宰相との会食
話というのが、宰相の部下からの情報のことだった。
宰相は、陸路で部下を王都まで向かわせているようなのだが、王都に向かう部下から、冒険者を使って手紙をもらっていたようなのだ。
その手紙は今も持っているらしく、懐から一通の手紙を取り出すが、俺は見たくもないぞ。
そんな俺の気持ちに忖度されること無く、無情にも宰相から手紙が渡された。
読みたくはないけど宰相は『早く読め』って圧力を無言でかけてくる。
「では、読ませていただきます」
すぐに読み終わる内容だったが、はっきり言って予想の範疇で読みたくはなかった。
これで知らないと白を切ることができなくなってしまった。
「どうだ、感想を聞きたいのだが」
「その前に、これを私の配下にも……」
「ああ、かまわない。
ここでは秘密にする必要もないのでな。
尤も王都では絶対に明かせない内容だがな」
俺は隣に座るエリーさんに手紙を渡してから、先の宰相からの質問に答えていく。
「想像の範疇でしたが、ですが……認めたくはありませんね。
お手紙で知らされてきた場所は又隣となるのでしょうか、そこもお隣と似たような感じだとか」
「ああ、我々も男爵に怒られてから、多少は成長もしたよ。
少なくとも見る目だけは養ってきたつもりだ」
「でしょうね。
ですがそれは本来領地持ちの貴族の資質の問題では」
「言うな、男爵。
なれど、幸いと言えばいいのか先の疫病がここ(シーボーギウム)だけで済んで」
「途中の森のおかげでしょうね。
病気になった者が、体の調子が悪いのに簡単に超えられるような優しさはあの森にはありませんので、兵士でも訓練されなければ簡単に死にましたしね」
そう、むやみにこちらに兵士を送ってきた先の貴族ではないけど、その送られた兵士がシーボーギウムに着くことなく、途中でやられていたのだ。
救える命だけは見つけては助けてきたけど、それでもそんなのはごくわずかなのだろうな。
ほとんどはあのくまさんのおなかの中に……。
「だが、このまま放置もゆくまい」
「宰相、先に申して置きますが無理ですよ。
これ以上シーボーギウムに協力する余力などありませんので」
「直接の協力までは望まないし、あそこにも領主がいるのだ。
先の男爵の言葉ではないが、それこそ領主の仕事だ」
よかった、少なくとも今の宰相には俺の気持ちは伝わっていた。
「私もすぐにここから王都に船で戻るが、男爵には王都まで同行してほしい」
「王都、同行??」
「ああ、いろいろと経験を踏まえた助言をもらいたいのでな」
まったく俺の気持ちは伝わってはいなかった。
領主がいるから俺らが直接手は下せないが、王都から領主に命じるその内容を俺に任せたいらしい。
俺からしたら『そんなの知るか~~~!』って感じだ。
だが、許してもらえそうにないな。
横で聞いていたエリーさんの機嫌もどんどん悪くなっていく。
先に、発散させた分は、これで効果はなくなったな。
この話が他に広がれば……ブルブル。
「明日の船でいったんモリブデンに向かうが、同行してもらえないだろうか」
すると横の座るエリーさんから声がかかる。
「失礼します、宰相閣下。
さすがにこちらの政もありますので、今日明日の予定変更はいささかご無理が過ぎるかと」
「しかし……」
宰相はかなり危機感を抱いているようで、無理を承知でごり押してくる
さすがに、宰相とエリーさんとの会話が感情論に発展しかねないので俺が間に入るしかないが……入りたくないよね。
「10日……いや、7日だけ遅れますが、必ず王都に向かいます。
ですので私の明日の出発だけは、お許しください」
「7日だな。
私が王都についてから7日だけ待つことにしよう。
それを約束してもらえるということでいいのだな」
「ハイ、宰相が王都に到着してから7日だけお待たせすることになりますが、必ず向かいます」
これで、食卓に血の雨が降ることだけは避けられた。
一体どこの世界軸の話だよ。
自国の宰相との会食の席が血で染まる心配しないといけない世界なんて。
しかし、取り合えす猶予は勝ち取った。
7日の暮れだが、モリブデンから3日、急げば2日半で付けるので、とりあえずここに7日は居残れることが確定した瞬間だ。
この7日間はとにかくこの地に残る者たちのケアをしていくしか無い。
それにしても、この国本当に大丈夫かな。
この国の貴族に言いたい。
俺に意地悪している暇がああるのなら自領の面倒をしっかり見ていろよと言いたくなってきた……あれ、モリブデンにはそんな気配も感じなかったのだが。
確かにあそこには貿易港があるので、海上輸送が俺の知る世界ほどは盛んではないとはいえかなり栄えているし、その恩恵を受けてはいるが……それならここシーボーギウムも同じはずだったのに、まあ、こればかりは領主の資質としか言いようがないか。
それもこれもその領主となる貴族の資質を見極めしっかり管理できてない、あんただよ宰相。
結局あんたがしっかりしていないのがこの状況を招いた元凶だと俺は結論づけた。
そう考えると、ますます王都に行きたくなくなったな。




