悪魔がウチにおりまして・1184
ウチには悪魔がいる。
着物を着て仮面を付けている悪魔が。
「いよーっ」
悪魔の掛け声のあと脇に控えた狐が鼓を打つ。
「ニンゲンに、過ぎたるものがみっつあります」
「原作より多くない?」
たしかふたつでしょ、家康は。
「ボク、ボク、そしてボクです」
「何もないじゃない」
それに従えたつもりないんだけど。
「ニンゲンー、練習なのでツッコまないでほしいですー」
そもそも何の練習なのよ。
「今度ミミ殿が狂言の舞台に立つことになりまちて」
ぽぽんっ小気味よく鼓を鳴らす。
「これが、狂言……」
「ニンゲン殿、抑えて」
何も言ってないでしょうが。
「ボクも舞台デビューなのです、嬉しいのです」
って当の本人は乗り気だけど?
「某がいけないのです、全て某の……」
狐は俯いている。どういう事情な訳?
「実は、ほわんほわんほわん」
「狐ちゃんがそんなことするんだ」
「それくらい切羽詰まっております」
むしろ余裕を感じます。
「それは昔、今から50年前のこと」
取り返し、付く期間長かったなぁ。
「某は言いまちた。『ミミ殿、お芝居のひとつも打てないようでは名折れ』と」
そこに至る経緯から聞きたかったなぁ。
「そこでボクは言ったです。『ならばキチンと練習して、ごんちゃんを驚かせるですー』と」
あれ?至って前向きなやりとり。
「ミミ殿のことだからどうせすぐに飽きる。某はそう思っていました。ちかし、だがちかし!」
ぽぽんっ!
アンタ、楽しんでるでしょ。
「ミミ殿は厳ちい稽古を乗り越え、ついにこの度舞台に……全ては某の戯言から端を発ちたこと、口惜ちい、口惜ちい!」
ぽぽんっ!
「あいや、ごんちゃん。ボクが勝手にやったこと。ごんちゃんが負うべき責など何もないっ」
とんとんからり。これ叩いたの、クモね。
「ミミ殿、そう申すのですか、某に情けを、情けをー!」
ぽぽからりっ。
「ええ、同じ板を踏めること、誠僥倖、まっこと至極っ」
ぽぽんっ。
「狐ちゃん、忙しくない?」
「少ち。ミミ殿!そのような想いを抱き舞台に上がるとは……」
狐、袖を濡らす仕草で身体を崩す。
「さぁ、顔を上げるです。晴れ舞台、そんな濡れ顔ではそぐわないのですー!」
ぴんっしゃんしゃんしゃんしゃん。クモがバスタオルで幕を下ろすのでした。
ウチには旅劇座がいる。
……この三文芝居、何?




