修羅場Lv8②
【ノエル視点】
暫く経ってもゼツ君は出てこない。私はこっそり窓の外からお店の中を覗く。 カウンターに男性店員がいるだけで、ゼツ君の姿はなかった。
ゼツ君、何をしているの? 気になる。気になってしょうがない。
――よし、これならいけるかも。
「アクティブスキル〈グラビティLv1〉」
スキルで外の看板のランプと店内の蝋燭を同時に消した。店内は真暗になる。
店員は驚いているようだ。
「え? なんだ? ポルターガイスト?」
「アクティブスキル〈暗視〉」
私はスキルで視界を確保すると、音を立てないように店の扉をゆっくり開けて、忍び足で店内に入る。
急に真暗になったから、店員は何も見えていないようで私に気付かない。
静に店の奥へ進む。
人気の無い店内を進んでいくと階段があった。
二階から物音が聞えて、階段を登って行く。
二階の廊下は真っすぐで両脇に個室の扉が並んでいる。
少し先の部屋から、水で濡らした手でパンッ パンッと拍手するような音と女性の奇声が聞えた。
【ゼツ視点】時を同じくして
「んっほぉおおおおおおおおおおおおおおッ!!!」
「黙れ!メス豚ッ!」 ――バチンッ!
僕は後から、女のだらしない肉尻を引っ叩いた。
コイツは声がデカい。店の人にバレてしまう。 生意気だったから少し本気を出したらこれだ。
この人は途中から僕のことを「ご主人様」と呼びだし、自分のことは「メス豚」と呼べとお願いしてきた。たく、とんだ変態だ。
本番が終わり経験値が流れ込んできた。
あれ?この人の加護、レアリティ【R】だ。 【R】は【HN】の7倍、【N】と無加護の11倍経験値を稼げる。【N】11人分と考えるとかなり美味しい。
「んほっ んほっ お゛っ お゛っ」
嬢はベッドの上に転がり、がに股でピクピクしているが、僕は無視して急いで服を着る。 少し時間を掛け過ぎた。 早く次の店に行かなければ……。
「ありがとうございました。 それでは失礼します」
「待って……」
僕がそう言うと、嬢はあわてて起きる。
「ご主人様、お願いします。 もう一回!もう一回お願いします! こんなに凄いの初めてなのぉおッ!!」
まだ懲りていないようだ。口答えできなくなるまでわからせてやってもいいが今は時間がない。それに2回やっても僕にメリットはない。
「急ぎますので」
「行かないでッ! ……そうだ。お金、お金払いますッ! だからもう少しぃーッ!」
しつこい女だ。金を貰ったってやる気にならない。
僕のレベル上げは対人対応力が求められるところが本当に辛いな。
元々、人と話すのが得意ではない僕にとってノエル以外の女性と本番をやるのは面倒臭いことでしかない。冒険でモンスターと戦っていた方が楽なくらいだ。
「無理です。 それでは――」
僕は颯爽と立ち去ろうと身を翻し、勢いよく扉を引いて開ける。
すると――。
「「 っ!? 」」
ノエルがいた。
僕とノエルは驚いて声が出ない。
「店の子のこじゃないわね? んんん? ご主人様の彼女ですかぁ〜?」
後ろで嬢が何か言っているが、無視。
「ノエル、……どうしてここに?」
「それはこっちのセリフだよ。ここで何してたの? ……ゼーツくん?」
何ってナニだけど……。
ノエルは僕とベッドに座る裸の嬢を交互に見た後、首を横にコテっと倒して言う。その顔は笑顔だけど、笑っていない!
「アクティブスキル〈修羅場鑑定〉ッ!」
うしろで嬢が言った。そのスキル……、そうか、この人の加護は【R危険予測士】だ。ありとあらゆる危険を事前に鑑定しその脅威を測ることができる加護ッ!
「ご主人様、この状況、〈修羅場Lv8〉ですッ! 10段階の修羅場脅威、Lv8はかなり危険でございますぅッッ!」
「ノエル、行こう」
僕は真面目に語る嬢を無視して部屋を出た。
ノエルは僕を睨むだけで返事をしなかった。




