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閑話:光る屋台と黄金のリブ

エルフ×探偵×魔法ミステリです。


日常と事件が交差する、連作短編風の物語になります。


気軽に読んでいただけたら嬉しいです。

王都の中央広場を中心に、街全体に飾り付けが施され、あちこちに屋台が並んでいる。

家族連れが多く、普段とは比べ物にならないほど活気づいていた。


今日は精霊祭だ。魔法は古来より地・水・火・風の精霊が関与しているとされており、魔法によって豊かな生活が営めることへの感謝を込めた、王都最大の祭りである。一か月前から王都住民の協力を得て準備が進められ、当日を迎えていた。


「相変わらず凄い活気ですね。子供の頃に比べて屋台の種類も増えている気がします」 「他国との交流が盛んになって、その国独自の屋台も出てきてるからね~。流行りがあるのよ、屋台にも」


種類が増えた分、昔からある定番の屋台は数が少なくなっている。新しいものも気になるし、定番も外したくない。並んでいる列を眺めながら、どこから攻めるか迷っていると、先生が人混みの向こうを指差した。


「あれなんかどうかしら?」


フレイムブルームの屋台だった。火の魔力を蓄えているとされる真っ赤な花びらが特徴で、一般家庭でも使われることはあるが、屋台料理として目にするのは初めてだ。客が花びらを何かにディップして食べている。マヨネーズか、タルタルソースのような見た目だった。


早速買ってみると、花びらの先がほんのり赤く発光していた。見た目が映えるせいか、周りでも次々と人が足を止めている。


食べてみると、最初はほんのりとした辛みが来て、後から玉ねぎに似た甘みが広がってくる。油で揚げることで辛みが抑えられ、甘みが引き出されるらしい。体の芯からじんわりと温かくなってくる感じがあって、寒い季節に食べるとより美味しいかもしれない。


「このディップソースをつけるとなお良いわよ~サワークリームみたいな濃厚さとクリーミーさがあって、スパイシーさがフレイムブルームにとても合ってる。もう一個買ってきてもいいかしら」

「先生、まだ他にも食べるんですよね」

「大丈夫よ、入るから」


根拠のない自信だったが、止めても無駄なのは分かっている。


次に私たちが目を付けたのは、定番のかき氷だ。ただし、こちらも青白くぼんやりと発光している。最近は発光する料理が子供たちの間で大人気らしく、屋台の列もなかなか長かった。


「これはどういう原理なんですかね」

「月光を吸った魔力水で作った氷で、氷自体が光っているのよ。昔は貴族の間で流行っていたんだけど、最近は一般にも広まってきたみたい。ルミナススノーって言うの」


溶けてしまうと光がなくなるらしく、食べ進めるにつれて少しずつ光が薄れていく。食べてみると、想像よりもずっと甘さ控えめで上品な味がした。シロップにありがちな甘ったるさがなく、さっぱりしていて食べやすい。


あっという間に食べ終えると、また塩気のあるものが食べたくなってくる。次はどこへ行こうかと周りを見回していると、見覚えのある屋台が目に入った。


「……先日のドワーフ監修のスペアリブですね」

「投票した手前、一つは食べましょうか」


列に並んで近づいてみると、見慣れないメニューが増えていることに気づいた。


「エルフの魔蜂の黄金蜜リブ……?ドワーフが勝ったんじゃなかったでしたっけ」

「エルフとドワーフの合作みたいね。料理対決で互いの味を確かめ合ったら、一緒に作ろうという話になったんじゃないかしら」


いがみ合いから始まった対決が、こういう形に落ち着くとは予想していなかった。


当然、黄金蜜リブを注文した。待っている間に店主に聞くと、エルフの森近くに生息する魔蜂の黄金蜜に、ドワーフ監修のスパイスを混ぜ込んでソースを作ったとのことだった。


受け取ったスペアリブの表面には金色に照り輝く層があり、ほんのりと発光している。焼いているときから香りが凄まじく、受け取る前から腹が鳴りそうになっていた。


かぶりついた瞬間、表面の飴色の層がぱりりと弾けた。

濃密な甘みが広がる。ただの甘さではない。花の香りを含んだ、澄んでいるのに深く絡みつくような、今まで食べたことのない味だ。甘みが十分に広がりきったところで、焼けた脂の香ばしさとわずかな塩気が追いかけてきて、全体を引き締める。噛むたびに肉はほろりとほどけ、旨味がじわりと滲み出た。


「この前のスペアリブより複雑な味ですね。甘みと塩気のバランスが絶妙です」

「良いとこ取りって感じがするわね。対決したからこそ、互いのことをよく知れたのかもしれないわ」


先生はそう言いながら、もう半分をきれいに食べ切った。


気づけば日が傾き始めていた。広場では子供たちが走り回り、あちこちで笑い声が聞こえる。色々な種族が肩を並べて屋台を覗いている様子は、祭りの日ならではの光景だった。


「次はどこ行きます?」

「そうね~まだ甘いものが足りない気がするわ」


足りないのは甘いものではなく時間の方だと思ったが、私も同じ気持ちだったので何も言わなかった。


ここまで読んでいただき、ありがとうございました。


次回更新は4月23日(木) 20:00更新を予定しています。


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