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立派なテント



 アターシャがスキルを発動させると、瀕死のポーターが倒れているところに天から光が差し込み、ポーターの男がキラキラと輝く。

 薄暗いダンジョンの中で光に照らされたそこは歌劇ステージの壇上ようだ。


 次に光の柱の中を天使の残影がゆくっり舞い降り、ポーターの男に覆い被さるように吸い込まれ、消えっていった。


 これが【HR大聖女】の奥義〈リバイバル〉。

 アターシャの祖先であり勇者ビッグベニスのパーティーメンバーだった大聖女カナリもこのスキルで多くの仲間を救ったという。

 こんなところで見れるとはな……。



 光が消えると瀕死の男は上半身を起こし、手を握ったり開いたりしている。


「どこも痛くない。夢でも見てるのか……」


「ここも元気になってるニャン!」


 男を看病していたティッシュが元気な声で言った。

 男の股間には立派なテントができている。

 なるほど、そこも元気になるのか。


「ちょっ!ティ、ティッシュさん!恥ずかしいですよ!」


 男は頬を赤らめ、顔をくしゃくしゃにして両手で股間を隠した。

 気持ちはわかる。晒しを巻いておくと目立ないんだよなぁ。


「ゼ、ゼちゅさまぁ、言われた通りやりまひたぁ、だからりゃ、わたくしにぃ〜、んほっ!」


 さてどうしたものか……。このまま、スキルを解くとアターシャの攻撃がまた始まる。〈わからせ〉発動中の記憶も残っているから、攻撃は更に苛烈になるだろう。


 このスキルを発動中、僕もメスを征服する強いオスになるから気分が荒ぶって落ち着かない。早く解除したいが……。


 取れる選択肢は一つだな――――。


 僕は顔の半分を隠していた右手を下げ、ポーズを解除した。〈わからせ〉が終わる。


 アターシャもアヘ顔とがに股が解かれ、地面にへたり込んだ。


「ゼツ様ぁ!約束でしたわよっ!早く!早くしてくださいなッ!」


 〈わからせ〉は精神、意識にメスを刻み込むスキルだ。 スキルは解除したが、まだ完全にメス化が解けていないのだろう。


「ノエル、ティッシュ行こうッ!もうここに用はないッ!」


 僕が取れる選択肢は一つ。この場から早急に立ち去ることだ。


 地面に崩れ落ち「そんなぁ〜」と僕に手を伸ばすアターシャを無視して、荷物を担ごうとした瞬間、誰かに肩を掴まれ悪寒が走った。


 僕が振り向くと、そこには口をニタ〜とさせ不気味に笑う目つきの悪い女、アナルがいた。


「坊っちゃ〜ん。駄目ですよ〜。逃げたりしたら。 ほら、アターシャ様にしっかり謝らないと。クスクス。 でないと、リンダナ家が罪を負わされますよぉ」


「僕は既にリンダナ家から絶縁された身だ。僕が何をしようが、実家が罪に問われることはないだろう」


「クスクス、それがそうでもないんですよぉ。お前は知らないと思いますが、絶縁に関して侯爵閣下はヤリマン公の承認をもらっておりません」


「なっ!絶縁証明書がないってことか?」


「ええ、そうですよ。クスクス」


 僕の”元”実家、リンダナ侯爵家を管轄、管理しているのはアターシャの実家、ヤリマン公爵家だ。

 リンダナ侯爵家で絶縁や逆に養子縁組をする場合、ヤリマン公の署名が必要なのだ。


 確かに今まで僕が知り得た情報を統合すると、父上が手続きをしている方が不自然だ。


「ですから、お前が罪を償わないと、リンダナ家のみならず、家臣の重臣、各地を収める名主、それにお前の弟や妹にも迷惑をかけますねぇ。 良いんですかそんな酷いことして?クスクス」


 僕のパッシブスキル〈無責任〉が別に構わないと言っているが――、僕の勝手な行動で世話になった人達、弟達に迷惑をかけるのは気分がわるい。


「しかし、謝っても許してもらえないだろう?」


「あたくしも頭を下げますから。 ほら、坊っちゃん、一緒にアターシャ様のところに行きましょう」







 僕とアナルは胸に手を当て、片膝を付き伏してアターシャの前にいる。


「アターシャ様、先程のご無礼、申し訳ありませんでした。人命がかかっておりました故、少々乱暴に出てしまいました」


 アターシャはメス化が解けたようで、腕を組み顎を上げてゴミ虫を見下すような目で僕を見をろしている。


わたくしの股間を持ち上げたこと、メス豚呼ばわりしたこと、一生忘れませんわ。このダンジョンから帰ったらお父様に頼んで貴方の家を潰します!」


 ほらな!これ絶対に許してくれないよ。


 まぁ子供同士のいざこざでヤリマン公がそこまでするとは思えないが、娘を溺愛していると名高い御仁だ。ただでは済まないと考えておいた方がいいだろう。


「アターシャ様、そこで提案なのですが、此度のダンジョン攻略、コイツを雇ってみてはいかがでしょう? 我らのパーティーに貢献させ、その度合いによって今回の件、水に流すのはいかがでしょうか?」


「なっ!何を勝手なことを……、あっ、そういうことか!お前、僕を嵌めやがったな!?」


「ほら坊っちゃん、頭を下げて。クスクス」


 この勇者パーティーはレベルが低い。一番レベルが高いアナルが75前後、パンティーは70くらいだな。それ以外は40から30といったところだろう。

 つまりアナルは、今回の僕の過失を利用し、罪償いと称して僕を働かせ金や経験値を稼ごうとしているんだ。


「いくらアナル様の頼みでもそれはお受けできませんわ。それにこの方、役に立ちますの?」


「先のロックワームの大群、コイツが倒しました」


「嘘おっしゃい!あれはどう考えても神の御業、我らが主ラブヘブンズ様がお救いになったのですわ」


「ならばご覧に入れて差し上げましょう」


 アナルは薄い笑みを浮かべ僕を見詰める。


「坊っちゃん、先程の攻撃、再現できますか?」


 僕もアナルを見詰め返した。


「お前は僕を信じるのか?」


「ギルドで坊っちゃんが金、銀を出した時、よく考えたら坊っちゃんは嘘を付けない間抜けだったと思い返しましてねぇ。クスクス。 ですから先程の攻撃、坊っちゃんやったと言うならあたくしは信じますよ」


 僕らのやり取りを見ていたアターシャが、


「ふんっ! 一度だけチャンスをあげます。できると言うのならやってみなさいな。どうせ、できる筈がありませんわ」


 面倒くさいことになってきなたな……。 僕等はただコイツ等を助けただけなのに。

 ただ、ここまで来たらやらないわけにもいかない。


 そうか……、あの攻撃をやって見せて、僕らがロックワームから助けたことを証明する。それを口実に今回の件は許してもらおう。

 その後、雇とうとか言っている件も断ればいいか……。


「わかりました。やります」


 僕は神妙に頷いた。



「あれ?皆さん何をされているのですか?」


 眠っていたパンティーが起きてきた。


「パンティー様、ちょっとした余興ですわ」


「余興?」


 パンティーはまだ寝ぼけているのか、きょとんとしている。

 更に僕達の周りに貴公子団の連中、ポーターの人達、それにノエルとティッシュが集まってきた。


 ギャラリーが増えだが、まぁいいか――――。




「アクティブスキル〈ガンシャ〉ッ!」


 僕の手にガンシャが顕現した。








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