悪魔がウチにおりまして・1192
ウチには悪魔がいる。
和紙を食べている悪魔が。
「ニンゲン、マズいです」
そりゃそうでしょうよ。
そんなことを言いながら紙を食べることを辞めない。
「……歯医者呼ぶ?」
「やらいでか、こんにゃろー!」
荒ぶり過ぎてののしり言葉の意味がわからなくなってるってば。
「ニンゲンさん、ミミちゃんどうしたの?」
足元に紙風船をポンポンしているイモ虫が歩いている。
「今来た私に聞く?」
「奇遇ですねぇ、みーも30分前に来たところ」
ダメだ、コイツと会話が成立すると思った私が悪かった。
「ミミちゃん、紙ばっかり食べたら身体に悪いよー?」
イモ虫はそう言いながら醤油を渡す。
「そういう問題じゃありません!根本です!」
そうね、なぜ紙を食べているんですか?
「実はですね、わからないのです」
そんな戯けた言葉、今更許されるとお思いで?
「目が覚めたら、紙を食べたくて仕方なかったのです」
起きたときから?
その言葉を聞いたイモ虫がゆっくり遠ざかる。
「待ちなさい、原因」
「なんでー!みーが原因という証拠を出してくれないとー!」
両手を振り上げたイモ虫の脇からテープレコーダー。
テープレコーダー?
「未だに残ってたんだ、コレ」
「いいでしょー、あげないよ」
要りません、テープが無いから。
イモ虫からひったくったレコーダーの再生を押す。
『紙を食べたい、紙を食べたい、紙を食べたい……』
停止ボタンを押す。
「判決、有罪」
「弁護士が来ないと話さねぇっ!」
裁判終わってるんだってば。
「イモちゃん、チャーシューとベーコンどっちが好きですか?」
「あれ?みーが食材?」
察しが良いわねぇ。
「でも悪魔、作っても食べられなくない?」
「ノーモア!フードロス!」
イモ虫、良いの?自分のことフードと言って。
「それにしても、そんな寝てるときに聞かされて簡単に刷り込まれるものなの?」
「ずっと聞かされてたんじゃないですかねぇ」
イモ虫をタコ糸でぐるぐる巻きにしながら応える悪魔。
「のっと!殺生!まもれ!可愛い命!」
「はい、浸けまーす」
悪魔は躊躇なくタレにイモ虫を沈めるのでした。
ウチには悪魔がいる。
『しょっぱい!もう少し薄味に!』
「焼きまーす」
イモ虫の燻製を作っている悪魔が。
……もちろん、生き延びやがりましたよ。




