私のしたいこと
「ニッカちゃん。私ね。この世界にこれて幸せなんだ。けどさ、貰ってばかりでなにも返せ
てない」
「……」
「せめて、借りている離れの家賃くらいは、返したいなって思ってるけど……どうやって稼ぐかって全く考えてなくてね」
「……」
「どうしたらいいかな……」
年下にこんな相談をしてしまうなんて、正直恥ずかしい。けどニッカちゃんは真剣に考えてくれているのか、真顔で顎に指をあてていた。
「そうですね……。カヤお姉さまが以前から好きなものはありますか? この世界に来て好きになったものでも大丈夫です」
「もふもふ好きだよ!」
「その他にもありますか?」
「えっと……」
私もニッカちゃんみたいに、顎へ指を添える。
私が好きなもの。
その時浮かんだのは――。
「オパールと飛んでいる時に見える景色は、好きかな」
強く風を切る感触。近くなる空。小さく、広く見える地上。
いつまでも眺めていたいくらい、私はあの景色が好きだ。
「それなら、その好きを仕事にしてみてはいかがでしょうか?」
「前にそれらしい事を言ったら、アルバさん……あ! 私を拾ってくれた人ね! にやめた方が良いって言われて……。現にそのせいでオパールとダリアには迷惑かけたし」
必要があれば空を飛ぶ。その気持ちは変わってない。それでも、避けられる混乱を自ら起こすのはどうかと思ってしまう。
「私もそうでしたが、全てにおいて最初は困難がつきものです。それは避けて通れない道。けど、もしその困難を乗り越えた先に、自分の好きなものが待っているなら……頑張れる気がしませんか?」
「ニッカちゃん……」
私は思わずニッカちゃんの手を掴む。
女の子とは思えない、ごつごつとして、少しあかぎれている手。他の人から見たら女の子がこんな汚い手をしてと思うかもしれない。
けど、私はニッカちゃんの手が綺麗だと思う。この手は彼女が必死に自分の思いを叶えようと努力した証だから――。
「そうだね。そうだよね……! ニッカちゃん私、頑張る!」
「はい! お互い頑張りましょう!」
ニコニコとニッカちゃんと手を取り合ってると、
「次、右の攻撃来るぞ! 構えろ!」
「はい!」
「諦めるな! お前なら出来る‼ 熱き心を燃やせ! ガッツだ! ガッツ‼」
「てい!」
大きな声に顔を向けると、必死にリースくんがこん棒を振り回していた。
「すごいですね。クレス様。素晴らしいご指導です」
「そ、そうだね」
まさか、ここまでクレスが熱血指導とは。普段はクールというか、なんかチクチクしたツンデレだからギャップが思ったよりも強い。
けどなんだろ。
「こっちのクレスの方が好きかも」
「なっ!」
「あ」
思ったよりも声が大きかったのか、クレスに聞こえたみたい。体を硬直させたクレスにラットが体当たりしてた。もろに腹に攻撃を受けた彼は、背後にあった木へ激突。
ちなみに、ラットはそのまま森の奥に逃走してた。
「うわ~ドンマイ」
「お前がすすす、好きとか変なこと言うから!」
「素直な感想です」
「ななな!」
なんかものすごくクレスが慌ててる。そんなトマトみたいに顔真っ赤にするなんて驚きだ。勇者御一行の一人だし、顔は良いんだから、口どかれたり普通にされてるんだろうなと思ってたんだけど……。
「そ、そんな事言われても僕は嬉しくもなんともない!」
「ならなんで顔が真っ赤なんですかね。お客さん」
「ままま! 真っ赤じゃない!」
やばい、これ面白いぞ。にやにやしながら、耳まで真っ赤になってるクレスをからかってると、近くの木から人が飛んできた。




