彼女ができました①
受付の店員がノエルを見て幽霊でも見たかのように驚いたが、そんな反応を気に留めず店を出た。
それから僕達は暫く無言で歩く。
こんな夜中にノエルを一人で宿屋へ帰すわけにもいかないので、僕はレベル上げを切り上げ、また後日、風俗街へ行くことにした。
僕の後ろを俯きながら歩くノエルからは危険なオーラが出ていて、話し掛けることができない。
そうして宿屋へ向かっていると――。
「ゼツ君、どうして……?」
ノエルがかすれた声で言った。
「ん?どうして?」
「どうして、ああいうお店に行くの? 昨日たくさんやったのに……」
確かに……、昨日は10回やった。
「信じてたのに……、酷いよッ!」
ノエルは叫ぶように言った。彼女は怒っているとも悲しんでいるとも形容できる表情で僕を睨み付けている。その目には涙が浮かんでいた。
だが僕は彼女が何故怒っているのか理解できなかった。
「ノエルが怒るとは思わなかった」
「怒るに決まっているじゃない! どうして怒らないと思ったのッ!?」
大きな蒼い瞳に涙をいっぱいに溜めた彼女は今にも泣き出しそうだ。
「それは……」
許嫁や妻ではないノエルに風俗店に行くとをとやかく言われるとは想定していなかった。だから、いずれ話すつもりでいた。
そもそも、これからもずっと一緒に冒険をするのに隠せるわけがないのだ。僕はレベルを上げる為にこの先も風俗店へ通い続けなければならないのだし。
『これからも風俗店に行く。ノエルには関係ないだろう』と言おうとして止めた。それを言おうとすると僕のインテリジェンスが訴え掛けてくる――。やめろッ!大変なことになるぞッッ!!と。
僕は慎重に、慎重に、言葉を選んだ。
「なんか、お腹空かない?」
「空かないわよッ!」
ノエルは顔をクシャクシャにして叫ぶ。
【ノエル視点】
信じられない。昨日あんなにたくさんやったのに!なんでなの?そんなにやりたかったの?
ゼツ君の態度は普段と同じで、悪びれる様子はなく飄々としている。
私達は結婚しているわけでもなければ付き合っているわけでもない。だからゼツ君がああいうお店に行っても浮気していることにはならない。
それにゼツ君は貴族。 元……だけど。
貴族が正妻の他に妾を何人も抱えるのは当たり前で、中には30人、40人と妾を抱える貴族もいるらしい。
だからゼツ君にとっては、お店に行くことなんてたわいもないことなのかもしれない。
それでも、ああいうお店には行って欲しくない。他の女の子と仲良くして欲しくない。 私のエゴなのかもしれないけど、私にはゼツ君しかいないから。
もし彼が他の子と仲良くなって私から離れていったら……、 私は……一人で冒険を続けてママのお金だけは絶対に払おう。 そう思うと涙が込み上げてきた。
「私はそんなこと絶対にしないけど、例えば、あのアレプニヒトさんと私が本番したらゼツ君はどう思う? 想像してみてよ……ッ!」
ゼツ君の顔が急に険しくなり、眉間に皺が寄る。
怒らせちゃったかな?
彼の顔色がどんどん変化していく、赤くなって、青くなって……。
「ど、どう思った?」
「嫌だ!絶対に嫌だッ! そんなことになったら僕はアイツを殺して、君をどこかに閉じ込めて、他の男に会わせないようにすると思うッ!」
「えええッ? そ、そこまでするのぉ!?」
それが本当ならゼツ君、私のこと好き過ぎでしょ!?
「ノエルが他の男に取られたら僕は生きていけない!」
彼は今にも死にそうな真っ青な顔で眉をハの字にして言う。
「それが私の今の気持ちだよ……、(まぁ私はそこまでしないけど……)」
【ゼツ視点】
ノエルにそう言われて僕は初めて自分の気持ちに気付いた。
今の僕はノエルがいないと眠ることもできないし、精神的に安心することもできない。本番だってノエル以外の女とはやりたいと思わないが、ノエルとはやりたい。
僕はノエルが好きなんだ。今まで女の子を好きになったことがなかったらわからなかったけど、今ならはっきりとわかる。
そして、逆の立場になって考えて、彼女が僕に抱いている怒りを理解できた。
「僕は君になんて酷いことをしてしまったんだ。本当に申し訳ない」
「わかってくれればいいけど……、でも、これから思い出すたびに悲しくなると思う……。 ねぇゼツ君、どうしてお店に行ったの?」
「そうか、まだ話してなかったね」
僕はステータス光を顕現させノエルに見せた。
■■■■■■■■■■■■■■
【MR無責任種付おじさん】
Lv 296
⑤HP 45231
⑤MP 45231
⑤ストロングス 45231
⑤アジリティ 45231
⑤インテリジェンス 45231
〈アクティブスキル〉
感度操作6倍、ガンシャ、種付操作、フェロモンLv2、モーニングコーヒー、散種、わからせ、皮かぶり、Gスポット、ガンシャ―ライフル
〈パッシブスキル〉
ゼツリンLv29、種強化Lv29、無責任
■■■■■■■■■■■■■■
「レベルが上がってる……。昨日見た時はレベル201だったのに。 でもモンスターを倒す時間なんてなかっよね……」
「僕の加護は特殊で、モンスターを倒してもレベルが上がらないんだ」
「それじゃ、どうしてレベルが上がったの?」
「僕は女の子と本番をするとレベルが上がるんだ!」
「…………へ?」
驚くノエルに僕のレベリングを説明した。
一人につき最初の一回だけしか経験値を稼げない仕組みや、ノエルと出会うまではレベル0で悔しい想いをしてきたことを話した。




