽選》


 戦闘より。


 戦利品の数字で盛り上がり始めた。


「99!」


「うおおお!」


「2!」


「弱っ!」


「数字に人格関係ない!」


――――


 午後四時。


 更なる問題。


「こいつ毎回希望押してる!」


「欲しいから!」


「使わない物まで?」


「売れる!」


「最低!」


 戦利品。


 必要な人。


 売りたい人。


 記念に欲しい人。


 全部希望。


「回復役の装備だぞ!」


「俺も希望!」


「剣士だろ!」


「売れる!」


「辞退しろ!」


 神官が怒鳴る。


「私が使うの!」


《抽選》


 剣士。


《97》


 神官。


《4》


 沈黙。


 剣士が。


 ゆっくり戦利品を背中へ隠した。


「返しなさい」


「ルールだから」


「返しなさい」


「抽選だから」


「返せ」


「はい」


 ゲームのルールより。


 神官の圧が勝った。


――――


 午後五時。


 町役場。


 黒板。


《パーティー人数ボーナス》


 今日の結果。


 一、五千人パーティー結成に二時間。


 二、一匹倒して一人あたり経験値1。


 三、即解散。


 四、二人組が最高効率と判明。


 五、相方争奪戦。


 六、回復役争奪戦。


 七、離脱問題。


 八、距離問題。


 九、戦利品抽選問題。


 十、人間関係悪化。


 ポポルが読む。


「……支援では?」


「攻略律の中では」


「協力を促したのでは?」


「そのはずです」


「仲が悪くなっておらんか?」


「なってます」


 グレンが腕を組む。


「なら四人程度に固定すればいい」


「どうやって?」


「……」


「窓口ないですよ」


「またそれか」


「最大の問題です」


 そのとき。


 兵士が入ってきた。


「報告!」


「何だ!」


「東草原の冒険者たちが!」


 ミーナが身構える。


「今度は何です?」


「二人組で効率よく狩り続けた結果――」


「はい」


「スライムがほとんどいなくなりました!」


 全員。


 黙る。


「……また?」


――――


 夕方。


 東草原。


「いない!」


「こっちも!」


「一匹もいない!」


 二人組。


 数千人。


 草原を歩き回る。


「湧くまで待つ!」


「どこで?」


「出現地点!」


「そこ俺たちの場所!」


「先にいた!」


「場所取りするな!」


 地面の一か所。


 冒険者が座っていた。


「ここ、さっき出た」


「だから?」


「次もここに出るかもしれない」


「根拠は?」


「二回出た」


「検証?」


「はい」


 ミーナが顔を覆う。


「次は出現待ち……」


 草原のあちこち。


 冒険者が立つ。


 座る。


 待つ。


 誰も動かない。


 一匹。


 ぽよん。


「出た!」


 三十人が走る。


「俺の!」


「俺が待ってた!」


「こっちが先!」


 初心者用スライム。


 出現。


 寿命。


 三秒。


――――


 夜。


 冒険者組合。


 攻略律が。


 今日の状況を見ていた。


《パーティー活動を確認しました》


 ミーナが天井を見る。


「頼むから何もしないで」


《多数の冒険者が協力しています》


「協力してない!」


《初心者向け魔物の不足を確認しました》


「そこは合ってる!」


《狩場の混雑を確認しました》


「そこも合ってる!」


《初心者が十分に戦闘できる環境を整備します》


 ミーナが止まった。


「……どうやって?」


 東草原。


 地面。


 揺れた。


 ごごごごご。


 待っていた冒険者たちが立ち上がる。


「何だ?」


「地震?」


「違う!」


 草原の中央。


 地面から。


 青い塊が。


 盛り上がる。


 一人の冒険者が見上げる。


「……でかくない?」


 普通のスライム。


 膝くらい。


 今。


 目の前。


 家より大きい。


《初心者用スライム》


《混雑緩和個体》


 ミーナが走ってくる。


「何ですかそれ!」


 表示が追加される。


《多数の冒険者が同時に戦えるよう》


《大型化しました!》


 グレンが呟く。


「なるほど」


「納得しない!」


《推奨参加人数》


《5000人》


 沈黙。


 五千人が。


 巨大スライムを見る。


 巨大スライムが。


 五千人を見る。


 そして。


 レベル3の新人少年の前に。


 懐かしい表示が浮かんだ。


《パーティーリーダーに選出されました》


「なんで俺なんですかあああああ!」


 今日一日かけて。


 五千人パーティーは失敗した。


 攻略律は。


 それを見て。


 五千人で倒す敵を用意した。

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