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71話 過酷な戦い(7)

所持スキル


パッシブスキル  『無限転生』『視力向上』『聴力向上』『運向上』

         『容姿向上』『短剣特効(速)』『水中歩行』『暗闇無効』

         『投擲(必中)』『レア世界』『頭脳向上』『視界向上』『掏摸向上』

アクションスキル 『空中跳躍』『物体透過』『技能破壊』『技能詳細』

 全ての攻撃は物体透過のスキルで無効化した。六秒の効果時間を活かし、後ろに跳んで壁を抜けた。一気に外へは出ず、別の部屋で再利用できる八秒を待った。

 背中にしがみ付いた光が身体を揺する。

「早くしないと敵がくるよ」

「スキルの効果時間が短いから外で待ち伏せされたら避け切れない。ここでもう一回、新たに発動させる。あと同時に短剣特効のスキルを使う。短剣の数によって速度を上げられる。振動が激しいので(しゃべ)らないように」

「わかった」

 感覚で十秒を超えた。身体の負荷を考慮して左手の指の間に二本の短剣を挟み、物体透過のスキルを発動した。

 建物の外にも敵はいた。無視して瓦礫の中へ突っ込む。迷うような足音と怒鳴り声が聞こえた。相手方の動揺を知り、少し心に余裕が生まれた。逃走のついでに缶を探し、幾つかを確保した。

 瓦礫に囲まれた狭い空間に身を潜めた。横手には拠点を取り囲む外壁がある。脱出経路となるので安心して今後の話をした。

一先(ひとま)ず、この拠点を離れようと思う。他に拠点になる場所はある?」

「いくつかあるけど、ここより快適なところはないよ」

「あればいい。ここから一番、近いところに移動しよう」

「一番、遠くじゃなくて?」

 隣から覗き込むような姿で小首を傾げる。

 俺はしっかりと目を見て言った。

「水没した階段の先にある大量の缶詰は手放せない。俺が夜に忍び込んで回収する予定だ」

「だから近くないと困るんだね。それでいいよ。近い拠点だと……缶詰はなかったかなぁ」

「そろそろ移動しよう。どちらの方向に走ればいい?」

「あっちだね」

 外壁を指さした。大体の方角はわかった。

「外にも敵がいるかもしれない。真っすぐに向うと所在がバレるので遠回りする。それでいいかな」

「もちろん」

 先に立ち上がって光に背中を向けた。上体を倒して中腰の姿勢となった。

 そこで俺は思い出し、即座に声を掛けた。

「大人が苦手なのはわかっている。ゆっくりで」

「なにが?」

 光は呆気なく身体を預けた。首に両腕を回し、微かな笑い声を漏らす。

「じゃあ、行こうか」

「そうだね」

 俺は光を背負って外壁へ突っ込んだ。


 拠点を取り囲むようにして敵が待ち構えていた。全てを無視してとにかく走る。六秒を使い切っても足を止めない。パッシブスキルは有効で誰も追い付くことはできなかった。

 倒壊した建物や足場の悪いところでは物体透過を使い、最短距離で走り抜けた。追いすがる声も聞こえなくなり、俺は大きな弧を描いて拠点へ向かう。

 細かい修正は光が受け持ち、もう少し右、と言葉で伝えた。

 日暮れを迎える前に新たな拠点に着いた。外敵から身を守る外壁はなく瓦礫が無秩序に積み上がる。

 背中から下りた光は軽い足取りで中へ入った。その後を俺が付いていく。

「それにしても見事な壊れっぷりだな」

「まともな建物は一つもないよ。でも、少人数で隠れるには便利だよ」

 前を歩いていた光が立ち止まった。瓦礫の山に立て掛けるように置かれた板を横に押し遣ると細長いトンネルのようなものが現れた。

「この先が少し広くなっていて、前は隠れ家として使っていたんだよ」

 背の低い光はそのまま中へ入る。俺は頭を屈めた状態で板を元に戻し、後ろに付けた。

 日中は差し込む陽光のおかげで意外と明るい。雨の日はどうだろう。不安に思いながら奥に着いた。

 大きなワンルームくらいの広さがあった。粗雑に積み上げられた瓦礫と違い、人の手が入ったような作りになっていた。床に当たる部分は踏み固められたようにしっかりしていて水平を保っている。

 俺が感心したように眺めていると、びっくりした? と光が得意げな顔で()いてきた。

「外と全く違うので純粋に驚いた。これ、全部、光がした?」

「私というか、生み出した女児がしてくれた」

「そういう使い方もできるんだね」

「まあね。このスキルも、まあまあレアだし。それとお腹、減ったよね?」

 光は遠回しに空腹を訴える。俺はそこまで減っていないが、減ったな、と答えた。

 回収した缶詰でささやかな昼食となった。薄い木切れがないので壁の一部を引き抜いて使う。

 光は食べながら少し目を伏せた。

「なんか急に寂しい感じになっちゃったね」

「そうだね。人数がいるだけで元気が出たよ」

「……痛いのは好きじゃないんだけど、私のスキルを使ってもいいけど」

 俺は食べる手を止めた。

「今は逆にいない方がいいと思う。女児がいると俺達の存在に気付かれる可能性が高くなるんじゃないかな」

「それも、そうだね。逃げる時は望君がなんとかしてくれるし」

「まあ、そうだね」

 苦笑いで缶詰を食べ進める。不規則で頻繁に手を止めた。

 今回の奇襲で目にした相手はかなりの人数だった。俺の記憶した隊員の数は遥かに超えている。細かい隊がいくつもあって横の連携が取れているのだろうか。

 暗い未来を呑み込むように缶詰の中身を掻っ込んだ。

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