悪魔がウチにおりまして・1303
ウチには悪魔がいる。
鮭を炙っている悪魔が。
「室内はやめなさい」
七輪で鮭を焼いている。
煙がすっごいのです。
「火災報知器は切ってますー」
余計に狐に怒られそうだけど。
「普段ならそうでしょう」
煙の中からガスマスクを付けた狐が登場。
そこまでするかね。
「この鮭、ごんちゃんが持ってきたですー」
それなら文句も言えないよね。
クモとうぱは床に避難。ロフトだと燻製になっちゃうからね。
「母上からのお裾分け、どうせなら炭で焼こうかと」
鮭を焼くなって言ってないの。室内でやるなって言ってるの。
「ニンゲン、いいですか。美味しい鮭は美味しいのです」
構文にもなってないのよ。
じうじうと音を立てながら脂が浮いてくる鮭。
米を持って待機しているイモ虫。おい。
「この煙って虫除けにならないのね」
「本当ですね、くべますか」
悪魔のイモ虫に対しての扱いが本当に害虫のそれなんだよな。
「みーは煮ても焼いても食べれなーい!」
このふざけた態度でプチ無敵だからうざったいのよねぇ。
「金なら、出す……鮭を……食わすのだ……」
その低い声どこから出してるのさ。
「イモちゃんからお金受け取るほうが怖いです」
というかこのイモ虫との取引自体がね。
「いーじゃなーい!鮭ー鮭ーそーこぬけー!」
鮭に底は無いのよ。
「イモ殿」
ここまで黙っていた狐がガスマスクを外す。
「ごんちゃんー!みーにも鮭を」
「ダメです」
あら、バッサリ。
「そもそもこの鮭は母上から頂いた聖なる鮭」
ちらりと悪魔を見る。
「ほら、ボクはちょこちょこごんちゃん家行ってますから」
聖なるもの食べ慣れてる悪魔も嫌だなぁ。
「イモ殿、純粋なる邪がこの鮭を食べたらどうなると思います?」
「爆ぜるっ」
絶対にダメ、部屋が汚れる。
「えー、いいでしょー?」
「ダメです。美味ちいものは美味ちくいただく、これが正義」
大きく出ましたな。
「それならみーは触れてはいけない……なぜなら!みーは悪のカリスマ!」
「ならば、イモ殿はイモ殿の道をおゆきなさい……」
狐はベランダを指し示す。
威風堂々、イモ虫は歩んで行くのだった。
ウチにはイモ虫がいる。
「……あれっ?騙されてない?」
気付いてしまったイモ虫が。




