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閑話:エルフとドワーフの料理対決

エルフ×探偵×魔法ミステリです。


日常と事件が交差する、連作短編風の物語になります。


気軽に読んでいただけたら嬉しいです。

「待ちに待ったエルフとドワーフの料理対決の日よ~!急ぎましょ!」


今日は、約一か月後の祭りの屋台として、ドワーフ監修の特製スパイスのスペアリブと、エルフ監修の蜂蜜カレー、どちらを出すかを決める決戦の日だ。

食事客の投票によって決まり、お昼時間の後に結果が発表されるとのことだった。


「スパイスのスペアリブは分かりますけど、カレーに蜂蜜って珍しいですね。カレーって辛いものじゃないんですか」

「そんなことないわよ。チョコレートを隠し味にしたり、甘い果実をすり潰してコクを出すことはよくあるわ」


自炊はしているけれど、忙しいときは簡単なものばかりになってしまって、そういう手の込んだ工夫をしたことがない。

それに、元々の概念を覆す発想自体が、まず私には思いつかない。積み重ねてきた試行錯誤を思うと、素直に尊敬する。


「おお~いい匂い。さすがに両方ともスパイスを使ってるだけあるわね~」


スペアリブの方からは脂とスパイスが混じった香ばしい匂い、カレーの方からはカレー特有のあの匂いが漂ってきて、急激にお腹が空いてくる。


「こちらはドワーフ監修のスペアリブだよ~!エルフには一生かかっても出せない味付け!ここでしか食べられないよ~!」

「ドワーフじゃ発想すらできない、エルフ監修の蜂蜜カレー!深いコクのあるカレーは毎日食べても飽きない。是非この機会に!」


どちらの店員もドワーフでもエルフでもない、ハーフリングだった。あまりの舌戦に思わず先生と顔を見合わせて笑ってしまう。


「……じゃあ二手に分かれて買いましょうか」


私はスペアリブの列に並んだ。待っている間も匂いは漂ってくるし、受け取った人たちの手元を見ていると、口の中に唾液がたまってくる。


先生の方をちらりと見ると、カレーを受け取った客が傍を通るたびに、うらめしそうにじっとそのカレーを目で追っていた。


私の番がきて、スペアリブを受け取る。一つでは足りなそうだったので二つ頼んで、先生と合流して席に向かった。


「先にどちらから食べましょうか」

「スペアリブからかな。カレーの味が先に来ると分からなくなると困るし」


もう待ちきれないといった様子で、二人同時にスペアリブに噛り付く。


火の通り加減が絶妙なのか、豚肉は柔らかく、脂身の甘みとしっかりした肉の旨みがある。そこにドワーフ監修のスパイスが加わって、味付けは濃いのに脂のくどさはなく、食べた後の口の中がすっきりしている。そして、鼻を抜けるスパイシーな香りが、次の一口を自然に促してくる。


「スパイスの配合が完璧ね。豚肉のいいところが全部引き出されている感じがするわ。何個でも食べたいくらい」


次に蜂蜜カレーを二人でシェアする。匂いは普段食べているカレーとそれほど変わらないが、食べてみると味に深みがある。蜂蜜のせいなのか分からないが、ルーがドロドロとしていて、ねっとりとご飯に絡みつく。スパイスの瞬間的な刺激というよりは、口の中にいつまでも余韻が残るような感じだ。


私は元々シャバシャバしたカレーよりドロドロしたカレーの方が好きなので、このカレーはどストライクだった。


「カレーは家庭でもよく作るけど、お店のは別格ね。手間暇のかけ方が全然違うから、また食べに行きたいと思わせるわ」


あっという間に両方を食べ終わって、二人でああでもないこうでもないと感想を言い合った。美味しいものを食べると、言葉も自然と増える。


「先生はどちらに投票するんですか?」

「めちゃくちゃ悩むわね~。でもどちらかというとスペアリブかな。祭りで食べるには手軽だし、これくらいの大きさなら他の屋台もまだ食べられる。それに、カレーと違って食べる機会が限られているからプレミア感があるし……やっぱりスペアリブかな。エフィは?」

「私、このカレーがめちゃくちゃ好みで。でも先生の話を聞いて、なるほどなと思いまして……私もスペアリブに投票しようかと思います」


好きな味に出会ってしまうと、それが今回限定となる可能性を考えると少し惜しい気もする。ただ、カレーに投票して他の屋台を楽しめなくなるのも損な気がした。

それに——投票用紙の余白に「カレーもいつかどこかで出してほしい」と添えておけばいい。


未来の楽しみが増えればいいな、と思いながら、一か月後の祭りを心待ちにするのだった。


ここまで読んでいただき、ありがとうございました。


次回更新は4月9日(木) 20:00更新を予定しています。


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