悪魔がウチにおりまして・1191
ウチらはエレベーターにいる。
……え?閉じ込められた?
ほんの5秒前、大きく揺れてそして一瞬暗くなった。
そしてそのまま動かなくなるエレベーター。
「悪魔、日頃の行ないに自信は?」
「ねぇ!です!」
だよね、私もない。
「とりあえず通話ボタン」
「反応ありません、ニンゲン!」
やっぱり日頃の行ないか。
「こういう時は慌てても仕方ありません、どうにか生き延びましょう」
そんな緊迫した状況かしら?
「まず、パイプを引き抜いてトイレに差します。そうすることで空気を吸えるのです」
いるかなぁ、空気。
「そして気を付けるのは鏡です、マジックミラーの可能性があります」
あるかなぁ、エレベーターにマジックミラー。
「ニンゲン、狙撃に注意ですよ!」
密室ですよ、悪魔さん。
「悪魔、悪乗りは済んだ?」
「気が済んだです」
よかった、ここにスリッパ無いから。
「実際どうしましょうね、これではもんじゃ焼きが食べられません」
そんな約束もしてません。
「これから向かうの、レンタルCDショップでしょ」
「ニンゲン、今の時代にわざわざコンパクトディスクを借りることします?」
正式名称で言わなくてよろしい。
「どうせ大した予定でも無かったし気長に……」
「良いのですか、ニンゲン」
悪魔がずずいと詰め寄った。
「な、なによ」
「このままボクと2人きり、助けが来なくて1週間過ごしたとします」
生きてるかなぁ、そんなに。
「極限状態でお互いが食べ物に見えてきます、するとお互いに生き延びるためにナイフを握るのです」
一気に雪山でも行きましたか?
「ニンゲン、アナタを倒してでもボクは生きるです!『そう簡単に負けるわけにはいかない!』そうしてボクらの戦いは3日3晩続いたです」
どうでも良いんだけどモノマネするならもう少し似せてくれない?
「のちに訪れた救助隊は見るのです。お互いに折り重なり抱き合って息絶えたボクらに。劇場版!エレベーターの思いやり!coming soon!」
ネーミングセンスもう少しどうにかならなかった?
「ちなみにギャランティは興行収入の0.2%でいいです?」
そこ出来高払いなんだ?
ウチらはエレベーターにいる。
「で、ですね、クモちゃんはその死を不審に思って調査してくれてですね」
救助が来るまでの30分、意外と飽きない話を聞かせてくれた悪魔でした。




