風俗店巡り②
最初の店を出て、また同じ店に入ろうかと思ったが、やめた。すぐに出て、またすぐに入ったら頭のおかしい人だと思われるからだ。
この区画だけで30店舗はありそうだし、一軒一軒回っていこう。
◇
僕は本番を断られたり、やらせてもらえたりを繰り返し店を回っていく。
「いらっしゃいニャン」
数軒目で充てられた嬢は猫の獣人だった。
人族と獣族は耳と尻尾以外は見た目は一緒で、子供をつくることもできる。
彼女は灰色の髪に褐色の肌、引き締まった体なのに胸はそこそこある。
「こんばんは。早速で申し訳ないのですが、本番をさせてもらえませんか?」
「ん? 別にいいニャンよ」
えっ!?いいの? 最初は絶対に断られるんだけど……。
「あの、本当に良いんですか?本番ですよ? チップとかはずまなくても……」
「チップくれるニャンか!? くれるなら欲しいニャンw」
嬢は瞳をキラキラ輝かせ僕を見てくる。
てかこの流れ、チップを払わなくてもやらせてくれそうだな。
うーん、どうするか……。でもこの子、滅茶苦茶チップ欲しそうだな。顔を凄く輝かせてこっちを見てるよ。
「因みにチップをあげなくても本番はやらせてくれるの?」
「ん? 別にいいニャン。 アッチ、今は発情期じゃないから妊娠しないし、自分で動くよりお客に動いてもらったほうが楽ニャンねw それよりっ!チップくれないニャンか?」
嬢はウルウルと瞳に涙を滲ませ悲しそうに僕を見てくる。
まぁチップやるか。金に余裕あるし今日からダンジョンに潜るからまた稼げる。
「あげるよ。 手、出して」
嬢は両手を重ねて僕に差し出した。顔からは期待感が溢れ、猫尻尾がピンと立っていて面白い。
僕はカバンから銀貨15枚を取り出し、嬢の手に乗せた。
「えええええええっ!!これ銀貨ニャン!銅貨と思ったニャン!お客さん凄い太っ腹ニャンね。 アッチやる気なかったけどたくさんサービスするニャン!」
「やる気ないとか客に言うのもどうかと思うが、そういう正直なところに好感を持ったよ」
「ん?アッチ嘘付くの苦手ニャン。 じゃ始めよ」
◇
本番が終わり僕は急いで服を着る。
「お客、もう行くニャンか?」
「うん。もう行くよ。 本番、ありがとう」
「アッチもすっごく気持ち良かったニャン。発情期でもないのにこんなに感じたの初めて。 お客、上手いし、逞しくておっきいニャンね! ……彼女はいるニャンか?」
「彼女? ……彼女ってなんだ?」
「付き合ってる人のことニャン! それで相性が良かったら結婚するニャン。 お客かっこいいし彼女いそう」
許嫁のことかな?
「それなら昔いたけど、今はいないよ」
侯爵家を追放される前、僕には家が決めた許嫁がいた。ただ彼女は王都に住んでいたから、会ったのは2回くらいだったな。もうとっくに婚約は破棄されているだろう。
「いにゃいならアッチと付き合うニャン! アッチ可愛いし、毎日たくさんサービスするニャンよ!」
付き合うというのはよく分からない。婚約するってことか?
僕は侯爵家にいた時、毎日勉強ばかりしていた。語学や算術はもちろん領内経営に必要な法律、経済、税などを朝から晩まで学んだ。 そんな生活が一変して奴隷に落ちた訳だが、奴隷になってから友と呼べる人はいなかったから、僕は民衆の習慣に疎い。
「ごめん。 よく分からないけど僕には好きな人がいるんだ」
「そっか、残念ニャン。 お客、金持ちだし、キープしときたかったニャン」
「君が可愛いというのは否定しない、明るくて素直な性格だから付き合い易い。 きっと素敵な人が見つかるよ」
「ほんとかニャン!? ならまたお店に来て欲しいニャン!」
「いや、もう来ないと思います。 それでは――」
話ながら服を着終えた僕は「ええええええ!?」と驚く嬢を後に、肩で風を切って店を出た。
【ノエル視点】一方その頃
隣りにある筈の温もりを感じられなくて、寝ぼけていた私は飛び起きた。
「あれ? え? ゼツ君?」
ゼツ君が消えている…………ッ!?




