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届かない贈り物

エルフ×探偵×魔法ミステリです。


日常と事件が交差する、連作短編風の物語になります。


気軽に読んでいただけたら嬉しいです。

光の道は、邸宅の裏にある森の奥へと続いていた。

森はひっそりとしているが、虫の声や、ときたま遠くで動物の鳴き声が聞こえる。足を踏み入れると、私たちの歩く音だけが妙に大きく響いた。木々の間から差し込む月明かりは頼りなく、一歩先の地面もよく見えない。


「結構奥深くまで続いてますね。光が途切れないといいですが……」


気がつくと、先生が私の腕のあたりにぴったりとくっついて歩いていた。


「……先生。エルフなのに、夜の森もダメなんですか」

「当たり前のことを聞かないで。エフィだって、怖い話を聞いた夜にお風呂で頭を洗っていたら、後ろに何かいる気がして怖くなるでしょ。森は庭と同じと言っても、夜は夜よ」


反論はしなかった。あながち間違いでもない。

それでも先生の足取りは重くない。怖がりながらも興味が勝っているのか、光の跡を追う目は真剣だった。私も同じで、これほど不気味な森の中にいながら、気持ちのどこかが高ぶっていた。


「あそこで光が途切れていますね。追跡失敗でしょうか」

「微かに隆起が見えるわ。穴があるんじゃないかしら」


光の消えた場所に近づいていくと、地面に小さな穴が口を開けていた。人が通れる大きさではないが、小型の動物なら十分だろう。


穴の中を覗き込むと、淡い光が穴の奥全体を柔らかく照らしていた。


「……先生」

「ええ。邸宅で宝石を盗っていったのは、このクリスタルフェレットね」


穴の奥に丸くなっていた小さな動物は、体に付いた粉の光に反応して、毛の一部が淡く輝いていた。月明かりの下で見れば、その毛並みはさぞかし美しいだろうと思わせる光り方だった。


フェレットはこちらをじっと見ている。威嚇するでも逃げるでもなく、ただ何かを守るように体を低くして。


その視線の先に、宝石が散らばっていた。大小様々で、色も形もばらばら。そしてその宝石に取り囲まれるように、中央に何かが横たわっていた。


「宝石を溜め込む習性でもあるんでしょうか」

「クリスタルフェレットにはそういった習性はないわ。宝石を集めるのは、中央に横たわっているあの鳥——ニワシドリの方ね」


鳥、と言われてよく見ると、確かに羽のある生き物だった。しかし、私たちが近づいても、声をかけても、ピクリとも動かない。


「……死んでいるんでしょうか」

「そうみたいね」


しばらく沈黙が続いた。


「なぜクリスタルフェレットが宝石を盗っていたんでしょう。ニワシドリが集めていたとしても、本人は……」


「確かなことはわからないけど」と先生は静かに言った。


「クリスタルフェレットは月明かりに当たると毛並みが鉱石のように光るの。ニワシドリが雛の時に、宝石と間違えて連れ帰ってしまったんじゃないかな。そのままここで育って、ニワシドリを親だと思っていた」


フェレットは変わらずこちらを見ていた。宝石の中心で動かない鳥を、体で囲むように。


「宝石を持って帰ったのって、もしかして……」

「動かなくなった親鳥のために、集めてきていたんでしょうね」


先生が短くそう言って、それきり黙った。


念のため確認しようと、邸宅から持ってきた偽物の宝石に手を伸ばすと、フェレットがぴくりと反応して低く声を鳴らした。取られまいとしているのか、体ごとこちらに向き直る。


その姿を見ていると、何も言えなくなった。


「宝石を持ち帰るのは……難しそうですね」

「巣を離れている時間帯に少しずつ偽物と入れ替えるしかないわね。同じくらいきれいな石を代わりに置いてあげれば、本人も気づかないでしょ」


私たちは邸宅に戻り、一部始終を依頼人に報告した。クリスタルフェレットのことを話すと、依頼人はしばらく黙っていたあと、宝石の回収はゆっくりでいい、これからもあそこにきれいな石を置いてあげましょう、と言った。


________________________________________


「無事終わったわ~。たまにはこういう依頼もいいわね」

「クリスタルフェレット、可愛かったですよね。マムちゃんの次くらいには」

「マムぅぅぅ~」


魔獣である以上、危険がないとは言えないが、それはキメラのマムちゃんも変わらない。機会があればまたあの森に行って、元気な姿を見てみたいと思う。


「そういえば、先生が受けるには珍しい依頼でしたけど、なんで受けたんですか」

「ああ。依頼人がちょっと特殊な魔晶石を持っていてね、依頼を達成したらもらえることになったのよ」

「光る粉の素ですよね。初めて原型を見ました」

「そうそう。ただ、私が欲しかったのは少し用途が違うんだけどね」


ただの魔晶石であれば、先生はいつでも手に入れることができる。わざわざ依頼を受けてまで求めたとなると、何か理由があるのだろう。こういったことについて先生が自分から話すことはないし、私から聞くつもりもない。いずれ分かることだと思っているから。


ここまで読んでいただき、ありがとうございました。


次回更新は4月21日(火) 20:00更新を予定しています。


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